声
今回はメインヒロインの今日子さん。
時系列的には時系列的には87話と88話の間になります。
真人さんが弟のヒデちゃんに会いに行くって言ったので僕は東京まで付いて行く事にした、理由は何となく真人さんと一緒にいたかったから。僕も行ってもいい? って聞いた時、真人さんは普段は見せないちょっと戸惑ったような顔をしてたんだけどアッサリとOKしてくれたんだよねぇ、何かあったのかな?
真人さんの大っきいバイクに乗って東京に向かう。道中SAでご当地ソフトクリームを食べたり思考をリンクさせてお喋りしたりしてちょっとしたデート気分を味わうことが出来て楽しかったなぁ。
タンデムシートに二人乗りして真人さんの背中に密着すると大発見があった。メインコンピュータを仲介すると負担無く出来るようになっていた思考の共有化が身体が密着している状態でも同じように出来るようになっていることだ。
あっ! 思い出しちゃった……キリ子さんったら「交尾してるからじゃないのか」って何て事を言うんだよ! 真人さんのツッコミのおかげでどうにかペースを戻せたけど完全にフリーズしちゃったよ。
『今日子、もうすぐ高速を降りるぞ』
『思考の共有化で真人さんの意思が伝わってくる、さっきもお喋りしてたんだけどヤッパリ背中越しに心が通じるのっていいよね』
『リンクを切り忘れてるぞ! 恥ずかしいことを考えるんじゃない!』
『冗談、冗談! それよりもヒデちゃんとはどこで会うのさ』
『丸の内のオフィスビルに借りている銀河バイオの東京営業部だ、埋立地の新社屋が完成するまではそこを首都圏での活動拠点にしている』
なんとか誤魔化せたかな? みんな僕と真人さんが、えっと……そういう関係だって事に疑問を感じてなかったよね。僕としては今の関係が心地良いんだけど男女が仲良くなると、そうなるのが普通なのかな?
たしかに僕はエロゲームをしたりエロアニメやエロ同人誌を見たりするけど、アレってフィクションでファンタジーの世界って感じなんだよなぁ。リアルでは男女問わず友達一人もいなかったけどギャラクティカダークでは自然に話せる仲間達がいるし、子供の時からずっと好きだった真人さんとこうして一緒に……って二十六歳にもなって何を考えてるんだろうね僕は……。
「今日子、着いたぞ! 寝てるのか?」
「ごめん、ごめん考え事をしてた!」
オフィスビルの二輪車用の駐車場にバイクを停めて十四階の東京営業部に行くと見た目ランクがSSR級の受付嬢がカウンターにいたので社員証を見せる。東京営業部はシンちゃんが一般の人を雇って普通の社員教育をしているから本社とはかなり勝手が違う。
「本社研究所の阿久だ。今日は商談室を使わせてもらう予定なんだが」
「銀河システムエンジニアリング準備室の木濃 今日子です」
僕は一応死んでいる人間だから偽名を使っているんだけど正直言って我ながら適当な名前だな、やる気の無さが滲み出ているよ。
「阿久所長と木濃主任ですね第三商談室で阿久外務大臣の秘書の方がお待ちになっています」
事務的で堅苦しいな、美人だけに冷たくて機械的な印象が強いんだけどなあ。
『ねえ真人さん、もしかして受付のお姉さんアンドロイド?』
『アホか! 企業の受付嬢なんかだいたいあんなもんだ。生活のために仕事をしている人間は大抵仕事に感情を持ち込まん』
そうかなぁ、僕は会社で働いたりバイトをした事も無いから分かんないけど……ギャラクティカダークのみんなや本社工場の人達はもっと楽しそうに仕事してるんだけどなぁ。商談室に入るとヒデちゃんがお茶を飲んで待っていた。
「本日はお招きに……」
「堅苦しい挨拶は抜きだ、今日は害務大臣の秘書としてじゃなく弟として話したい。まあ、内容は政治絡みなんだが非公式のプライベートにしておいたほうがそっちも都合が良いだろう」
「そうだね兄さん、じゃあ今日子さんのことも義姉さんって呼んだほうがいいかな?」
えっ!?
「いい加減にしてくれ、最近その類の事でよく仲間にからかわれるんだ。今日子もいい迷惑だろう?」
「えっと……まあそうだよね、何かちょっと……うん……あまり、その……いいもんじゃ、えっと……ないよね」
「ほら! 今日子もどう反応していいか分からなくて困ってるだろう」
「ごめんごめん! 二人とも凄く仲が良いもんだから」
「まったく……どいつもこいつも……俺と今日子はお互いに信頼している研究パートナーだ、仲が良くて当然だろう」
真人さん僕のこと信頼してるって……それに最近の流れ……ギャラクティカダークに来るまでは基本的にコミュ症で引きこもりだった僕には刺激が強すぎるよぉ!
「今日子さん顔が赤いよ。まあそれは置いといて今日は何の用件で呼び出したのかな?」
それから真人さんはヒデちゃんにアメリカと欧州を中心としたギャラクティカダークの存在に気付いている国がウチとの関係をネタに日本政府に圧力をかけようとしているという情報を伝える。
「外相級会談になるよね……親父はもう駄目だな」
「元々駄目だろ?」
「平時なら政権の無難なコマで済むんだけど兄さん達が世界を引っ掻き回す今では使い物にならないね」
「おっ! ヒデちゃんったら辛辣だねぇ!」
よし! 調子もどった!
「今の激変して行く世界では全く役に立たないよ……親父だけじゃなく与野党問わず現職の議員の八割は無能だからね」
「まあそうだな、中には北梨みたいなクズもいるだろうしな」
「じゃあヒデちゃんやったら? 解散総選挙で立候補したらいいんじゃないかな」
「解散総選挙って衆議院解散には……」
戸惑うヒデちゃんとは対照的に真人さんは僕の考えを察してニヤりと悪そうな顔で笑う。思考の共有化に慣れたせいなのか最近はリンクして無くても阿吽の呼吸になってきているんだよね。
「お前が立候補するつもりだったら近いうちに衆議院を解散させてやるさ、今日子の得意技を使ってな!」
「今日子さんの得意技……サイバー攻撃!?」
「うん! でもそこまで大規模にする必要はないかな、 こっちでも調べられるけど社会的に抹殺したほうがいい議員を知ってる限り教えてくれると手っ取り早いんだけど」
「衆議院だと与野党合わせて百五十人ちょっとかな」
「三分の一くらいか……以外と少ないな」
「兄さんの基準だと全員アウトだからね」
とりあえずヒデちゃんがピックアップした議員は社会的に抹殺することにしたところで本日はお開きとなった。真人さんがビルの正面にバイクを回してくれるので今は正面玄関でヒデちゃんと二人だ。
「今日子さん、僕が義姉さんって呼んだほうがいいかなって言ったときかなりキョドッてたよね」
えっ!? せっかく調子戻せたのにその話蒸し返すの!? 僕が顔を引きつらせたのを見てヒデちゃんは微笑みながら話を続ける。
「兄さんって顔と頭が良いから子供の時からモテてたんだよね」
「へ、へえ〜そうなんだぁ」
「付き合った女の子も結構いたんだけど一月以上続いたことは無いんだよね。もっとも兄さんと対等に付き合える人間を見たのは今日子さんが初めてなんだけど」
「ギャラクティカダークではいつもあんな感じだよ、みんなと仲良くやってるし事実上のNo.2だからね」
「義姉さんって呼んだほうがいいかなって聞いたのは本気だよ」
もうやめてくれないかなぁ、僕の血圧絶対えらい事になってるよ。顔が真っ赤になっているのが自分でもハッキリと分かる。
「そっちの方は免疫無いんだね、でも兄さんのパートナーになれるのは今日子さんしかいないと思うんだ。たぶん兄さんが本当に心をひらいてるのは今日子さんだけだから」
「僕だけ?」
エンジン音とともに真人さんが戻って来ると軽く挨拶をかわしてヒデちゃんと別れる。丸の内のオフィス街から西の方に移動するがもうお昼過ぎだ。
『真人さんお腹空いたあ』
『秀人が帰りに食事するならってオススメの店を教えてくれたんだが、フレンチと中華のどっちがいい?」
『フォークとナイフは苦手だから中華がいいな』
『じゃあ横浜に向かうか』
ヒデちゃんが紹介してくれた店は中華街の中にある見るからに高級店だった。ランチのコースは美味しかったし僕、回る中華テーブルって初めてだったからテンション上がっちゃったよ。
「真人さん、ヒデちゃんに僕のこと信頼出来る研究パートナーって言ってたよね、あれって本心?」
「お前や秀人には嘘はつかんよ……まあ、強いて補足するなら今日子のことは……いや、何でもない」
僕は続きを聞かない事にした、今はこのままの関係でいたいから。
基地に帰ったら早速ヒデちゃんが送ってくれたリストをもとに悪い政治家退治だ。電脳人間で日本中のあらゆる端末をハッキングすればチョチョイのチョイだ。
作業が終わった頃、見える風景が赤くなった。時間切れだね、机の上に残っているピーチネクターを飲み干して息を吐く。
僕には今仲間がいる、やりがいのある仕事がある、好きな人が側にいる。これって幸せなことだよね……
「約束通りハーリーと巡り合ったね……トモ……」
えっ! だれ!? 若い男の声が頭の中に響いた。もちろん周りには誰もいない。心当たりは……ある! ギャラクティカダークのソウルコア……。
真人さんには話しておいたほうがいいよね。
次は第三者目線です。
この章は真人以外の目線になる回が増える予定です。




