隠し事
それぞれの話し合いが終わり、アリエルはリサの姿となってシオンの下へ向かった。
部屋に残されたルークとアルトは、簡単な打合せをした後、急ぎ手紙を書き上げ、王命で各地の貴族の当主を王城へ登城するように伝令を放った。
「取り敢えず、後は各貴族の当主が集まってからの会議になるな」
「ええ、今日は夕食を摂ってゆっくりするとしましょう」
一仕事を終えた二人は、夕食の時間になっていたので王族専用の食事をする部屋へ向かった。
部屋に入ると、ちょうどシオン達と鉢合わせになった。
「おや?母上、少し見ない内に美しくなりましたね」
シオンは美しくメイクされ、一目で高級な布地で作られた綺麗なドレスに身を包んでいた。
アルトがそう言うとシーラとカルラが反論した。
「アルト!言葉が足りませんわ!『より』美しくなったでしょう!」
はい!すみません!?
アルトは反射的に謝った。
「はは…………イイカラ。イイカラ」
疲れ切っているシオンに同情しつつ、食事に付いた。
「それにしても、本当に久しぶりだな。こんなにゆっくりと過ごせる時間は」
「そうですね。家族と一緒にいる時間のありがたみがわかります。会話がなくてもこの空間の空気が落ち着くのですよね~」
シオン達は食事を楽しんだ後、プライベートな部屋でくつろいでいた。
「はぁ、カイルも居れば完璧だったのに」
!?
シオンの何気ない呟きに、シオン以外はドキッとした。
「そ、そうだな。父上も居れば良かったですね」
「確かに。でもお父様はお母様とイージス領でずっと一緒にいたんですもの。偶にはお母様と子供達だけの時間があってもいいじゃないですか?」
何処かぎこちない子供達に、シオンはクスッと笑って側にいたシーラの頭を撫でた。
「本当に、こんな時間を『生前』に作れたら良かったわね。あなた達は私の自慢の子供達です。願わくば、長生きして人生を悔いのないよう生きてね」
母上………
お母様……………
この時、胸が熱くなる想いだった。
言うなら今しかない!
ルークは決意して話す事にした。
「は、母上!貴女に伝えなければならない事があります!」
「あなた!」
「お兄様!?」
カイルとシーラは悲鳴の様な声を上げた。
「どうしたのルー君?」
ルークの顔を見て只事ではない話だとわかった。
「た、大変伝え難いことなのですが、父上の事についてなんですが…………」
前世では体調が悪い事を隠していたせいで、みんなが後悔した。どうして気付かなかったんだ!と。
「あぁー、ルー君が言いたい事がわかったわ」
「「「えっ!?」」」
予想外な言葉に声がハモった。
「……………カイルがもう長くないのでしょう?」
!??
ガタッと椅子を倒して立ち上がって驚いた。
「は、母上!どうしてその事を!?」
「まったく、何年一緒に居たと思っているのよ。いつの頃からか、体調が悪い事を隠そうとしていたのね。バレバレよ!上級薬草で作った滋養強壮剤を飲んでいるのを見た事もあったから…………覚悟はしていたわ」
さっきまでの暖かい空気から重い空気に変わっていた。
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