デート?③
馬車が停まると、ルインは先に降りてシオンに手を出した。
「さぁ、足下に気を付けて」
「あ、ありがとうございます」
少し照れながら馬車を降りると目の前の光景に目を輝かせた。
「まぁ!ここは薔薇園の展示会でしょうか?」
「ああ、毎年、この1ヶ月のみ開催される王都の名物だな。私も毎年来ているんだ」
目の前には様々な薔薇が色鮮やかに咲いていた。
入口にはアーチ状に薔薇が巻き付いている門に、生け垣に色々な色の薔薇が咲いていて、大勢の人々が足を止めて楽しんでいた。
「さぁ、入ろうか!」
「はい!」
薔薇園の展示会には、一般用と貴族用に別れており、別々の通路で薔薇を楽しめる様になっていた。
「本当に綺麗ですね♪」
「そうだね。あっ、シオン、受付で言われたようにトゲがあるから触る時は気を付けてね」
「わかっていますわ」
珍しい薔薇を目の前に、シオンのテンションは上がっていた。
『本当に久しぶりですわね。懐かしいですわ』
過去の前世では、カイルと一緒に見て廻った想い出が蘇った。
シオンの慈愛にも似た表情を見てルインはドキマギしてしまった。
『シオンはこんな表情もできるのか!?』
胸の高鳴りが止まらない事に、ルインは自分にこんな感情があったのかと自分自身に驚いていた。
「き、気に入ってもらえて良かったよ」
「はい。本日は連れてきてくれて本当にありがとうございます」
はにかむように笑うシオンを見てルインは赤くなった顔を背けて言った。
「まだ入口だ。奥にはまだまだ沢山の薔薇が展示されているよ。そろそろ次に行こうか」
ルインの手をとり、繋ぎながらゆっくりと薔薇園を見て廻った。
「シオン、あそこのベンチに座って待っていてくれないか?飲み物を買ってくるよ」
「ありがとうございます」
ベンチに座ると目の前にある薔薇に視線がいった。
「この薔薇は……………」
そういえば昔、カイルから貰ったわね。
青ではないが、青に近い青紫色の薔薇だった。
シオンは赤色の薔薇よりは、白色や紫色の薔薇を好んだ。
本当にあの頃は大変だったけど、充実していたわ。
「シオン?」
名前を呼ばれてハッとなり、振り返るとルインが手にドリンクを持って立っていた。
「あっ、ごめんなさい。考え事をしていました。飲み物ありがとうございます」
「別にいいよ。それより飲んでみて。美味しいから」
ルインに勧められて飲んでみると───
「美味しい!これっ、薔薇の蜜が入っています?すごく香りもいいですね!」
「ここの名物なんだ。この期間にしか飲めないのが残念だけどね」
シオンは薔薇の飲み物に感動して、先程のしんみりした気持ちが吹き飛んだのだった。
『よろしければ感想、評価、ブックマークよろしくお願いします!』