王家の話し合い①
先王カイルが辺境へと向かう準備をしている時に、先王と話し合った現皇王ルークは兄弟を集めた。
「忙しい所をすまないな」
ルークの前には弟のアルト、すでに降嫁して公爵夫人となっている妹のシーラが座っていた。
「何をおっしゃるのですか。現皇王にして敬愛するお兄様のお呼びですもの。何を置いても参上致しますわ」
「シーラはいつまで経っても騎士の癖が抜けないな。口調が昔のままだぞ?」
堅苦しい言い方にアルトがからかい口調で軽口を叩いた。
今でこそ結婚して丸くなったが、1番下の妹であるシーラは女騎士として活躍していた。
幼い子供の頃、隣国との戦争で、父と母が戦場で指揮を執らないといけない姿を見ており、自らが強くならないとと思い、鍛錬して成長した頃には戦争は終決していたが、騎士団を率いて治安維持や、盗賊退治など王家の顔として活動していた過去を持つ。
「アルトお兄様こそ、すぐに人をからかう癖が治っていませんね。今すぐ矯正してあげましょうか?」
「わかってないな。すぐにからかいたくなるのは、俺の好意の現れなんだぞ?」
ゲンナリした顔でシーラはアルトの顔を見た。
「自分で言いますか。本当にアルトお兄様は変わらないですわね」
「いやー!照れるじゃないか」
「「褒めてない!!!」」
ルークとシーラがツッコミを入れた。
実に仲のよい兄妹である。
「コホンッ、あーそろそろ用件を話そう。実は──」
なかなか話が進められなかったので、無理矢理話題を変えた。
「守護精霊アリエル様が現れた!?」
「上級薬草の安定栽培!?」
いったいどこから驚いていいのか、二人はツッコミまくった。
「そうだ。私も父上から聞いただけなので、まだ裏付けが取れてはいないが、元教皇であるワイズ殿からも、強く真実であると念を押されたよ。ただ、父上はまだ何か隠しているフシがあるのだ」
「ワイズ殿は実際にアリエル様に会ったのでしょう?あの御方がこんな嘘を言うなんてありえないですしね」
自らの信仰の神様が現れたのだ。王家にはお兄様が着けている精霊の指輪もある。
守護精霊アリエル様は、実在するのだ。
「ああ、言い忘れていた。アリエル様はイージス男爵家の令嬢に精霊の指輪を授けて、【精霊の加護】を与えたそうだ。父上が言うには、『精霊の指輪』が証拠になるだろうと言っていた」
!?
「それを先に言ってくれ!精霊の指輪がもう1つあるって事なんだな!?」
「まさか、そんなにアリエル様の寵愛を受けた令嬢だなんて、いったいどんな功績を上げたのでしょうか?」
ルークは軽く首を振った。
「そこなんだ。父上もなぜアリエル様が精霊の指輪を授けたのか教えてくれなかったのだ」
「なるほど。確かに不思議ですね。何か理由をつけてお茶会に招待して聞き出しましょうか?」
ここでシーラが根本的な勘違いをしていると気付いた。
「お茶会?何を言っている?イージス男爵家の令嬢はまだ5才だぞ?無理に決まっているだろう?」
!?
「「いや、聞いてないから!!!?」」
今度はシーラとアルトがツッコミを入れた。
「兄貴、男爵家の令嬢しか聞いてないから。普通、成人した20前後の女性だと思うだろう!」
アルトは公式の場では兄上と呼ぶが、私的な場では兄貴と呼ぶ。
うんうんと、シーラも同意した。
うっかり言い忘れたり、見当違いな勘違いをするのは遺伝のようである。
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