愛情の行方
お父様達は萎縮していましたが、皇王達と『楽しく』お食事を致しました。
そして、お父様達が与えられた部屋でくつろいでいる時に、シオンは久しぶりに自分の部屋へ向かいました。
「…………まさか、まだ部屋をそのままにしていたとは思っていませんでした」
懐かしく部屋の中を見渡してみました。
「今の私達が隠居するまではこのままにしておこうと、皆で話し合って決めました。毎日ではありませんが、定期的に掃除してあります」
シオンは色々と見て廻った後、ベットの側に備え付けてある小物入れのタンスの前に行った。
「どうしたのじゃ?」
今は、皇王ルークと先王カイルのみ同行していた。シオンはタンスの1番上の引き出しを引くと、何やらイジり出した。
「良かった。誰にもバレてなかったのね」
二重底になっていて、底から何か取り出した。
「タンスの中にそんな仕掛けが!?」
驚く二人はシオンが取り出した物に注目した。
「覚えてる?隣国との戦争の時に、私も戦場へ向かわないといけなくなった時に、貴方が無事を願って贈ってくれたネックレスよ」
紫色のマーブル模様の宝石がついていた。皇王ルークは許可をとり、マジマジと見た。
「これは宝石なのですか?見たことがない【石】ですね。透明度もないですし、変わった模様だ」
「…………見たことがないのは当然じゃ。大陸の『とある国』でしか採掘されぬダイヤより貴重な宝石じゃからのぅ」
先王カイルの声が震えていた。
じんわりと涙が溢れていたのだ。
自分の贈ったプレゼントを大事にしてくれていた事が嬉しかったからだ。
「うふふ、この宝石の名前は【チャロアイト】って言うの。世界三大ヒーリングストーンと呼ばれていてね。回復魔法の治癒力を高めてくれる効果があるの」
「へぇ、この宝石にそんな効果が…………」
皇王ルークは感心したように呟いたが、シオンはニンマリと意地の悪い顔をして先王に視線を送った。
「な、なんじゃい!?」
「だってねぇ?朴念仁なカイルが、こんなシャレた物を贈ってくれるんだもの。四葉のクローバの次に嬉しいプレゼントだったわよ♪」
!?
【宝石言葉】の意味に気付いている!?
「なんの事かのぅ?あっ、少し用事があるのを思い出した。失礼する!」
先王は逃げるように出ていった。
「クスクスッ、照れちゃって可愛い♪」
「母上、話が分からないのですが?」
シオンは皇王ルークの疑問に答えた。
「カイルは私が宝石言葉の意味に気付いていると知って恥ずかしくて出ていったのよ。チャロアイトの宝石言葉は───」
【恐怖の克服】
【精神の安定】
これは戦場に向かうのでわかるけど…………
もう1つあってね。
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【無条件の愛】
「本当に愛されていると感じたわ」
しみじみと感傷に浸るシオンは思った。
『私はまだ先王カイルを愛しているんだわ。正直、成長してもカイル以外と夫婦になるなんて今は考えられないわね』
将来の事が心配になるシオンだった。
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