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秘密結社ギャラクティカダーク 世界征服を企む組織はホワイト企業だった  作者: ソメヂメス
激動編 変革する世界 そして……来たりしモノ
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ロトゥフ大統領の苦悩

今回は元を入れた大統領の皆様

 シリア大統領カーミル ロトゥフが正式に就任してすからもう一年が経つ。アシュラフ政権を打倒し国内に於ける民族間の対立構造を解消、中東の国家を一致団結させEU諸国との和解及び協調を実現しNEU発足の中心人物となった中東の英雄である。


 首都ダマスカスではロトゥフ大統領就任一周年の記念式典の準備が進んでいる。内戦の終結、宗教及び民族間対立の和解、日本企業の誘致によるインフラ整備と雇用確保、産業の拡大によりロトゥフ大統領就任後のシリアは飛躍的な発展を遂げている。


 ロトゥフ大統領は「私は断じて英雄などでは無い! この偉業は外的要因と幸運によって成し遂げられたものだ! 私を称える式典など止めてくれ! そんな予算があるならば国民生活の向上と教育の充実に使うべきだ!」と側近や国民に訴えたが謙虚で国民のために尽くす素晴らしき指導者としてより多くの信頼を集める事となった。


 絶対に立てないでくれ! と懇願したが聞き入れてもらえず、立てられた自分の銅像を執務室の窓から見てため息を吐くロトゥフ大統領の元に専用回線で連絡が入る。


「チャド共和国のイッセン ウェディ大統領の身柄を拘束したんでそちらの収容所に移送したいのだが受け入れてもらえるかね?」


 モニターに映るのは美形の青年だただし額からは角が生えているので地球人では無い。


「すぐに準備させていただきますが、共和国の政治的混乱は大丈夫なのでしょうか?」


「その件は大丈夫だ。欧州、アメリカ、日本に留学していた人材を中心に新政権の人材は教育してある。現大統領は反政府組織に暗殺された事にしてあるから大統領派と反政府組織には共倒れしてもらう計画だ。どちらも碌でも無い組織だったからな」


「失礼いたしました、ではウェディ元大統領の受け入れ準備を整えさせていただきます」


「よろしく頼む、何か支援要請があれば遠慮せずに言ってくれ」


 通信を終えるとロトゥフ大統領は大きくため息を吐く。


「我が国は完全に独裁者の収容所にされているな、まあ見返りとして余りあるほどの支援をうけているから文句は言えんが……次は北朝鮮か? それとも中国か?」


 ロトゥフ大統領はまたもやため息を吐く、なんだか通常の呼吸がため息になっているような気さえする。元はと言えば急速に成し遂げられた中東の安定は自分の手柄では無い。


 中東の変革が成し遂げられてからおよそ一年という短いスパンでロシア連邦の崩壊、独裁国家の相次ぐ民主化、NEUの発足、大国の影響力の低下と世界情勢は大きく変わりつつある。


 数日後、独裁者収容所にウェディ元大統領が移送されたとの報告を受けると最も信頼できる側近に支持を出す。


「私だ、例の秘密施設に向かうからすぐに車を回してくれ」


「了解しました」


 日本製の高級車に乗り込み軍用車に囲まれて砂漠の道を行く、舗装されてはいるがアスファルトの道路以外は見渡す限りの砂漠であった。


 やがて砂漠の中央部、誰も訪れる事のない場所に要塞のように巨大な施設が姿を表す。元はアシュラフ政権時の化学兵器研究所だったが今では秘密結社ギャラクティカダークによってその役目を剥奪された独裁者の収容所になってある。ここに収容されている元独裁者は公には死亡したか消息不明だという事にされているのだ。


 ロトゥフは成り行きとは言えここの管理人をすることになってしまった。その役目は大統領となった今でも変わらない。いや、むしろ大統領と言う立場と肩書はこの役割には必要不可欠だろう、なぜならばここに収容されている囚人は全て元国家元首なのだから。


 所長とメインスタッフは大統領就任前のロトゥフの仲間と旧ロシア連邦内の反中央政府派共和国のレジスタンスメンバーによって構成されている。いずれも彼等の存在を知りその力を目の当たりにした……数少ない地球人だ。


「ロトゥフ大統領、ウェディ元大統領の収容は完了しています」


 報告をしたのは旧ロシア連邦ケロメア共和国の大統領の弟であるカルノフ トレチャコフだ。この施設の所長であり秘密結社ギャラクティカダークのメンバーと行動を共にしたことのある聡明な青年である。


「ウェディ元大統領には軽く挨拶だけをしておこうかな、その後はあの二人と話がしたいんだが……」


「ハハハ、分かってますよ。ロトゥフ大統領がこちらに来られる理由の八割は彼等との会談ですからね! 今日来られることは伝えてありますので思う存分愚痴を聞いてもらってください」


 私は笑って手を振りウェディ元大統領の部屋に向かう、途中で職員とすれ違うがみんなが気さくに挨拶してくれるし気安く話かけてくれる。ここにいる人間は全員がギャラクティカダークと多かれ少なかれ関わりを持った事のある人間だ。


 ここは彼が唯一落ち着いて素の自分を出せる場所だ、この施設のスタッフは捏造された英雄ロトゥフとしてでは無くギャラクティカダークに関わってしまい翻弄される地球人の同志として接してくれる。


 怯えるウェディ元大統領に軽く挨拶をすると今日ここに来た本当の目的、前シリア大統領アシュラフと前ロシア大統領ペツーアと会談……いや話をするために談話室に向かう。皮肉なことだが今のロトゥフの心の内が分かり共感してもらえる相手は二人の元独裁者だけなのである。


 談話室に入るとラフな私服を来たアシュラフとペツーアがソファーに腰を沈めてロトゥフを待っていた。この収容所は世間と隔離されており出入りする事は出来ないが施設内であれば自由に移動することができインターネットを通して映像コンテンツや書籍、様々な情報を閲覧する事が可能だが配信は不可能である。


「ロトゥフ大統領もうすぐ就任一周年だな、おめでとう」


「銅像も立派だし記念式典も盛大なものになりそうだな、生配信で楽しませてもらうよ」


 真顔で言うアシュラフとペツーアに対してロトゥフはあからさまに嫌そうな顔をする。


「お願いだからやめてくれ、自分がただの傀儡であり表向きの英雄だという事が分かっているだけに惨めな気分になる」


 ロトゥフが深いため息を吐くとペツーアが吹き出しアシュラフが大笑いする、そしてため息を吐いたロトゥフも声を上げて笑い出した。三人で大笑いした後アシュラフが笑いながらロトゥフに訊ねる。


「ロトゥフ大統領閣下、組織の傀儡として中東の英雄を演じる気分はどうだ?」


「最悪ですよ、民衆に讃えられたり国際社会から称賛の声を聞く度に溜め息が出る」


「我らのように囚人になった方が良かったのでは無いのかね。ここは外出する事と外部との接触、連絡は不可能だがそれ以外は概ね自由に過ごす事が出来るぞ」


「快適だしな」


 ペツーアとアシュラフがまたもや大笑いするがその言葉に偽りは無いだろう、二人は独裁者時代とは違い顔つきが柔和になっている。


「あなた達が羨ましいよ、囚われの身とはいえ世界の行く末を見ているだけでいいんだから……」


 憑物が取れたような二人の元独裁者に比べて現職の大統領であり中東の英雄と称えられているロトゥフの顔色は悪く、気も重そうだ。


「中東での活動開始から二年足らずでこの成果か……アメリカと中国に直接介入していないとは言えギャラクティカダークの影響力は絶大だ」


「アフリカ、アジア地域、中南米の独裁国家、紛争地域、民族対立などは政治、経済活動によるアプローチで解決しているようだな」


「その辺に関してはエージェント……というかNINJAの暗躍が少なからずあるんだが……彼等は地球人なのだが能力は人間離れしているからな。リーダーのタカマルは話をすれば普通の青年なんだが……」


 もう何度目になるのか分からない溜め息吐くロトゥフにかつての上官であるアシュラフが真顔で質問する。


「ロトゥフよ地球は既にギャラクティカダークに支配されているのではないのか?」


 ロトゥフはしばらく考えてから首を横に振り口を開く。


「いや、確かに支配しようと思えば今すぐにでも出来るだろうが彼等にその意思は無い」


「ロトゥフ大統領、では彼等の目的は何なのだ? 地球の軍隊をあっさりと蹴散らすことの出来る武力を持ち政治経済戦略も規格外、さらにオーバーテクノロジーを自在に操るその力を使い、秘密結社ギャラクティカダークは何をしようとしているのだ?」


 ロトゥフは上を向いて目を閉じしばらく考えを巡らせる。


「地球を平和で自由で豊かな星にすることかな?」


 ロトゥフの回答に対して二人の元独裁者は腕を組んで考え込んでしまった。


「理解に苦しむな……綺麗事を言っているのか?」


「シンプル過ぎる……頭がお花畑なのか?」


「イーマブルグ様に会えば分かるさ……あの方は支配者になるのに相応しい人物だ。だが、そのお方は人が人を支配することを否定している」


「矛盾しているな」


「今までの社会、人類の歴史から見れば矛盾しているだろうな」


 アシュラフとペツーアはお互いに顔を見合わせて頷き合う。


「なるほどな、ギャラクティカダーク……イーマブルグの言う地球社会の変革とは……」


「システム的なものではなく根本的なものだということか……」


「ああ、そして変革はすでに進んでいる。君たちの役割はそれを見届けることだよ」


「そしてロトゥフ大統領は彼等のコマの一つとして激務に励むというわけだ」


「かなりキツイ役割だな」


「代わってもらいたいが、そうはいくまい私は当事者として最後まで彼等の起こす変革に付き合うよ」


『幸運を祈る』


 談話室を後にしたロトゥフはカルノフに見送られて収容所から首都ダマスカスに帰る。もはや地球上で自分が一個人でいられる場所は収容所しかないかもしれないと自嘲しながら彼は中東の英雄ロトゥフ大統領としての顔に戻るのであった。

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