切ない気持ち
シオンは深くため息を吐いた。
「変に気を遣わなくてもいいわよ。これは私の罰だから」
「罰ですか………?」
思わず聞き返すとシオンは言った。
「ええ………、前世ではカイルもこんな気持ちだったのよね。心配させまいと隠していた事が、周囲にどんな気持ちにさせていたのか、ようやく知ったの」
母上………
お母様………
呟くが誰も声を掛けられなかった。
「本当はイージス領から出たくなかった。ずっとカイルの側にいたかったの!でも!今の私ではずっと一緒にいる事はできないわ!新たな『生』を与えられた私はカイルを見送る事しかできないのよ!!!」
吐き出すように、想いをぶち撒けたシオンは泣いていた。
ううぅぅぅ…………
声を殺して泣くシオンを左右からシーラとカルラが優しく抱き締めた。
ああ、私はバカだ。
お母様が生まれ変わられた事に喜んで、残された者の事を深く考えて居なかったわ。
お母様はお父様の事を心から愛していらっしゃったのね。知っていたはずなのに……………
ごめんなさい。
お母様!
こんなにも苦しんでいたなんて!
でも、これだけは言わせて下さい。
「お母様、確かに愛する人が亡くなるのはとても辛いです。でも、これだけは言わせて下さい。シオンお母様は幸せになる為に守護精霊アリエル様が生まれ変わらせて下さったのです。お父様を忘れろとは言いません。ただ、同年代の若い異性にも目をやって下さい。貴女は幸せにならないといけないのですから」
ルークやアルト、そしてカルラは、シオン・ラブのシーラがこんな事を言うのが意外だった。
「…………今すぐには無理よ。カイルの存在が大き過ぎるもの」
「それでも、お母様のこれからの長い人生には、吹っ切らなければなりません!」
不安そうに見つめるシオンにルークとアルトも擁護した。
「そうですよ。アリエル様も母上に幸せになって欲しくて生まれ変わらせたんですよ!母上が幸せにならなくては、守護精霊アリエルの意志に背くことになります!」
「母上、アリエル様も母上が苦しんでいる事に気付いて申し訳ないとおっしゃっていました。人の心とはままならぬもの。でも、未来に向かって前向きに生きていけるはずです。父上も母上と再度再会できて後悔はないはず。どうか、母上も幸せになって下さい!」
シオンは家族の優しさに何も言えなくうつむくだけだった。
そして今夜は女性陣だけでパジャマパーティをして、大きなベットでシオンを真ん中に、恋バナに華を咲かせながらシオンを慰めるのでした。