忙しい日々
あれから忙しい日々が続いた。
「う～む。本当にシオンの言う通りになったなぁ～」
目の前には先王陛下の屋敷を建てようと、多くの大工が作業に取り掛かっていた。
すでに基礎工事が完了している状態だ。そして、目敏い商人がすでに多くやってきて商売を始めていた。
商人達は領主の許可を取り、広場で市を開いていた。これはシオンがバラバラに商売をさせるよりも、大きな広場でまとめて市を開いた方が効率が良いと言ったのがきっかけであった。
目の前には久しくなかった活気があった。
その活気を見てイージス男爵は胸が熱くなる想いだった。
「またうちの領地に活気が戻るとは──」
「お父様、これからもっと人が流れてやって来ますわ♪今まで以上に豊かで人々が溢れる領地にしていきましょう！」
ああ、そうだな。と言ってしばらくその活気ある市を見つめていた。
お父様、本当にまだまだですわ。
この領地をもっと豊かにしてみせます！
シオンは優しい両親の為に領地の活気を取り戻して豊かにすると心に誓っていた。
イージス男爵領では領主の屋敷がある街の他、小さな村を5つほど管理している。
田舎なのか街の中ではなく外に領主の屋敷があった。そしてその隣に先王の屋敷を建てているのであるが、実はもう１つ頭の痛い種ができたのだ。
イージス男爵の屋敷の逆隣に、元教皇のワイズ様の屋敷も建てる事になったのだ。
「はぁ～王家と教会と挟まれるなんて、どんな罰ゲームなんだ？」
お父様はげんなりしていた。
「そうですわね。話によると先王と元教皇様が今後、儚くなられても、避暑地の別荘として使う予定だと伺いました。ワイズ様は守護精霊アリエル様が降臨された街の教会を『聖地』として認定する方向で動いているそうですわ」
これはワイズ様と言うより、教会の総意だろう。まだ上層部しか知らない事だが、王家と話し合って、折り合いをつける事になっている。
それだけ守護精霊アリエル様が降臨されたと言う事実は大きいのである。
もう少し受け入れ態勢が整ってから告知する予定である。
「しかし、良かったではありませんか父上。これで精霊教の信者が【聖地巡礼】の為にイージス男爵領に多くやってきてくれます。先王陛下と教会の方から支援金が届くそうなので、これを機に街の整備を整えましょう！」
ペルセウスも父親に進言した。
アリエル様が降臨されたと告知されれば、国中から信者がやってくる。いや、隣国からも信者がやってくるだろう。
そうなれば、イージス男爵領の発展はすでに約束されているのだ。街道整備や宿屋の建設など急務である。
「…………お前達は本当に俺の子供なのか？」
頼りになる長男と娘であるが、しっかりし過ぎてないか？
自分が5～6歳の時なんてチャンバラごっこなどして遊んでいたぞ？
「まぁまぁ、本当に私達から生まれたとは思えないほどしっかりしてますものね～」
ほんわかなお母様もやってきました。
「今まで苦労してきたのです。守護精霊アリエル様が御褒美をくれたのですわ♪」
イージス男爵もそうだなと頷き、仕事に取り掛かるのであった。
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