第72話 落ちてくる天井
敵は喘ぐ。
それでも楸菜ちゃんは表情を変えない。
「……すごいね、私の刀が刺さってもまだ生きてるんだ」
楸菜ちゃんは変わらない口調で言う。
でも何かいつもと違った。
そのうち、敵は叫びだす。
すると、敵の姿が消えた。
そして、天井が徐々に降りてくる。
……これ潰されるやつだ。
階段もなくなってる。
出口が完全になくなった。
「……へー、最後の抵抗ね……。久しぶりだなー、こういう敵と戦うの」
楸菜ちゃんは冷静に辺りを見る。
なんでかわからないけど、私も冷静だった。
数人の生徒は気絶している。
今気絶している場合じゃないでしょ……。
「楸菜ちゃん、どうするの? このままじゃみんな潰れちゃうよ?」
「そうだね……。出口もないし……。柊菜ちゃんの『柊花之防氷』で防ぐことはできる?」
できるかな……?
……やってみるか。
私は天井の周りに大量の柊の花を出す。
これで防げるといいんだけど……。
結果は予想通り、柊の花が潰されていく。
「えー……柊菜ちゃんの能力でもダメなの……? やっぱり月菜ちゃんがいればいいのにな……」
「そういえばさ、月菜ちゃんの能力ってどんなのなの?」
「えっとね……色々なことができるんだよね……。自分の姿を隠したり、すっごく眩しい光を出したり。でも今私が一番求めてるのはもっとすごい能力なんだよね。月菜ちゃんの手にボールみたいなの出してさ、それがどんどん大きくなるの。最終的には本物の月みたいになるんだよね!」
え……月菜ちゃんって結構能力使えるの……?
すっごく強いじゃん……。
「ここから大事なの! その月みたいなのに当たったらね、なんでもウサギになっちゃうんだ!」
……ウサギ……?
ウサギって……あのウサギ?
モフモフしてて可愛くて、あったかいやつ?
え……かわいすぎでしょ……能力……。
「……?」
月菜はとある草原で振り向く。
その草原は夜だった。
しかし、月菜の後ろには誰もいない。
「どうしたの?」
月菜に話しかけるのは榎菜。
二人はウサギを撫でていた。
「……いや……変な感じがしたから……」
「誰かが月菜ちゃんの噂でもしてるんじゃない? あ! きっと誰かが月菜ちゃんのことが好きなんだよ! それで話してたんだ!」
一人で納得する榎菜を無視して、月菜は首をかしげる。
そして、そのままウサギを撫でていた。




