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ペルセウスが王都の魔法学園に入学し1年経った。ついにシオンも辺境のイージス領から王都の魔法学園へ入学する時になった。
「月日が流れるのは早いものじゃな」
「そうですな。ペルセウスが王都へ行ったのが昨日のように思えます」
入口でシオンを見送る為に、家族や関係者、領地の民達が集まっていた。シオンは精霊教の信者に大変人気があるのだ。
「カイルは…………元皇王陛下は一緒に王都へ来ないのですか?」
シオンは一般の民がいるので言い直した。
「うむ、無論一緒に付いていきたいが、シオンは学生寮に入るのであろう?部外者であるワシは学園には入れんしのぅ~ここでのんびりと暮らしておるよ。長期休暇には戻ってきてくれると嬉しいのじゃ」
「うん、わかったわ。お土産沢山持って帰るからね!」
しっかりと握手をして名残惜しかったが、出発する事になった。
「シオンお嬢様、ペルのヤツによろしく言って置いて下さい」
師匠のゼファーが言った。
「はい。わかりましたわ」
シオンは両親にも挨拶をした。
「子供達が2人とも居なくなると寂しくなるわね~」
「お母様、ちゃんと戻ってきますから」
「身体に気を付けてね」
両親とも抱き合って馬車に乗った。
シオンの門出を精霊教の信者達は号泣していた。
「ああ、アリエル様の愛子様が居なくなってしまう…………」
ワイズ元教皇は皆に言った。
「何を泣いておるかっ!これは無事にここまで成長したシオン令嬢の新しい門出じゃぞ!笑顔で見送らんかっ!守護精霊アリエル様の愛子を悲しませる気か!」
ハッとなって信者達は手を振りながらシオンを見送るのだった。
「……………寂しくなるのぅ」
「そうですなぁ~」
ピクッ
何かを感じ取り、ワイズがカイルに手を貸した。
「イージス辺境伯殿!少し手を貸してくだされ」
!?
「大丈夫ですか!?」
「なに、少し疲れただけじゃよ」
口ではそう言うが、カイル元皇王の顔色が悪かった。
シオンの父イージス辺境伯は肩を貸して屋敷へと戻るのだった。
ベットに運んだカイルにメイド達が薬を持って慌ただしかった。
「ハァハァ、何とかシオンには気付かれなかったのぅ」
「カイル様、まさか前から体調が優れなかったのですか?」
そこにゼファーが口を挟んだ。
「私がカイル様に、上級ポーションを加工して作った体力増量剤や、他の滋養に効く漢方薬を渡しておりました」
「このバカたれが!おかしいと思ったのじゃわい。シオンラブのお主がここに残ると言ったのがのぅ!」
ワイズは親友の体調不良に気付かなかった自分に憤りを感じていた。
「フフッ、ワイズと違いシオンが亡くなってから無気力で数年生きていたからのぅ。そのツケがやってきたのじゃよ」
力無く笑うカイルに皆はなにも言えなかった。
「この事はシオンには…………」
「無論、黙っておいて欲しいのじゃ。ワシも未練を捨てて、新しい人生を歩みだしたシオンを見送らなければならんようじゃ」
出来れば、このまま死ねばシオンが別の人物と結婚する所を見なくてもよいかも知れぬなぁ~
シオンの幸せを願っているが、自分以外の人物と幸せに居る所を見ているのも辛いのだ。
そんなカイルの顔をワイズがバチンッと叩いた。
「弱気になってどうするのじゃ!お主はシオンと同じ事をワシにもしようとしていたのじゃぞ!もっと長生きせぬか!」
そう、かつてのシオンも体調不良を隠して病気が進行して亡くなった。カイルも奇しくも同じ事をしてしまったのだ。
「すまぬ………ワシとした事が弱気になっていたようじゃ」
「まったく似たもの夫婦が………」
ワイズは涙を流して呟くのだった。
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