第109話 オタクの霊、いた
「――いた!」
琉璃さんが大声を上げる。
始めて聞いたかも……、琉璃さんの大声。
私は急いでその方向を見る。
すると琉璃さんは刀をかまえていて、私のところまで飛んできた。
私の隣にきた琉璃さん。
琉璃さんの吹っ飛んできたところを見てみる。
するとそこには『推』と書かれたハチマキを巻いている男がいた。
中年っぽい。
「ボ、ボクのナナミたんをよくも、よくも殺したな!」
その霊はそんなことを言ってる。
『ナナミたん』?
誰だろう……。
多分、私たちが殺したあのアイドルの霊だろう。
「ナナミたんを! ナナミたんを!」
霊は腰から木の枝を出して、私に向かう。
なんで木の枝なんだろう……。
刀とか銃とかならわかるけど、木の枝って……。
なんかすんごく弱そうなんだけど……。
「柊菜、一応警戒して」
琉璃さんは向かってくる霊に刀をかまえながら言う。
「あいつ、意外とやるから」
琉璃さん?
私は琉璃さんの全身を見てみる。
!
琉璃さんの右肩から血が……!
いつ斬られたの……?
さっき?
ってか、あの霊、どうやって琉璃さんを斬ったの?
見た感じだと、あの木の枝は『今出した』って感じがする。
ってことは、今まであの霊は武器を持ってなかったってことになる。
なのにどうして?
どうして琉璃さんはこんな傷を……?
すると、刃と刃の交わる音がした。
ハッと我に返る。
琉璃さんが私の目の前で、霊の持ってる木の枝を刀で防いでいた。
「柊菜、戦闘中にボーッとしないで」
琉璃さんは私の顔を見ないままそう言って、霊をお腹を蹴り飛ばす。
霊は遠くまで吹っ飛び、壁にぶつかる。
私は刀を二振りとも抜いて、霊を刺そうとする。
でも霊は私が近づく前にその場から離れ、真気のほうへ向かう。
真気の目が赤くなって、霊の後ろに班長が現れる。
多分真気が出した人形だ。
霊は班長の人形の存在に気づき、班長の人形に木の枝で斬りかかる。
木の枝が近づいてきても、躱そうとしない班長の人形。
『木の枝じゃ斬られない』って思ったみたい。
私は一応、木の枝と班長の間に柊の花を出す。
……それとも、敢えて護ろうとしなくていいのなか?
もし攻撃を喰らっても、傷つくのは『班長の人形』だから誰もダメージは受けない。
でもそれじゃ真気の人形は使えなくなる、つまり真気の霊化が……。
うん、やっぱ護るべきだ。
私は柊の花を出したままにした。
霊は木の枝で柊の花に斬りかかった――
――そして柊の花は真っ二つに切れた。




