平穏
評価等いただければ幸いです。
アイツとの対話後、俺のソウルコアエネルギーは予想外の増大を見せ、バイオスキャナーで得られる情報分析能力が桁違いに上がった。さらにギャラクティカダーク号のブラックボックスのいくつかを解放することが出来て、俺達は新たなロストテクノロジーを手にすることが出来たのだ。
ほとんどがソウルコア関連のデータだが清志が狂喜するレベルの工学系技術も少なからずあり、宇宙戦艦と巨大ロボの開発の目処がついて常にハイテンションだ。ハルも週一回は基地に顔を出して巨大ロボの設計に参加している。
ハルは根がオタクなのでテンションが異常に上がっており清志、今日子と激しい議論をしている。ビューティーサニーの時は女性型で容姿と装備、必殺技のセクハラ攻撃にドン引きしていたが今回は無骨なデザインのスーパーロボットタイプに決定したのでかなり前のめりだ。
「やはり機動性と防御力、攻撃力……どれも犠牲にしたくはないな」
「となると高機動、重装甲、武装重視に偏らせずにバランスタイプが最善だと思います。武装は内蔵型にして出来るだけシンプルなデザインにするのが良いかと」
「ハルちゃんって意外とリアル系じゃなくてスーパーロボット系の志向なんだね」
「はい! だってリアル系って基本的に量産機でしょう、主人公機にしてもカスタム機や試作機、新型機じゃないですか。それに比べてスーパーロボットはオンリーワン機体! その一機に人類の希望と科学力の全てを詰め込んだ特別感! しかもパイロットは私! テンションマックスでもう脳汁垂れ流し状態です!」
熱く! 熱く! 熱苦しく語るハルに、今日子がハッとした顔になって問いかける。
「ハルちゃん! 必殺技はどうする!? 今のところは真人さんが体当たり、キヨピーがドリル、私が剣で意見が分かれているんだけど! やっぱりパイロットの意見も聞かないと! 当然、剣だよね!」
「ロボットの必殺技ですか? 私はギガドリルブレイクと超電磁スピンとかの回転突撃貫通技が好きです!」
「よっしゃぁぁぁぁ! ハル! 必殺技はドリルによる全身突っ込み攻撃に決定だぁぁぁ!」
変形してから体当たりのバリエーションの一つだから俺にも異存は無い。今日子は両手と両膝を床についてうなだれていた。
「チックショォォォォ!」
「なあ今日子、一応手持ち武器として剣を用意しといてやるから機嫌直せや」
「ビーム剣じゃなくて実体剣?」
「もちろんだ!」
「ならばよし!」
親指を立て合って良い笑顔をする今日子と清志だが俺にはその辺の感覚がよく分からん、ハルまでが親指を立てて笑っている。
「そう言えば真人、ソウルコアの研究がかなり進んだって聞いたんだがロボや宇宙戦艦に影響は無いのか? ビューティーサニーの時みたいにソウルコアエネルギーの影響で伝達系や駆動系に負担がかかるならそれに合わせたセッティングが必要なんだが」
「ソウルコアエネルギーによる負荷は操縦者であるハルのソウルコアを分析して割り出したデータを送るよ」
「助かる、今日子もデータの処理と計算の補助を頼む」
「OK、 キヨピー! ハルちゃんも手伝ってね」
「もちろんです! たっぷり勉強させてもらいますよ」
さてとまだ視界の赤色化には余裕があるから、解放したブラックボックスから得た情報と俺が今まで取ってきたデータを合わせて検証するとしよう。自分の研究室に戻ろうとすると清志に声をかけられた。
「真人! 明日は休みだろう? またツーリングか?」
「明日は昔の知り合いと会う約束があるんだ、まあツーリングも一緒にするんだけどな」
「真人さんって意外と友達多いもんね」
「意外とは余計だ! とりあえずソウルコアに関する論文をまとめたら今日は休むつもりだ」
その後は視界が赤色化するまで論文をまとめた後、夕食をとる。ロボット開発チームは新旧ロボットアニメについてディープな議論を繰り広げているので今日は幸四郎さんと浩二と同席している。今日のメニューは牛もつの味噌煮込みだ。
「浩二は鶏肉の味噌煮込みなのか?」
「ああ、モツは苦手なんだよ。真人は相変わらずてんこ盛りだな」
「真人は食べる事に無頓着で出された分しか食わないからな……必要カロリーが常人の数倍だからこちらで管理してやらないと体調不良をおこしかねん」
「確かに! 最初の頃はガリガリに痩せてたもんな」
「どうしても研究に没頭すると他の事は無頓着になるんだよ、視界の赤色化処理をしておかないと脳死するまでやりかねんからな」
本当に幸四郎さんの体調管理と脳のリミッターが無いと冗談抜きで生死にかかわるからな。自分で言うのもなんだが今の俺は一人で生きることは困難だ。研究に没頭しているうちにいつの間にか死んでそうだ。
「ところで真人、明日は知人に逢いに行くって聞いたけど誰に逢いに行くんだ?」
浩二が鶏の骨を口から引き抜いて聞いてくる、最近は浩二とかなり気安くなってきた。浩二自身の石頭が砕けて柔らかくなった事と俺自身の変化もあるんだろうな。
「知人に逢うと言うよりも同窓会みたいな感じだな、高校時代にシメた暴走族や不良グループの頭達とツーリングに行くんだ。モノアイドラゴンズの伊達に声をかけたら全国の元族の頭達が参加を希望して来てな、明日は昔話に花を咲かせるつもりだ」
「えっと……モノアイドラゴンズの伊達って確か元暴走族の名物教師だったよな。真人が退治した不良達は更生したって聞いたけど、みんな社会人としてやっていけてるのか?」
「面白いことに警察関係者が多いな、会社経営者や医師、キャリア官僚もいるぞ。足を洗ったあとは勉強を見てやったからな」
食事が終わると風呂だ、今日は鷹丸が先に来て湯船に入っていた。俺の姿を見つけると軽く頭を下げて挨拶をする。
「真人さん俺、今夜からツバメとツグミを連れて中東に飛ぶんでミスティのことよろしくお願いします。ヒョエさんからの連絡で中東で暴動を先導している人間がいるらしく調査、場合によっては殱滅する事になります」
「そうか、もうすぐ父親になるんだから気をつけてな」
「サクッと終わらせてすぐに帰りますよ」
風呂上りに飲み物を取りに食堂に行くと鷹丸とミスティが熱烈なキスをしてメイドロボ達が周りを囲んでいる。ミスティが産休に入ってから鷹丸が任務で出発する時の儀式になっている。
「真人博士、飲み物ですか?」
声をかけてきたのは輪から一歩離れているユウだ。
「今日はダイエットコークにするよ、ところでユウはみんなの輪には入らないのか?」
「みなさんが新しい生命の誕生を喜んでいるので、幸せなひと時を邪魔しないようにアレをしている間は私がお仕事を引き受けているんです」
笑顔で答えてダイエットコークを氷の入ったグラスに入れて持ってくるユウは本当に表情が豊かになった、バイオスキャナーで見てみるがやはりソウルコアは発生していない。
「そうか結構、気を使っているんだな」
「いいえ、みんなの幸せを見守ることは良いことだからやっているんです……博士、私は良い子ですか? うっかり悪い事やいけない事をしていたりしませんか?」
「安心しろ、ユウはどこに出しても恥ずかしくない良い子だぞ」
そう言うとユウは満面の笑みを浮かべて瞳をキラキラさせる。
「本当ですか!? 良かったぁ、博士! もしも私がいけない事をしたら教えてくださいね。私は良い子にしていたいんです、ソウルコアが出来るまで……出来てからもずっと」
「そうだな……いつかソウルコアが発生するといいな」
「はい! 色々なアニメで信じて諦めなければ夢は絶対に叶うって言ってました! 私、頑張ります!」
笑顔で答えるユウの瞳は何の汚れも無くキラキラと輝いていた。
もう少し平和が続きます。




