嘘でしょ!
2つの精霊の指輪が共鳴して謁見の間全体を眩しく照らした。
「くっ!遅かったのじゃ」
「いったいどこまで話が進んでいるのですか!?」
ドアから駆け込んできた先王とワイズ様が何が起きているのか見守るしかなかった。
光が収まるとその場にいた全ての者達が息を飲んだ。
精霊の指輪を起点に、空中に人影が浮かんでいたからだ。謁見の間は天井が高い。その場にいた者達は上を向いて微動だに出来なかった。
『親愛なる人の子らよ。我が名は守護精霊アリエル』
頭に直接響くような声に、人々は一言一句聞き逃さないよう音を立てずに聞き入った。
『この数百年、我が気に入る者が現れなかった。しかし、魂の波長の合う少女を見つける事ができた。我が愛し子を傷付ける事は何人も許さぬ。それは肉体的、精神的含めてである。我が愛し子は、古により契約しているアガレス王家に委ねるものとする。願わくば我が愛し子が健やかに安心して静かに暮らせるよう取り計らうようお願いする』
ゴクリッ
誰かの喉が鳴る音が聞こえた。
それだけこの場が、音を立てないよう静まり返っているのだ。
『また、遠くない将来…………そう約10年以降に国を揺るがす事変が起こるであろう。正確な日はわからぬが、それまでにできる限り備えをするよう忠告しておく』
「守護精霊アリエル様!それはどんな出来事なのでしょうか!?」
唯一、皇王が尋ねた。
『また【天変地異】が起こる可能性がある。食料の備蓄、避難場所の確保などの準備を怠らない事だ。愛する民の為に』
!?
まさかまた火山噴火でも起きるって言うの!?
皆が呆然としている中、アリエル様の姿が薄くなっていった。
『では【また】な、我が愛し子よ。健やかに育つがよい。それと我がプレゼントの【意味】を【正しく理解】してくれて嬉しく思うぞ。この国の親愛なる人々に精霊の祝福を!』
威厳ある声と態度の守護精霊アリエル様はスゥ~と消えていった。
アリエル様が消えた後でも、しばらくは誰も動けなかった。
少しして我に返った先王カイルが手を打った。
パンパンッ!
はっ!?
「皆の者よ!いつまで呆けておるのじゃ!守護精霊アリエル様の言葉を胸に刻み付けるのじゃ!そして、この幸運に感謝をするがよい!この国の守護精霊に会える機会など生涯あるかないかじゃぞ!」
おおぉぉ!!!!
ようやく、ざわめきが起こった。
「直答を失礼致します!もしかして先王陛下がイージス領に療養に向かわれたのは精霊の愛し子が関係しているのですか?」
貴族の質問に答えない訳にもいかず先王は言葉を選びながら話すのだった。
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