夢見る機械人形
今日子が米国の秘密会議をジャックして政府高官をビビらせた後、CIAと外交筋はエージェントセネガータの提案により欧州の先進国と連携して日本政府に圧力をかける政策を取るようだ。
無能な害務大臣の息子であり、ギャラクティカダークの構成員である俺の事を外交カードとして使い、これからギャラクティカダークにより変革する世界において少しでも優位に立とうと企んでいるらしい。
「まあ想定内の反応だが真人の親父さんには苦労をかけるだろうな」
幸四郎さんが俺にそう言うが、たしかに無能なクソ親父にとっては針の筵になるだろうな。まだしばらくはアメリカも他国との情報交換や連携等の調整で忙しいだろうから秀人に一報くらいは入れといてやるか。
「まあ、血筋とコネだけで大臣になった奴ですからね。何も分からず、何も出来ずに右往左往するだけでしょう。秀人とゆかり叔母さんがどうフォローするかが見ものですね」
「真人さんってパパの事をいつも無能だとか馬鹿だとかボロカスに言ってるけど、二時間ドラマ的な確執とか何か許せない事でもあるの?」
「そういったものは全く無いな」
今日子の質問にさらりと答えると幸四郎さんが呆れた顔をしている。
「何も確執も無いのに実の父親をそこまで揶揄出来るもんなのか?」
「強いて言えば俺の爺さんのせいですね、何か事ある度に親父の事を無能だの馬鹿者だの根性無しだのと罵倒していましたから。俺と弟はいつも爺さんにお前達が頼りだ、あんなゴミみたいな男になるなと言い続けられていたんですよ」
俺の言葉に浩二が反応した。
「戦後の傑物と言われた阿久 王大だな。総理に最も近い男と言われていたけど中田 栄議員に総裁選で敗北してから政界を引退した……もしも彼が総理になっていたら国際情勢は激変したと言われている人物だ」
「詳しいな浩二」
「ここに来るまではエリート官僚だったからね」
「ぷぷぷっ……コウちゃんったら自分のことエリートって言ってる」
茶化す今日子をど無視して浩二は話を進める。
「真人や祖父である王大氏が言うほど阿久 桜馬大臣は悪い政治家じゃ無いと思うんだけどなぁ。なんと言っても家柄が良く、不正やスキャンダルとは無縁のクリーンな政治家として名が通っている」
「それだけの男なんだよ、アイツは……空気ばかり読んで何も出来ない。親父は無能だけど弟の秀人は優秀だから連絡してアドバイスでもしようかな……幸四郎さん、今日子がアメリカに流した情報くらいなら教えても構わないですよね」
「ああ構わんよ、日本政府や親父さんのコネはこれからも使う予定だからもう少し多く教えても良いだろう。どの程度の情報を与えるかは真人に任せる」
「それじゃ今日はこれから今日子と一緒にゼロのソウルコアとユウのAIを調べる予定だから、とりあえず秀人に連絡を取って出来るだけ早く会えるようにしようかな」
さっそく秀人に連絡をとると「明日までなら東京にいるから何時でもいいよ、親父とゆかり叔母さんは昨日地元に戻ったから残念だったね」と言われた。そういえば先週まで国会やってたなぁ。
とりあえず明日の朝にバイクで出たら昼前には東京に着くだろう。今は今日子と一緒にゼロのソウルコアの解析とユウのAIとコアブロックを調べている。
とは言っても拘束しているわけでは無くデータを吸い上げてメインコンピュータで解析する作業だ。吸い上げが終わったらゼロは幸四郎さんの肩、ユウはアイ達の所に戻っている。
「ゼロに関してはソウルコアが順調に安定しているな。コアブロックへの定着も良好だし定期的にチビ龍ボディーのメンテナンスを行なってコアブロックの生体部品の劣化に気を付けていれば大丈夫だろう」
「動作と飛龍零の操作関係のOSも異常無し。でもそんなに強くないとはいえゼロにもソウルコアエネルギーあるんだよね? 幸四郎さんのエネルギーも上がってるんなら飛龍零の中枢部にダメージとか無いの?」
「制御系と動力系、ゼロとの接続部の劣化が早いが対策済みだ。いくつかの部品はビューティーサニーと共有しているから予備の生産も順調に進んでいる」
俺たちは脳をメインコンピュータに直結させてさまざまな作業と情報分析を行なっている。メインコンピュータ経由でなら今日子と思考をリンクさせても全然負担を感じなくなった。データも共有出来るから作業効率は非常に良いんだが、なぜかこれが出来るのは俺と今日子の間でだけなんだよな。
「真人さん、ユウちゃんのOSとAIなんだけどね最近自己進化のスピードがすごく早いんだよ。特に情緒面、感情面の成長が著しくてビックリしてるんだ」
なるほどな、ハルが偶然ユウのコアブロックにポゼッションした影響でAIが感情を学習したことは分かっていたがOSにまで影響を与えているのか。ソウルコアは…….生まれてはいないようだな。
「ソウルコアは出来ていないがコアブロックのシステムを媒体としてOSとAIが進化しているってことじゃ無いのか?」
「間違いなくそうだよ、一応掌握は出来てるけどかなりの大容量が必要なシステムになっちゃってるんだ、コアブロックの容量が無いと成立できない。その結果文字通りAIが進化して自我を持っちゃっているよ」
「自我が目覚めるのとソウルコアが発生する事とは別物なのか……ゼロの時はほぼ同時だったんだが、まだまだ研究が必要みたいだな。今日はこの辺で切り上げて飯にしようか」
「賛成! お腹空いたぁ」
食堂に行くと鷹丸、ミスティと清志、真司、和美がいた。みんな来たばかりのようでテーブルにはまだ料理が並んでいない。とりあえずみんなが座っている席に向かうと清志に声をかけられた。
「お疲れさん、俺は専門外だがAIと魂の研究は進んでいるのか?」
「道のりは長いな、まだまだ解らない事が多い」
「だからやり甲斐があるんだよね!」
今日子の言葉に俺は頷く、研究中に思考の共有化をする事が多いせいか最近は妙に息が合うんだよな。
「そう言えば俺と今日子の間で思考の共有が出来る理由も解らないままだな……」
「交尾してるからじゃないのか? 私も鷹丸と交尾するようになってからサイコウエーブの共有が出来るようになったぞ」
ミスティが唐突にとんでもないことを口走る、鷹丸の方が顔を赤くしているが……何でみんな納得した顔で頷いているんだ!? 今日子も何か反論…….なんで耳まで真っ赤にして顔を下げてるんだ!? それじゃ本当にヤってるみたいじゃないか!
「ちょっと待て! 俺と今日子はそんな関係じゃない! 今日子も何か言えよ! そもそもお前、まだ処女じゃないか!」
「何で真人さんが知ってるんだよ! ……さては! 僕が居眠りしている間に指、突っ込んだな!」
「突っ込むか! アホッ! バイオスキャナーで体調を診た時についでに解っただけだ!」
「僕のセンシティブな情報をサラッと公開するなんて酷い!」
「そう言いながら目と口元が笑ってるぞ!」
俺と今日子の言い合いする姿をみてみんなが大笑いしているとユウとマイがカートを押して料理を運んで来た。
「お待たせしましたあ〜熱いうちに召し上がって下さいね」
「真人博士はプラス、レバニラ炒めです」
みんなお任せで頼んだみたいだな今日は中華のワンプレートでチャーハンと海老チリ、酢豚、回鍋肉がジャストサイズで乗っている。野菜たっぷりのワンタンスープも美味そうだ。
給仕しているユウの姿には少し前の無機質さが感じられない。アイ達と全く見分けが付かないくらいに表情も話し方も自然になっている。本当にソウルコアが宿っていないのか? とバイオスキャナーで見てみたがやはり発生していない。
俺達がみんなでワイワイと話しながら食事をしている間も、メイドロボ達が雑談をしながら働いていたが、やはりユウには明確な自我と感情があるようだ。
食事を終えて風呂に入り、清志と飯の時の話しをしていた。
「なんでみんなミスティのとんでもない話しに納得してたんだ?」
「そりゃあ、お前らがそういう関係だと思っているからに決まってるだろう」
「まったく、どう見たらそう見えるんだよ……」
「真人、お前が本当の意味で素の自分をさらけ出しているのは今日子が相手の時だけだって気付いているか?」
えっ!? それから俺は清志に何も言えなかった。
風呂上りに飲み物が欲しくなり食堂に立ち寄るとユウが一人で本を読んでいる。
「あっ! 真人博士どうされました?」
ユウが俺に気付いて席を立つ。
「飲み物を取りに来ただけだ。ところで何を読んでいるんだ」
覗き込むとその本は「ピノキオ」だった。
「私はソウルコアを持っていないからアイさん達と違って……ただのお人形なんですよね。真人博士、いい子にしてたら私にもソウルコアが生まれるんですよね?」
「因果関係は確立出来てないが可能性はある、ソウルコアが発生した時のためにコアブロックを入れているからな」
「私頑張ります! お仕事頑張って、いっぱい良いことをして、いつかはアイさん達と同じ……魂を持った存在になりたいです!」
微笑むユウの瞳は希望に満ちていた、本当にソウルコアが無いのかと疑いたくなるくらいに……。
次回は真人の弟、秀人目線です。




