日常へ
次の日の朝、シオンを見送り皇王達は動き出した。
「結局、母上にはフレイムの復活に付いて話せませんでしたね」
「ああ、でも大丈夫だろう。母上にはアリエル様が憑いているからな。すぐにアリエル様からお伝えするだろう」
あえて憑いているという表現をした。
まさか、アリエル様が生まれ変わらせたシオンの側で見守っているなど、だれが想像できようか?
だが、これほど安心できる相手もいない。
神と同等の存在が側にいるのだから。
「アルト、緊急の伝令を昨日放ったが、実際に全ての貴族の当主が集まるのに半月近くは掛かるだろう。今の内に、備蓄の確認と、他国との交渉を外交官に伝えてくれ」
「かしこまりましたルーク皇王様」
アルトは兄弟であっても、仕事や公的の場では兄を皇王として敬っている。
そして仕事もできる有能なアルトは、しばらく忙しく動き廻るのだった。
学園にて───
「シオン!昨日はお城で泊まったって本当なの?」
イオンはなぜお父様達が自分に教えてくださらなかったのかプンプンッと怒っていた。
もし教えて下されば、シオンと一緒にパジャマパーティなどできたのに!などと悔しがった。
「ホントに、なぜ父上は教えてくださらなかったんだろうな?」
ルイン王子も腕を組んで静かに怒っていた。
「昨日は皇王様として、守護精霊アリエルについて、余り他言できないお話があったのよ。いずれルインやイオンにもお話があると思うわ」
寮に戻った後、アリエルからフレイムの復活について語られたので、シオンも何かできないか、考える事にしたのだった。
まだ学園は始まったばかり。でも、二ヶ月後には長期休暇に入るので、その時にイージス領に戻って対策を練りましょう。
……………本当ならカイルに会うのは辛いのだけれど。
シオンは学園へ行くと決めたとき、夏の長期休暇は戻らないつもりだった。
体調の悪いカイルに会えば、離れたくないと思ってしまうとわかっていたからだ。
最後まで側にいたい。
この気持ちが止まらなくなると確信していた。
シオンは迷いを消すように首を振って授業を受けるのだった。
それから少しして、ルイン王子とイオン皇女にも、1度登城するように手紙が届いた。
「なんの用事なんだ?『緊急招集』なんて只事ではないぞ?」
「そうですわね。貴族の当主、もしくは当主代行は全て登城するようになんて」
皇族として城に戻らないといけないだろう。
学生ではあるが、皇族の公務として授業を休める許可は出ている。
「シオン様は事情を知っているのでしょうか?
私の父である当主達が登城するように、王命の緊急招集が掛かったそうなのですが………」
シオンの側にいるサーシャ令嬢も不安そうに尋ねた。
「事情は知っていますが、私の口からはまだ言えません。無用な混乱を防ぐ為です。余り良い話ではありませんが、これから慌ただしくなるでしょうね」
サーシャは、シオンの言葉に聞きたい気持ちはあったが、深い事情があると感じ、当主である父の帰りを待つ事にするのだった。
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