予想外な訪問。マズイ！バレた！？
さらに半年の月日が流れた。
先王陛下の屋敷が完成し、元教皇様の屋敷も完成間近に迫った頃───
「なんでどんどん人が集まって来るんだ？」
シオンの父親にして領主であるジークは首を傾げていた。
先王陛下の屋敷が完成し、ワイズ元教皇様の屋敷が完成間近で、工事が一段落する時期に中央や周辺の地域から人がどんどん集まってきて、住居が足りなくなると言う問題が出てきている。
「お父様、領地改革と共に中央までの『街道』を整備していたではないですか」
うん。そうだが？
それが何か？
と、そう言うシオンの言葉に首を傾げた。
「今までは土の荒道で雨の日など泥濘み、移動しにくかったですが、石畳の立派な街道にした事で、他の地域の商人がうちの領地に何かしら好景気で、儲け話があるのではと、来るようになったのですわ」
「それだけでか？」
チチチッ！と、シオンは指を鳴らした。
「今も街道の整備に工事業者が仕事をしています。少なくとも数十人は。そんな人の多い所で盗賊が出るでしょうか？」
！？
「なるほど！道の整備に多くの人の目があるので、商人を狙う盗賊が手を出しにくいと言う訳か！そして商人も安全に旅ができるとなれば、多くの行商人が便乗してやってくると言う訳だ！」
ジークはようやく理由がわかり納得して頷いた。
「それにしても、植物学者を雇って良かったですわね。日持ちする乾燥薬草などが高値で取引されてます。思い切って『酒造』を新築して5倍の生産量にしたのは英断でしたわね」
これは先王陛下の強い要望があっての事だった。
「ああ、他の商人や大工の方々も美味いと言ってくれたからな。自信を持って売値を上げる事にしたよ」
今までは銀貨１枚で卸していた地酒『精霊の水』を銀貨５枚で卸すと決めた所だった。
5倍の金額で売れるのですもの。
さらに財政が潤いますわね♪
シオンもホクホク顔だった。
そんな時、中央の王都から来客がやってきた。
「突然の訪問で失礼する。父上が世話になっている」
やってきた人物を見てシオンが驚いた。
アルト！？
シオンは思わず口に出して呼んでしまった。
「うん？どこかでお逢いしました────えっ、…………母上？」
！？
「な、何を仰っているのかわかりませんわ。私はイージス男爵家長女シオン・イージスと申します。王弟殿下におかれましてはご機嫌麗しく」
シオンはカーテシーをして挨拶したが、動揺していた。
「えっ！？この御方が現皇王陛下の弟様なのですか！」
父親のジーク男爵が聞き直し頭を下げた。
「…………はい。この地で我が父親である先王がお世話になっていると伺い、遅くなりましたがご挨拶に伺った次第です」
チラチラッとシオンに視線を向けるアルトにシオンは顔を逸らした。まさか自分の子供が突然やってくるとは思っても見なかったのでつい名前を口走ったのに後悔した。
「それより、父親のイージス男爵が知らなかった私の顔をどうして御息女が知っていたのか伺いたいですね？」
アルト殿下は目を細めて尋ねるのだった。
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