第94話 優希と血花
これは柊菜が琉璃と再会する少し前。
優希と血花の出来事だ。
「いないね、血花ちゃん」
柊菜や真気と離れた二人。
しかし、どこにも霊はいなかった。
ただ列車が走る音が響くだけだった。
「優希お姉ちゃん……、柊菜ちゃんたちは大丈夫かな……?」
「柊菜ちゃんなら大丈夫でしょ。強いし。しかも真気もいるから」
「そうかな……」
声のトーンを下げて、床を見る血花。
しかし、優希はそれに気づかなかった。
そして血花は気づいた。
床にヘビのような生物がいることに。
「優希お姉ちゃん、床に変なのがいる」
血花は顔を上げ、優希の姿を探した。
しかし、優希の姿は見られなかった。
どこにもいなかった。
「? 優希お姉ちゃん?」
血花は辺りを見渡す。
やはり優希はいない。
そのときに、ヘビが血花の首に噛みついた。
血花の首に激痛が走る。
しかし血花は苦痛の表情を浮かべない。
ヘビを睨んだ。
そして血花は霊化をした。
するとヘビは急に力が抜けたかのように血花の首から落ちた。
もう動かない。
「血なくなったくらいで死ぬんだ。雑魚が調子乗ってんじゃねぇよ」
血花は優希と会話するときのトーンよりかなり低いトーンの声で、死体となったヘビに言い放った。
『ソウカイ、ソウカイ、 チョウシノッテハイケナイノカ!』
老婆の声が響く。
声が聞こえてきた方向を見る。
しかし、そこにはなにもない。
「……!」
血花は何かを感じ、咄嗟にその場から離れる。
すると、血花のいたところの頭上から大量のナイフが落ちてきた。
天井に穴はあいていない。
血花は腰にかけてある手榴弾を天井に向かって投げる。
その手榴弾は爆発し、天井に穴があく。
血花はそこから上に移動した。
高速で移動する列車の上に立つ血花。
しかし血花は微動だにしない。
それよりも血花は目の前にいる霊らしきモノを見ている。
体長が十メートルはある、白い大蛇のような霊。
『ヨク、カワシタナ! タダノガキジャナイ!』
その大蛇は喋る。
先刻聞こえた老婆のような声と同じだった。
「あんなん余裕で躱せんだよ、バーカ。逆に私があんなんで死ぬと思ったのか、テメェは」
『ジャアコレデシネ!』
大蛇は血花に突進してくる。
血花は高く跳躍し、大蛇の上に乗ろうと試みる。
しかし大蛇は、血花が自身の身体に乗ってくる寸前で身体をうねらせる。
足場を失った血花は腰にかけてある短刀を手に掴み、手を放す。
そしてその短刀を足場にして、再び跳躍する。
予想外の行動に一瞬だけ動きが止まった大蛇。
その隙に血花は自身の身体を回転させて、大蛇の身体を斬ろうとした――




