短い再会と別れ
カイルは戻って来てから1日ではあったが休みを取り、シオンと子供達とゆっくりと過した。
「本当に大きくなったなぁ~」
長男のルークはちちうえ~とすでに喋れる様になっていた。
カイルはこの時、絶対に家族を守ると心に決めた。そしてシオンもこの優しい夫を心から支えたいと思ったのだった。
しかし、家族の時間は長くは続かなかった。
カイル皇王が戻って数日経った頃──
「本当に行くのか?」
「ええ、前から決めていた事です。そんなに心配しないで。長く留守にはしないから」
エルザ王国軍を追い払ったとはいえ、怪我人が多く発生し、王都にいる兵士達と入れ替えに砦の兵士が一部戻ってきているのだ。そして、砦に向かう兵士と一緒に、治療部隊を連れてシオン王妃が砦に向かう事になったのだ。
「カイルが戻ってきて、傷付きすぐに砦から動けない重症の兵士は不安に思っているはずよ。だから、大量の薬と治癒魔法使いを連れて私が向かう事で、少しでも兵士達の不安を和らげたいの。皇族としての責務を果たさせて」
「しかし、何も君が行かなくても…………」
渋るカイルにシオンは手を握った。
「カイル、大丈夫よ。すぐに戻ってくるわ。それに私も労いたいのよ。カイルがエルザ王国の王様に私を引き渡すのを拒否して、戦いを選んで私を守ってくれた兵士達をね」
!?
「シオン、知っていたのか?」
「バカね。カイルが無茶な砦奪還を決行したのよ?報告が来るに決まっているでしょう?」
シオンも独自に、軍の高官の中に子飼の人物を送り込んでいるのだ。情報はある程度、把握出来ている。
「すまない」
「違うわ。私は嬉しかったのよ。だから感謝を込めて行きたいの」
カイルはそう言われると反論できずに、惜しみながらもシオンを見送る事となった。
「すぐに戻ってきて欲しい。また敵の襲撃があるかも知れないからな」
「ええ、わかったわ」
こうして翌日に、あらかじめ準備をしてあった物資と兵達と共に出発した。
そして出発するシオンの首には珍しい紫色のマーブル模様の宝石のネックレスが着けられていた。
それは昨晩、カイルから贈られた物だった。
シオンは昨日のプレゼントされた時の事を思い出すと顔が熱くなった。
『本当ならもっと早く渡したかったのだが、こんな時ですまない。君の為に取り寄せた【チャロアイト】のネックレスだ。受け取って欲しい』
『まぁ!あのヒーリングストーンで有名な!?』
『幸いな事に回復魔法の効果を高める効果がある。そして君の身を守ってくれるだろう。役立てて欲しい』
『ありがとう!とっても嬉しいわ!』
そして二人は───
シオンはブンブンと頭を振って気を引き締めた。シオンは必ず、政務を終えたらすぐに戻ってくると誓うのだった。
「あなた。少しの間、可愛い子供達をお願い致します」
シオンはそう小さく呟いた。
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