これからについて
先王カイルとワイズ元教皇様は、あれから3日間滞在し、シオンと長く一緒に過ごした。
「名残り惜しいが、1度帰らねばならん」
寂しそうに別れを告げる先王にシオンは微笑みで返した。
「私は寂しくないわ。だって、二度と会えないと思った貴方と再会できて、生前では伝えきれなかった思いを打ち明ける事ができたのだもの♪」
シオンは皺くちゃな先王の手をギュッと握りしめた。
「貴方は健康なんですもの。まだ62歳でしょう?いずれ別れがくるとしても、頑張れば20~30年は生きられるわ。まだまだ一緒に過ごせるわよ♪」
ちなみに、シオン皇后と先王は3歳の年の差があり、シオン皇后の方が年上だった。
「うむ、そうじゃな。ワシも色々と準備せねばならぬしな」
「あら?もう亡くなった時の準備をするの?」
「ばっかもん!そんな準備をするかっ!別の準備じゃよ!まったく、時々見当違いな考えをする所も変わっておらぬな…………」
はぁ~と、ため息を吐く先王を、面白そうに笑うワイズ様がいました。
「ほほほっ!元気が出たようでなによりですわい。ワシも国内をある程度、周りましたので先王に付き合うのも悪くないですな」
先王カイルはキッとワイズ様を睨んだ。
「ワイズよ。邪魔をするつもりか?」
「いえいえ、滅相もない。ただ、崇める守護精霊アリエルにお会いできたのです。シオン令嬢のお近くにいれば、いずれまた会える可能性もあるでしょう?」
腐れ縁である先王カイルとワイズ様は口では色々と言い合っても、顔は楽しそうであった。
「イージス男爵殿、シオン令嬢には生前の記憶があるとはいえ、貴殿の娘に変わりはない。どうか、愛情を込めて育てて欲しいのじゃ」
先王は正面に立ち深く頭を下げた。
「あ、頭をお上げ下さい!言われなくとも、大事に育てます!」
「そうか。余計な事を言った。すまぬ。それと、上級薬草の栽培に付いて早急に専門家を派遣しよう。実験を重ねて軌道に乗れば、労働者の手配もしよう」
「ありがとうございます!」
今度はシオンの両親が頭を下げた。
「カイル!身体に気をつけてね」
「お主もな。子供は風邪を引きやすい。体調を崩したらすぐに医者に掛かるのじゃぞ?これは絶対じゃ!」
生前、たいした事ないと無理をして病気を進行させてしまった事を心配しているのだ。
「わかってるわよ!子供じゃないんだから!?」
「「「いや、子供だろう?(じゃろう)」」」
わはははっ!笑い声が響き渡るのだった。
先王達が居なくなってイージス男爵家はまた静かになりました。
しかし、それは嵐の前の静けさという事に、後になって気付くのでした。
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