第89話 電車へ
私たちはとある駅のホームに入った。
深夜3時で真っ暗。
その中で電気がついている電車が1本だけある。
絶対これだ……。
「見るからに誘い込んでるね」
「……行くか?」
「当たり前じゃん」
班長たちは電車の中に入る。
……思ったこと、言っていいかな?
「あの、班長……。『電車ごと壊す』っていう手はダメなんでしょうか……」
「それやりたいんだけどねー。ダメなんだよ」
「なんでですか?」
「昔ね、それをやった霊伐隊員がいるんだよ。そしたらね、その壊した建物自体が霊だったみたいで、建物から血液が大量に出たの。それが津波状態になって近くの人はみんな死んだの」
建物自体が霊……。
津波……。
「じゃ、行くよ」
班長が奥に進んだ。
なんかいつもの班長より元気ない気がする。
そのとき、誰かが私の頭を掴む。
真気だ。
「推測するな、行くぞ」
真気はそう言って班長のあとを追う。
私は何も考えないようにして電車の中に入った。
中は意外と寒い。
今は夏が少し過ぎたくらいの季節。
冷房って感じじゃない。
『――ドアが閉まりまーす』
女の人の声がする。
そして電車のドアが閉まった。
「あーあ、閉じ込められちゃった……」
班長がつぶやく。
ドアの方向を見ないで、刀を抜いている。
そのあと、グラリと電車が揺れた。
電車が動き出した。
「優希お姉ちゃん……、人、いないんだよね……?」
血花ちゃんが班長の手をギュッと握る。
怖がってるみたいだ。
「うん、私たち意外はいないはずだよ? 今回の霊さんはどんな感じかね」
「班長、私の氷で止めますか?」
「氷かー……。『氷で凍らせる』ってのもやめたいんだよね。……もしかしたら血花ちゃんの霊化、使うかも」
「わ、私の技……?」
「うん」
血花ちゃん、すっごく嬉しそう。
確かに班長に『あなたの霊化、使うかも』って言われたら嬉しいけど。
「じゃ、別々で行動しよ」
班長が突然そんなことを言い出す。
「私と血花ちゃん、柊菜ちゃんと真気ね」
班長はそう言って消えた。
血花ちゃんはそのあとに高速移動した。
「班長、完全に狂っちまったな」
真気は刀を抜く。
「? 真気、どういう意味?」
「班長が昔みたいになっちまったってこと。あんまり気にするな」
そんなこと言われたって……。
今回の任務、班長意味深なことしか言ってないもん……。
「お前、あんま成長してねぇな」
……は?
「そりゃそっか。霊伐隊に入って1年も経ってないもんな」
「真気?」
「俺も班長もしてるぜ? いっつもこんなのしないけど」
え?
待って、マジでわかんないんだけど!
「班長と俺、同じとこで生まれて、同じ飯食って、同じふうに育った。だからかな、同じことしてる」
? 真気……?
「俺も班長も、敵が出てねぇのに刀抜いてるだろ?」
! 確かに!
そう思った瞬間、私の背中に激痛が走った。




