第62話 札
「……柊菜ちゃん、なにがなんでも私から離れないで」
楸菜ちゃんが私の前に立つ。
何が起こるんだろう……。
「ちょ、ちょっと!」
私の後ろから聞き覚えのあるオネエの声。
パンだ……。
「どうなるの! 死にたくないわよ! ねぇ、聞いてるの!?」
私の後ろで何かギャアギャア騒ぐパン。
そういえば壱の伍班で生き残ってるのはパンだけか……。
「……ちょっと、黙ってて」
楸菜ちゃんは懐に手を入れる。
そしてお札みたいなものを5枚出す。
「集中する」
楸菜ちゃんはお札を自分の身体に貼る。
頭、右腕、左腕、右脚、左脚に貼っている。
何してるんだろう……。
私たちはしばらく黙っていた。
その間もずっと榎菜ちゃん、月菜ちゃん、椿菜ちゃんは少年に斬りかかっていた。
でも少年は傷ついていない。
逆に3人が傷ついている。
『おやァ、こんなに弱いのかァ。六花女神は』
少年は椿菜ちゃんに殴りかかる。
椿菜ちゃんが避けようとしたが、避けられなかった。
椿菜ちゃんのお腹が殴られる。
口から血を吐く椿菜ちゃん。
椿菜ちゃんが私にすっごい似てるから、なんか自分が殴られてる気分……。
あんまりいい気分じゃないな……。
椿菜ちゃんは吹っ飛ぶ。
……? あれ……?
椿菜ちゃん、笑ってる……?
この状況で……?
「……これで能力が使える……」
椿菜ちゃんは笑いながら少年に近づく。
どうなるんだろう……。
そう思って椿菜ちゃんを見つめていた。
そのときだった。
「みんな! 準備できた!」
楸菜ちゃんが叫ぶ。
楸菜ちゃんの周りの空気が歪んでるみたいになっている。
何が準備できてるの……?
「どうする!?」
「……こっちはかなりキツイ」
月菜ちゃんが少年に斬りかかりながら言う。
「私も結構キツイなー」
榎菜ちゃんは余裕そうな声で言うが、表情は余裕そうではなかった。
「私の能力……ちょうど使えるのに……。まぁ、柊菜ちゃんの安全が優先か」
椿菜ちゃんも言う。
私の安全……?
「柊菜ちゃん、ちょっと変な感じになるかもしれないけど、我慢してね! またね!」
楸菜ちゃんが私に言う。
そして楸菜ちゃんは頭に貼ってあるお札に触る。
「転!」
楸菜ちゃんが叫ぶ。
そのとき、私の視界が歪んだ。
気が付いたとき、私は壱の玖班の部屋にいた。
私だけじゃない。
真気、琉璃さん、弘太さん、班長、パンもいる。
その次の瞬間、吐き気が私を襲った。
「ウッ!」
「! 柊菜! 大丈夫か!」
真気が真っ先に私に近づく。
「う……うん……」
私は吐き気を我慢しながらさっきまでのことを思い出す。
さっきのはなんったんだろう……。
楸菜ちゃんは私に、『またね』って言ったよね……?
私はどうなるんだろう……。
私の安全が優先って言ってたよね……。
何が目当てなんだろう……。




