激動する状況
1万もの捕虜の問題をシオンが解決策を奏上した。
エルザ軍が蹂躙し、焼き払った辺境の村や小さな町の復興の為に従事させると言う案だった。
纏まった数だと反乱や逃亡者が出るので、数百人ずつに別けて管理する事になった。
シオンは捕虜に酷い扱いをしないよう厳命し、虐殺に加担した兵士を割り出して、住民の前で処刑した。無論、カイルの許可の元でだ。
強欲なエルザ国王が諸悪の根源であり、それに追従するクズは処刑した。他の兵士は平民であり、国からの命令に逆らえなかっただけだと、シオンは恨みを抱く国民に、しんぼう強く訴えた。
そんな中、1人のエルザ兵がシオンに尋ねた。
「どうして敵である我々の為に、ここまでしてくれるのですか?」
シオンはキョトンとした顔をしたが、すぐに微笑んで言った。
「貴方達は自ら進んで戦争に参加したのですか?国からの徴兵には逆らえないでしょう?私は憎しみを後世に残したくないのです。偽善と言われようとも、後の子供達には平和な治世の下で暮らして欲しい。負の連鎖は何処かで断ち切らねばなりません。それにこれは私の夫、カイル皇王陛下の願いでもあります」
!?
その言葉を聞いたエルザ軍の兵士達は涙を流しながら土下座をしてシオン皇妃に、アガレス王国の民にお詫びをしたと言う。
そして、エルザ軍の兵士達は誠心誠意にお詫びをして、懸命に町の復興の為に働き、後に捕虜の返還が行われた時に、そのままアガレス国民として復興した町や村に留まる者も多くいるのだった。
そして、エルザ王国でも動きがあった。
「いったいどういうことだ!」
エルザ王国の国王『ヨダズク』は55歳と言う年齢で、太った体型の典型的な為政者であった。玉座で憤っているヨダズクに、伝令は震え上がった。
「は、はっ!近衛騎士団が指揮を執った国境砦の攻略に対して、我が軍は大敗を喫しました。近衛騎士団は包囲殲滅され全滅。それを見た砦攻めのエルザ軍は投降しました」
「馬鹿者!それは報告を聞いて知っておるわ!どうして、残った兵士達は【全員】投降したのじゃ!普通は、撤退するであろうがっ!」
そう、いくら負けたとはいえ、1万以上の兵士が全員投降するなどありえないのだ。
「そ、それは私ではわかりません。侵攻に従軍していた将軍や高士官でありませんと…………」
伝令はそう言うと早々に退出していった。
すでに他の貴族達も、王都の残存兵力は5千ほどと知っており、慌てて自分の領地に逃げたり、辺境の別荘に避難したりと、王都を脱出している。
目敏い商人も、王都が戦場になると思い、商品を持って逃げ出している。
するとどうなるかと思えば、あっという間に、エルザ王国の王都は物資が入って来なくなり、閑散となって治安が悪くなり、ゴーストタウンのような状態になったのだった。
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