第49話 取り憑き
「失礼するぜー」
和生さんが『壱の玖班』の部屋に入ってきた。
いつも通り班長から『部屋集合』って連絡が来たから私たちはそこにいた。
でも班長が来ない。
そてなぜか和生さんが入ってきた。
「じゃあ任務について話す」
和生さんは私たちを見ながら言う。
班長は……?
「班長はどこなんですか?」
真気が私の代わりに和生さんに訊く。
和生さんはため息をつく。
「あいつ、『ちょっと休みたいから代わりに行って』って言いやがった」
「風邪ですかね……?」
「……いや、違う。とにかく優希の代わりに今日は俺が班長になる」
班長来ないの……?
いつもあんな元気なのに……。
大丈夫かな……?
「……じゃあ話の続きだ。最近異常な現象が起きている。人が急に暴走したり、消えたりする」
「霊の仕業ですか?」
弘太さんがほっぺを掻きながら言う。
「まぁ……ある意味そうだ」
「ある意味……?」
今度は琉璃さんが和生さんに言う。
「ああ、『取り憑いた』んだ」
取り憑く……。
「霊が人間の精神の中に入り、人間をコントロールするんだ。それで悪さして、最後はその人を殺す。最低な殺し方だ。なぜか霊のやつらはみんな取り憑くんだよ、最近」
和生さんはハチマキを外してハチマキを折りたたむ。
「それで、めっちゃ身体能力高い人間がいるって通報きた。そいつを殺るぞ」
えぇ……。
殺るって……。
「……あ、血花ちゃんとか大丈夫ですか? 和生さんがいないと……」
「ああ、あいつは大丈夫だ。クマのぬいぐるみ買っておいてやったから」
……え……?
血花ちゃんクマのぬいぐるみで遊ぶの!?
あの班長以外の人には毒舌の血花ちゃんが!?
クマのぬいぐるみ!?
あの血花ちゃんがクマのぬいぐるみを抱いてる……かわいい……。
「まぁ、そんなことはどうでもいい。現場に行くぞ」
「ちょっと待ってください。その霊に取り憑かれたと思われる人は特に害はないんですよね? その取り憑いた霊だけ殺すんですか?」
弘太さんがいつもよりちょっと真面目な顔で言う。
「取り憑いた霊だけ殺すことは不可能だ。その人間も殺す」
「なッ……! その人も殺すんですか!?」
「ああ、残念だが。行くぞ」
和生さんはそう言って部屋から出ていこうとする。
弘太さんは急いで和生さんの後ろに行く。
「本当に何もしてない人を殺すんですか……!」
「ああ……」
「霊伐隊は霊を殺す組織です……! 人は殺しません……!」
「仕方ねぇだろ!」
急に和生さんが叫ぶ。
全員の動きが一瞬止まる。
「霊に取り憑かれた人間はどうしようもない! それに敢えて話さなかったが、その人間は一般人を軽く15人は殺してる! 霊伐隊は霊を殺すだけが仕事じゃない。一般人を護ることも仕事だ」
和生さんはそう言い残し、部屋から出た。




