第8話 別れた空間
夜8時。
「お待たせ!」
私が校門で待っていると、元気な声が聞こえる。
班長の声だ。
私が声が聞こえた方向を見ると、そこには班長たちがいた。
「あ、訊き忘れたけど武器、それでいいの?」
班長が私の背にかけている刀を指差して言う。
「はい、これが使いやすいです」
「そっか、刀いいよねー。……で、柊菜ちゃん、何か変わったことあった?」
「いえ……特に……」
私が言うと班長はさらに笑顔になり、校舎を見上げる。
「じゃあ、行くよ。今回はどんな敵かわからないから、常に警戒しててね」
班長は急に声色を変えて言う。
……時々別人みたいになるよね……。
班長はそのまま中に入った。
私たちもそのあとを追った。
「……お前百人一首のテストの点数最悪じゃん……」
真気さんが壁を見て言う。
そこには2年生全員の、百人一首のテストの点数の一覧が貼ってあった。
「苦手で……」
「それにしてもひどすぎるだろ……」
「……誰にでも得意、不得意はある……」
琉璃さんが小声で弁護してくれる。
「そうだよ、気にすることないよ! 私なんて物理のテスト5点だもん!」
「威張って言うことじゃないでしょ……」
弘太さんが班長に言う。
「……そういえば、班長って学生なんですか……?」
私が振り向いて班長に訊こうとした。
しかし、それはできなかった。
そこには、班長はいなかった。
班長だけではない。
弘太さん、真気さん、琉璃さんもいなかった。
「……みんな……?」
「!」
おかしい……。
そう思ったのは真気。
今まで隣にいたはずの柊菜と琉璃もいない。
後ろにいた優希と弘太も。
「……霊の仕業か……?」
「……なんで?」
琉璃も柊菜と真気のように辺りを見る。
こちらも皆が消えているのだ。
「そうきたか……」
弘太は三人と違って冷静に考える。
「今回の霊は面白そうだ」
「ふーん」
優希は笑う。
皆がいなくなったこの状況でも。
「幽霊さんったら、何が目的なんだろうね」
誰に向けても言っていないこの言葉。
「この任務は柊菜ちゃんにとっては難しすぎるかな……」
再び誰に向けても言っていない言葉を発する。
もしこの場に人がいるなら、皆がゾッとするだろう。
優希はいつの間にか、笑いから『嗤い』に変わっていた。
「今回も楽しめそうだな――」
「――霊の血で、この手を汚すことが」