第65話 敵の隙
「優希お姉ちゃん! みんなを避難できない!」
血花ちゃんが叫ぶ。
血花ちゃんを見ると、刀を敵にかまえていた。
「隙がない! こんなたくさんの人、移動させようとしたら少なくとも10人は死ぬ!」
隙がないのか……。
カピバラを除いてみんなが死ぬのはイヤだな……。
……久しぶりにでてきたな……カピバラ……。
覚えてる?
私の体育着をかいだやつ。
そいつは今、泣きそうな顔をして血花ちゃんに抱きついてる。
血花ちゃんはすっごく嫌そうな顔をしている。
情けない……。
「……ちょっと危険だけど……」
私は深呼吸をして、覚悟を決める。
そして自分の唇を嚙みちぎる。
「柊花之防氷!」
私の髪が白くなる。
傷も治った。
これで生徒のみんなが驚いてる。
「みんな! 動かないでね!」
私は生徒たちに言い、敵に斬りかかる。
あの敵が叫んだとき、私の骨が折れた。
『叫ぶと相手の骨が折れる』っていう能力なのかな……?
なら、叫べなくなるようにすればいい……。
私は敵の口の前に柊の花を出す。
『近づくななぁぁぁぁぁぁ!』
敵が叫ぶ。
すると、私の両腕が『ボキッ!』っていう。
骨が折れた……。
私は手に力が入らなくなり、刀を落とす。
でもこれでいい。
あとは、あの柊の花を凍らせれば――
そのとき、私の右脚に激痛が走る。
刀で斬られたような痛みだ。
でも、敵は刀なんか持ってないはず……。
痛い部分が冷たくなっていく。
――まさか……!
私は自分の脚を見る。
やっぱり、私の刀が刺さっていた。
脚がすんごく冷たい。
私は体勢を崩す。
当然、私に一瞬の隙ができた。
その一瞬で、敵は私を蹴り上げる。
私は吹っ飛び、倒れる。
めっちゃ痛い……。
私は脚から刀を抜く。
敵は私に襲いかかってこない。
真気と班長が相手をしている。
ヤバい……脚がめっちゃ冷たい……寒い……。
「柊菜ちゃん、大丈夫?」
彩希おばさんが私に駆け寄る。
「彩希おばさん……」
私は自分の能力で、自分の傷を治す。
でも相変わらず脚は冷たい。
「傷……治った?」
「うん……でも、脚が寒い……」
私は、自分の刀を見つめて言う。
彩希おばさんは私の脚を触って、何かを考えている。
「……この刀のせいか……」
彩希おばさんは私の刀を拾う。
その瞬間、彩希おばさんの手が凍る。
彩希おばさんは慌てて刀を放した。
「! 彩希おばさん!」
「……私は大丈夫、それより柊菜ちゃん。ちょっと痛いけど我慢して」
彩希おばさんは私を抱く。
痛い……?
私が無言でいると、彩希おばさんが私の胸を殴る。
心臓がある位置だ。
私は口から血を吐き、苦しむ。
そんな私を、彩希おばさんは黙って見ていた。




