真人、色々と自覚無し
中東での活動、ロシアでのドンパチ、そしてクラヴィーア人の救出と地球への移住と当面の大仕事は全部終わった。ルーク達政治交渉組と真司達経営組と調整役の浩二は忙しそうだ。
ヒバリ、ハル、ウリアーナは学校に戻って定期的に秘密基地に顔を出す以外は学生生活を楽しむように指示を出している、あいつらも高校二年生だからそろそろ進路を決めないといけないからな。とりあえずギャラクティカダークとしては三人とも大学に進学させて彼女達に表の顔を作るつもりでいる。
ん? ウリアーナもメンバーに入っている事が気になるのか? クラヴィーア人救出作戦が終わった後、秘密基地で行った打ち上げパーティーで本人がギャラクティカダークに入りたいと希望してきたんだ。オムスムルグ解放後は国に帰って国政に参加するものだと思っていたのだが……。
「傀儡政権のトップならダニール兄さんで十分ですよね」
身も蓋も無い言い方だが実際にその通りなんだよな。彼もレジスタンスのリーダーをしていた人物だから、そこそこ有能だと思うがウチの面子に比べるとやっぱり目劣りしてしてしまう。
「だったら操る側になりたいと思いまして、それに面白そうですし……もしかして私では能力不足ですか?」
「いやいやそんな事はない!」
「ぜひウチに来て欲しい人材だよ!」
「もちろん即採用ですよね!」
飛び出してきたのは真司、秀樹、和美のギャラクティカダークの経済担当の面々だ。後で総務? の浩二が苦笑いしている。
「ウリアーナは数カ国語話せるし度胸もあるから欧州方面の営業担当としてぜひ来て欲しい人材なんだ」
「今でも優秀だけど中枢神経の改造をしたら即戦力だよ」
「こっちのセクションにもう一人くらいは女性スタッフが欲しかったのよね」
口々に言う経済担当者の面々に幸四郎さんがストップをかける。
「まあ待て、本人の希望を今聞いただけで即決は出来ん。その件については後日会議をして決める」
クラヴィーア人の代表者との会談が終わって数日後、中東とロシアでの活動による地球文明への影響と各国の動向、そして今後の活動方針とウリアーナの採用の件についての会議が行われた。
それぞれが用意されていた席につきメイドロボ達が飲み物を用意してくれているが、やっぱり今回の並びでも俺の席次はイーマ様の次になっている。クラヴィーア代表との会談の時から気になってはいたんだが理由を聞いておかないと気持ち悪い。
「会議の前に聞いておきたいことがあるんですがいいですか?」
「なんだい真人」
イーマ様がいい笑顔で返す。我らが首領様は本当にサイコウエーブ無しでも十分に人身を掌握できるな、ロシアでペツーアと対峙して以来そのカリスマ性が日増しに上がっているのは気のせいでは無い。
「この間もそうなんですが席の位置がこの並びだと俺がギャラクティカダークのNO.2みたいなんですけど」
『実際にそうだろう』
イーマ様以外の全員の声が見事にハモった……えっ! 満場一致なのか? 俺はてっきりミリオネル王国時代からの側近であるルークか地球人スタッフを仕切っている幸四郎さんだと思っていたんだが……。
「自覚無いんだ……」
イーマ様が小さなため息と共に呟くと、浩二が呆れた顔で俺にいう。
「ギャラクティカダークが世界に変革を起こす組織として活動を開始したのはお前が来てからだろう?」
そうだっけ!? いや、俺が来る前の事は分からんから何とも言えないんだが……。
「ギャラクティカダーク号を蘇らせたのはお前だ」
「えっ? それは今日子と清志も……」
ルークが真剣に言うが俺一人の力じゃ無い確かに中枢部は生体コンピュータがメインだが今日子のプログラムと清志の機械工学がなければ無理だった。
「俺達が銀河バイオを起業することが出来たのもお前の発明がきっかけだったよな」
「科学バカだと思ったら血筋なのか政治的な駆け引きも出来るし」
「意外とコスト意識も高いんだよな」
「何のかんの言ってリーダーシップもあるのよねぇ」
文系スタッフが口々に俺をリスペクトするんだが俺ってそんなキャラだっけ!? ここに来る前は倫理感の欠如したイカれたマッドサイエンティストとして学会や社会から追放された男だぞ。
「確かに真人は社会の秩序や在り方に馴染めずに反発してドロップアウトした人間だが自分の信念や研究、自らが認めた人間に対しては誠実だからなぁ」
幸四郎さんの言葉にみんなが頷く。
「まあ、一言で言ってしまえば真人はみんなから信頼されているって事だよ。さあ、会議を始めようか」
イーマ様の言葉で会議が始まるが俺はいまいち納得がいかない。会議の内容は中東、ロシア地域の現状とこれからの政治介入と経済支援。それに伴う米中、欧州の動向とそれに対する対応。民族ごとギャラクティカダークの一員となったクラヴィーア人との連携等だ。
しばらくは文系スタッフと政治担当が忙しくなりそうだ。鷹丸たち忍者は訓練と諜報活動だが当面は大きな作戦が無いので非常時以外は交代で活動するので十分に休日が取れるようだ。
俺たち科学者チームは銀河バイオの商品開発やギャラクティカダークとしての活動に必要な研究以外は好きなように自分の研究していて良いと言われている。中東やロシアで得たデータの整理もあるしソウルコアについての研究も色々と気になる事があるので非常にありがたい。
ただ個人的には今日子はIT系での文系スタッフの支援、清志は秘密基地の設備の整備修繕があるからそれほど暇では無い。
そして不本意だが俺には日本政府とのパイプ役としてアホ親父と交渉をするという極めて不快で面倒臭い役割がある。正直言って断りたいところなんだが組織としては必要なことだから仕方がない。
ウリアーナに関しては満場一致で採用が決定した。夏休みに中枢神経の改造をして文系スタッフ、主に経済担当による研修をするらしい。
会議も終わって数日後、俺達科学者チームは個人的な仕事を片付けてから共同研究室でソウルコアエネルギーの増加による影響について、ロシアで破損したビューティーサニーのデータを元に検証していた。
「やはりレベル3以上になるとソウルコアのエネルギー量が桁違いに上がるよね」
「後で調べてみたら飛龍零も駆動系と動力系に負担がかかっていた。今後は各人のソウルコアエネルギー量を考慮して個人装備の開発調整をする必要があるな」
今日子と清志がデータとメカにかかる負担を分析をしている。たしかに物理的な影響はそんな感じだな……だが俺は今日子が出したデータを見てレベル2の人間とレベル3以上の人間の違いに着眼していた。
「レベル3を超えると単純なエネルギー量の違いだけでは無く脳波のパターン、分泌される脳内物質の質と量に明らかな違いがあるな……改造がレベル3以上になるとサイコウエーブを発現する確率が高いのはこれが原因かもしれん」
「サイコウエーブがメカやプログラムに与える影響も検討したいところだよね」
今日子が興味深い意見を言ったが視界が赤くなってきたな、そろそろ時間切れか……。
研究を切り上げて三人で夕食をとる、今日はジンギスカンで清志がこだわりを持って焼いてくれるので俺と今日子はゆっくりと食べられる。
「なあ、この間の会議での俺の席次なんだが……」
やっぱりギャラクティカダークのメンバーの中でもこの二人は気心が知れているので聞いてみる事にした。
「ああ、何か気にしてるみたいだな……まあ、いいんじゃねえか? ウチはフラットな組織だから席次って言っても実際の活動や人間関係に影響が出るわけじゃないだろ」
それもそうだな、でもこの間の文系スタッフのリスペクトと言うか誉め殺しも気になるんだよな。
「何か誉め殺されたような気がしてちょっとな……」
「お前、意外と自分が見えて無いんだな」
清志が呟くと今日子が俺に微笑む。
「真人さんは昔から優しい人だったよ」
今日子の表情に一瞬ドキッとした、コイツこんなに可愛かったっけ?
「昔からって……俺達、出逢ってまだ二年ちょっとだろ」
「あっ! そうか、もう長い付き合いのような気がしてたよ」
確かにここに来てからの時間は濃厚だからそう感じるよな……とりあえず細かいことは気にしない事にしよう。
次回は久しぶりにアイツらです。




