取り敢えずやってみる!
シオンはいくつかの実験を試みていた。
「お嬢様、これはどんな実験でしょうか?」
長年イージス男爵家に仕えているメイドの【リサ】が尋ねた。数少ない秘密を知る使用人である。
まずシオンが行ったのは、イージス男爵の自宅の側にある日当たりの良い土地を耕し、裏庭から運んだ上級薬草の新芽を植えてみた。
さらに、屋敷の壁で日陰になる場所にも植えてみた。
「これは、裏庭の薄暗い場所で増殖していたから、ジメジメした場所がいいのか、日当たりの良い場所がいいのかの実験よ」
「なるほど。でも同じ畑でも、列によって【植え方】も違いますね?」
シオンはニンマリして答えた。
「ええ、よく見てるわね♪深く掘った穴に埋めたり、浅く植えたり、土を盛って日が当たりにくくしたり、いくつかのパターンで植えてみたの。あっ、隣の畑には裏庭の森の【土】も混ぜたりしたわ」
シオンは観察ノートにしっかりと、それぞれの発育状況など記載しながら言った。
「大変なんですね」
「それはそうよ。誰もやった事のない初めての試みですもの」
マニュアルがないのですもの。1つ1つ、試していくしかないのよね。時間が掛かるけど。
「まぁ、まだ植えたばかりですし経過を見守るしかないわ」
そんな時、シオンを呼ぶ声が聞こえた。
「シオンお嬢様~、当主様がお呼びです!」
「はーい!今、伺いますわ~!」
なんだろう?と思い、屋敷に戻り書斎に行くと難しい顔をしたお父様がいました。
「ああ、きたかいシオン」
「失礼致します。お呼びと伺いましたが?」
お父様は机に有った手紙を渡してきました。
「これは………?」
手紙を見てすぐにピンッときた。見慣れた印蝋が押されていたからだ。そう、アガレス王家の印蝋が。
手紙を見ると、植物の専門家の派遣と一緒に先王カイルも移住してくるとの事だ。
はっ!?
「専門家はともかく、先王も移住してくるのですか!?」
時々、遊びにくるとは思っていたが、まさか移住してくるとは思っていなかった。
「そうなのだ。そこで問題になるのが住居だ。先王様が住まれる家を建てなければならない。移住が早いので、しばらくはこの屋敷の客室で泊まって頂くが、警備の問題もあるので、それなりの屋敷を建てなければならないだろう」
「なるほど。専門家の人や警備の騎士達は(何名かくるよね?)人がいなくなった空き家を手直しして住んで貰えばいいけど、流石に先王の住居は、新しく建てないとマズイですわね」
なになに?手紙には費用は王家が持つので、小さくていいので住める屋敷を建てて欲しいのと、場所は…………うちの隣!?
「そうなのだ。別に何かある訳ではないが、王族の方が隣に住むと言うのは………まぁ、色々と気を遣う事になるなぁ~」
さらに、しばらくはここに滞在する訳ですしね。
「まったくもうっ!今世では静かに過ごしたいと言ったのに!」
プンプンッと怒るシオンと裏腹に、お母様はウットリしていた。
「まぁまぁ♪なんてロマンチックなんでしょうね。死んだ愛する人が生まれ変わって生きているのですもの♪せめて側にいたいと思うのは仕方がないのでは?本当にシオンは先王陛下様に愛されているのですね」
ボンッ!
シオンは母親の言葉に真っ赤になった。
「あらあら♪お顔が真っ赤よ♪いいわね~お母様、こういう話を娘とするのが夢だったのよ♪」
年齢ではシオンの生前の方が上だったが、恋バナの好きなお母様には敵わないのでした。
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