第105話 思い出して
女の血が私の顔にかかる。
私は女の肩を斬ってた。
女は少し身体を震わせたあと、動かなくなる。
倒せた――
『――思い出して』
頭の中に声が響く。
そして私の身体が動かなくなる。
指一本動かない。
かなしばり……?
それより、今の声……、私の声……?
『月菜ちゃんたちのこと、思い出して』
また声がする。
やっぱり私の声だ。
『みんなのこと、思い出して』
また声。
そして、真気や班長、琉璃さんも動かなくなった。
まるで、時間が止まったみたいに。
『アクサのこと、思い出して』
アクサ?
アイツのこと……?
『二百年前のこと、思い出して』
二百年前……?
二百年前って……、江戸時代?
『自分の過去、思い出して』
自分の過去?
坂田家に生まれて、親を殺されて、霊伐隊に入隊して、壱の玖班に入った。
『本当の名前、思い出して』
本当の名前?
『坂田柊菜』だけど……。
そのとき、私の身体が動くようになった。
でも、みんなはまだ動けてないみたい。
私は周辺を警戒する。
新しい霊かもしれない。
「こっち」
私の後ろから声がする。
急いで振り向くと、そこには刀を背負ってる『私』がいた。
でも、髪と目の色が違う。
オレンジ色だ。
楸菜ちゃんの『オレンジ色』とは違う。
私の持ってる刀と同じ『オレンジ色』だ。
「なるほど……、未来は白色になるのか……。『柊』になるんだ……」
目の前にいる『私』は変なことを言う。
全く理解できない。
「でも、その刀持ってるってことは、月菜ちゃんたちともう会ったんだ」
『私』はそう言って、背中にかけてある刀を抜く。
!
私と同じ刀だ!
あのオレンジ色の刀!
……って、驚いてる場合じゃないな……。
相手が刀を抜いたってことは、斬り合いになるかもしれない。
その可能性のほうが高いか。
「ねぇ、思ったことない? 自分の名前の漢字、『柊』じゃないかもしれないって」
何を言ってるの?
そんなの思ったことないよ。
「椿菜ちゃんの『椿』、榎菜ちゃんの『榎』、楸菜ちゃんの『楸』、そして柊菜の『柊』」
うん、そうだね。
面白いね。
「月菜ちゃんの『月』、じゃあさ、陽もあるよね?」
……?
まぁ、そうなよね。
だからなに?
何を伝えたいの?
陽……、陽……。
……!
私の名前……『柊菜』……?
じゃあ……、『陽菜』もあるってこと……?
……うん、で?
それがどうした?
そんなことを思ってると、目の前にいる『私』が消える。
そして、みんな動くようになった。




