告白と想いの行方は──
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ペルセウスと張り合っていたルイン王子が演奏の終わったシオンに近付いていった。
「凄いなシオンは」
そう言うルイン王子にシオンはガシッと両肩を掴んで言った。
「貴方は兄なんです!妹が苦しんでいる時に支えてあげなくてどうするんですか!たった1人の妹も守れなくて、国を背負って守れるはずがありません!」
ルイン王子は頭をガツンッと殴られたような衝撃が走った。
「貴方は優秀です!勉強に、剣術とひいき目抜きで同世代ではトップでしょう。しかし、人の心が!気持ちが!分からなければ誰も付いて来てくれません!もっと、周りに気を配って下さい!」
シオンは真っ直ぐに目を見詰めて言った。
「…………はい」
ルインは反射的に返事をするだけで、呆然としていた。
「まったく、ワシの子供の癖に子育てが下手過ぎるじゃろう」
「ホホホッ、シオン様は幼くなってもお母さんですなぁ~」
物影から見守っていた先王とワイズ殿が微笑ましい光景に笑っていた。
「…………しかし、少し王宮を見てないだけで、イオンの家庭教師に自分の『駒』を送ってくる者がおるとは1度、大掃除せねばならぬかのぅ?」
「ちょうど守護精霊アリエル様が降臨されたばかりです。野心ある貴族を牽制するには絶好の機会でしょうな」
皇家の後ろには守護精霊様がついていると知ったはずだからだ。これで、皇家の力はしばらくは健在だろう。
先王とワイズ殿が話していると、大きな声が聞こえてきた。
「感動した!惚れたぞ!シオン・イージス子爵令嬢!俺と結婚してくれっ!!!」
なんだと!?
先王は慌ててシオンの元に向かった。
「ルイン!?いきなり何を言っているんだ!」
「父上!俺はシオン令嬢に惚れました!せめて婚約させて下さい!」
ルーク皇王はシオンを見ると静かに首を振った。
「落ち着きなさい。シオン令嬢だけはダメなんだ!」
「どうしてですか!?」
噛みつくルインに諭すように言った。
「シオン令嬢は守護精霊アリエル様の『愛し子』だからだ。アリエル様も静かに暮らせるように手を貸しなさいと言っていたからだ。王族に嫁げば静かな暮らしはできなくなるからな」
「「守護精霊アリエル様の愛し子!!!?」」
イオンとルインは驚きの声を上げた。
「あ、あははそういう事なの。だからごめんなさいね」
そう言うシオンに、諦められないルインが手を握って言った。
「なら、時間を掛けてシオンに好きになってもらうよ。シオン令嬢が望めば問題ないだろう?」
え゛っ!?
ルインの言葉に固まってしまう。
「お兄様、無理強いはダメですよ!」
兄を止めようとしたイオン皇女に──
コソッ
「俺とシオンが結ばれれば、イオンもシオンと一緒に居られるぞ。協力してくれないか?」
!?
「はいっ!協力致します!」
秒で仲間になったイオン皇女であった。
なかなかの腹黒王子である。
「気持ちは嬉しいのですが、今は何を言われても同意できませんわ。だって、私には心から愛している人がいるのですもの♪」
チラッと頬を赤らめて先王を見るシオンは妖艶な美しさがあった。
それは誰だ!?
シオンの想い人は誰だと聞き返そうとしたとき、シオンは逃げ出していた。
「「えっ?」」
ダーーーーッシュ!!!
恥ずかしいですわ~!
シオンは真っ赤にした顔を両手で隠しながら走っていった。
「だ、誰なんだーーーーー!!!!!」
ルイン王子とイオン皇女は知らないのだ。
シオンが、父上の母親の記憶を受け継いでいる事を。
「グフッ!?」
先王もいきなりの不意打ちに胸を抑えた。
「まったく愛されておりますなぁ~」
「…………嬉しいのじゃが、心臓が持たんわい」
先王は理解しているのだ。
自分もシオンを愛している。しかし、同じ時を歩む事はできないのだ。
守護精霊アリエル様には奇跡を起こしてくれて感謝している反面、残酷な御業に恨みもした。
どうして自分もと、願わずにいられなかった。
しかし、無理して頑張っていた妻のシオンの事に気が付かなかった。
これが罪の償いと言うならどんなに残酷な事か。
自分の我儘でシオンの将来を閉ざす訳にはいかない。しかし、愛するシオンが他の男性と結婚し、幸せな家庭を築くのを見ていられるだろうか?
今は、問題の先送りをして、今の想いと関係を胸に秘めて一緒に過ごしていくだけであった。
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