呼び出しです!
温泉の整備に忙しくしているある日──
「おーい!みんな集まってくれー!」
お父様の掛け声で、家族が集まりました。
みんな近くにいたのですが、メイドや執事を使いなさいな。領主が大きな声で家族を呼び集めるのはどうかと思いますわよ。
シオンはそんな事を考えながら応接室へ集まりました。
「さっそくだが、王宮から使者が来てな。アルト王弟殿下が仰っていた『陞爵』の件で、1度王宮に出廷して欲しいとの事だ」
ああ、なるほど。
「ではお父様、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
シオンはそう言うと出ていこうとしたが──
「待て待て!王宮は必ず家族で来て欲しいと言ってきた。理由は………わかるだろう?」
シオンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「私は平穏に暮らして生きたいだけなのです。今の王族と関わると大変な事になりそうで遠慮したいのですが…………」
ペルセウスは驚いた顔をしてシオンを見た。
「…………なんですかお兄様?」
「いや、温泉の工事の時に、温泉ですわーーー!!!!やっふふふっーーーーーですわーーー!!!!!って、叫びながら指示出していたシオンがなぁ~と思って」
「そうね~まだ子供なのに、大きな氷を出して暴れ馬から平民の子供を助けたり、温泉は素晴らしいものです~ってビラを配りながら、温泉の知名度を上げようと頑張っていたシオンがねぇ~」
おっとりお母様まで!?
「………シオン、お前は何をやっているんだ」
お父様は深くため息を吐いた。
「とにかく、王室の命令書は無視できない。家族で王都へ出掛ける。これは決定だ!」
なっ!横暴ですわ!?
憤慨するシオンに言った。
「そんな顔をするな。それにシオンも本当に会いたくない訳ではないだろう?ただ会い難いと言う事はわかっている。前世はどうあれ、今は俺の娘だ。絶対に守る」
お父様……………
そう、私は恐れていた。
死んでしまった自分が、この姿でどのような顔で会えば良いのか。
でも、夫や次男には会ったのですもの。
いつまでも逃げてはいられませんわね。
シオンは覚悟を決めた。
「………わかりました。一緒に行きますわ」
「ああ、ありがとう」
少ししんみりした所でペルセウスが言った。
「僕は王都が初めてだから楽しみです」
都会に憧れる兄の姿にほっこりするシオンだった。
「わかりました。この5年で王都がどう変わった知りませんが、昔の知識を動員して王都の観光名所を案内致しますわ♪」
これは『初めての王都観光』のパンフレットを作らなければなりませんね!
あら?
そう思うと楽しくなってきましたわ。
こうしてイージス男爵(子爵)一家は王都へ向かう事になるのでした。
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