第100話 夜に月菜ちゃん
「じゃ、おやすみ……」
深夜一時。
やっと家に帰れた。
そして彩希おばさんは私を、私の部屋まで連れてってくれた。
私はお風呂に入らないままベッドに横になる。
痛みはもうない。
でも、もう右腕がないって思うと、怖かった。
また目が熱くなる。
彩希おばさんは『義手をつけることはできるかもしれない』って言ってた。
琉璃さんも、義足をつけたらしい。
でも、やっぱり嫌なことは嫌だ。
私は枕を顔に当てる。
そしたらためてた涙がたくさん出た。
気づけば私は、声を上げて泣いていた。
しばらく泣いていると、誰かが近くに来た気配がした。
「柊菜」
私にそっくりな声。
声が聞こえた方向を見ると、月菜ちゃんがいた。
「月菜ちゃん……」
「どうしたの? そんなに泣いて」
私は月菜ちゃんの正面に立つ。
月菜ちゃんは私の右腕があった場所を見る。
「腕は?」
「……もう……治らない……みたい……」
私は泣くのを堪えて、言う。
その言葉を言い終わるのに、時間がかかった。
声が出なかった。
それでも月菜ちゃんは私が言い終わるのを待ってくれた。
「再生、できないの?」
「うん……、やろうとしてるんだけどね……、できないの……」
「そんなはずないよ。腕くらい、すぐ再生てきるはず」
月菜ちゃんは私のお腹を触る。
そして目を大きくした。
「……『まだ完全にはなれてない』、か……」
月菜ちゃんはそうつぶやいて、私のお腹から手をはなす。
そして月菜ちゃんは、左手を口の前に持っていった。
すると、月菜ちゃんは親指を軽く噛んだ。
『軽く』っていっても、血は出ている。
「柊菜、口開けて」
私は月菜ちゃんに言われた通り、口を開ける。
「美味しくないけど、我慢して」
月菜ちゃんはそう言って、私の口の中に左手の親指を入れた。
血の味がする。
すると、身体全身が熱くなった。
『炎の中に入った』っていうよりも、『日光に長時間当たった』って感じ。
「これで大丈夫」
月菜ちゃんはそう言うと同時に、煙みたいに消えた。
私は左腕に違和感を感じていた。
左腕がムズムズするっていうか……。
すると、なぜか知らないけど、すっごく眠くなった。
私は立ったまま、意識がなくなった――
「――んん……」
目が覚める。
窓から光が入ってきていた。
もう朝みたいだ。
私はベッドに横になっていた。
私はベッドから出て、窓から外を見た。
そして気づいた。
なくなったはずの右腕が、あるということに。
100話目がこれか……。




