守るために
落とし穴に落ちたフレイムは首だけ出せるほどの深さであった。これは予想より大きかったのがある。
本来であれば穴の上から一斉攻撃する予定だったのだ。
それでも動けないチャンスに変わりはなかった。
「バカめ！大事なシオンの守りを手薄にする訳がないだろう！クソトカゲをぶっ殺してやるぞ！」
ルイン王子が先頭に立ち、シオンの兄ペルセウスが補佐として隣にいた。
「氷や水属性を付加した剣で攻撃を仕掛ける！１番隊は正面から！２番隊、３番隊は左右から攻撃！ブレスに気を付けろ！」
フレイムはジタバタと落とし穴から出ようとするが、落とし穴の外周に潤滑油が塗ってあり滑って登れなかった。
全力疾走からの剣をフレイムに突き刺すと、剣の半分まで鱗を貫き刃が入った。
グオォォォォォォォオオオオオオオ！！！！！！！
フレイムの雄叫びが響いた。
「グッ、なんて声だ。だが、効いている！攻撃が通るぞ！」
首だけ出ていたのが幸いした。
フレイムの首や頭に次々に攻撃を加えた。
皆が、ヤれる！と確信したとき、フレイムが火炎弾を空に向けて放った。
「なんだ？苦し紛れの攻撃か？」
空に放たれた火炎弾に視線がいくと、すぐに危険を感じ取った。
「全隊！結界魔法を全力で張れーーーー！！！！」
空に放たれた火炎弾は、そのまま数えきれないほど分解され、フレイムの周囲に落ちてきた。
それはクラスター爆弾に似ていた。
ドドドッ！！！！
フレイム自身にも降り注いだ。
「クソッ！まさか自爆攻撃だと！？」
結界が間に合った為、人的被害は最低限に済んだが、周囲は焼け野原になった。
そして、フレイムはダメージなしで落とし穴から出てきた。
「そうか！炎で潤滑油を燃やしたのか！？」
怒りを露わにしているフレイムは、ルイン達に火炎弾を連続で発射した。
「全隊、散開しろっ！」
結界魔法では防げないと判断し、逃げに徹した。
そこに、平地に展開した部隊がやってきた。
「魔法部隊！一斉攻撃！ルイン王子達を守れ！」
背後から何百と言う魔法使い達の魔法がフレイムを襲った。背中から多くの魔法がぶつかり、フレイムの穴の空いた翼は完全に折れて地面に落ちた。
フレイムは振り返ると、グワッ！とブレスの発射態勢に入った。
フレイムのブレスは強力過ぎて防ぐことは不可能。
故に避けるしかないのだが、これだけ密集しては逃げる事もできない状態であった。
「ブレス撃った後は、スキできる！味方の犠牲を無駄にするな！放った後に一斉攻撃だ！！！」
隊を預かるガープは防げないのなら、味方の犠牲を無駄にしない為に動こうとした。
しかしそうはならなかった。
フレイムのブレスが放たれる時、フレイムの足下の地面から巨大な氷の柱が現れ、フレイムの体勢を変えた。
フレイムの口は空に向かい…………
ゴオオオオオォォォォ！
フレイムのブレスは何もない空に放たれたのだった。
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