圧倒的な力
雪原を疾走するランドビートルはケロメア共和国とオムスムルグ共和国の国境に差し掛かる。
「今日子、敵の動きは?」
幸四郎さんが飛竜零のコクピットから今日子に聞く。飛竜零はいつでもスクランブル発進出来る状態だ、ヒバリは戦闘服でバトルラークに跨った状態で格納庫で待機、ハルはいつでもビューティーサニーにポゼッション出来るようにカプセルに入っている。
「進路20キロ先の国境付近に戦車が大小合わせて30台、ロケット砲が12基、歩兵部隊が総勢7200人。ロシア戦略ロケット軍も僕達に狙いをつけているし、航空宇宙軍も戦闘機、爆撃機がいつでも発進出来る状態だよ」
「とりあえずバトルラーク単機で国境の防衛隊に奇襲をかける。ステルスパックを装備で武装はソニックウェーブと対戦車のためインパクトブレイカーだ」
幸四郎さんが作戦の指示をすると。今日子が続けて敵戦力の詳細を報告する。
「えっとね、陸戦部隊はTー90戦車が十二台と……」
「ああ、細かい内訳はいらん。戦車、歩兵、砲台でかまわんよ」
モニターの幸四郎さんが今日子にパタパタと手を振る、確かに地球の兵器のレベルだと俺達にとってはどれも大して変わらんからな。
「要はいっぱいいるけど兵隊さん達は気絶させて、戦車は全部壊しちゃえばいいんだよね。注意しなきゃいけないのは大砲の弾やミサイルを爆発させない事だっけ?」
別のモニターでヒバリが、チョコを頬張りながらザックリと言うのを聞いていると細かい事はどうでも良くなってきた。駄菓子みたいにボリボリ食べているけど、あの箱は高級店のチョコだよな。
「そうだね、どうせ全部やっつけるんだし詳細はいいや。戦略ミサイルがこっちに狙いを付けてる件はどうする?」
「ランドビートルの対空兵装とビューティーサニーで充分だろう。サニーは飛行ユニットがメインの高軌道装備にレーザーガンを二丁拳銃で行くか、そしてランドビートルの上で有線式の長距離ライフルでミサイルを迎撃。近距離まで飛んできた場合は離陸してレーザーガンで撃ち落とす作戦でいこう」
「航空戦力はどうするんだ? 戦闘機のパイロットを殺さずに済ますなら例の弾頭を使うのが理想だが使用していいのか?」
清志の質問に幸四郎さんがニヤリと笑う。
「もちろんだ、後は飛竜零で上手くやるさ。余裕が有ればサニーにも手伝ってもらうぞ」
「了解です」
ハルが力強く答えると全員が気を引き締める。
「これよりオムスムルグ国境に集結するロシア軍を攻撃する! バトルラーク発進!」
幸四郎さんの号令でヒバリがバトルラークで発進すると最初から最高速度でロシア軍の密集地帯に向かって突撃を仕掛ける。見る見るうちにヒバリとロシア軍との距離が近づくと清志がヒバリに指示を出す。
「ヒバリ、敵との距離が100メートルになったらソニックウェーブのスイッチを入れて走り回れ! そして戦車、装甲車に接近したら変形して動力部にインパクトブレイカーで打撃をあたえるんだ! バトルラークはサイコフィールドで高い防御力を持つが出来るだけ被弾するな」
「了解! 全部避けちゃうから大丈夫!」
ヒバリから元気な返事が返って来ると幸四郎さんが清志に聞く。
「被弾すると機能に支障がでるのか?」
「戦闘員とはいえ若い娘だからな傷でも残ったら大変だ」
「相変わらずロリコンのくせに紳士だな。傷だったら俺が綺麗に治せるから心配無用だぞ」
俺達のやり取りに爆笑が起きている時、ヒバリが敵の密集地帯でソニックウェーブを作動させながらバトルラークで走り回る。兵士や軍用車の間をバイクで走り抜けるテクニックはなかなかのものだ。俺が指導しただけの事はあるな。
ヒバリの奴はああ見えて戦術眼は確かだからなミサイル車両や重火器を持つ部隊から気絶させてやがる。そして戦車に肉薄するとパワードスーツに変形する。
「インパクトブレーカー作動!」
バトルラークの拳と足の甲の部分がプロテクターに覆われる。圧縮した電流を衝撃波として叩き込む武装インパクトブレイカーだ。一撃でエンジンを破壊するが爆発しないように威力を調整してある。
戦車、装甲車にパンチとキックを喰らわし次々に破壊していく。パワードスーツで暴れた後は再びバイク形態に変形して超音波でロシア兵を失神させていき一時間足らずでロシアの陸戦部隊を沈黙させた。
ヒバリをランドビートルに帰還させた後、蜘蛛型の作業ロボを大量投入してロシア兵の拘束とロケット砲等の兵器の解体をしていると今日子が叫ぶ。
「来たよ! 中距離弾道ミサイルがとりあえず一発! その後も続々と発射準備をしているよ、今のところは核弾頭は無し!」
すでにサニーにポゼッション済みのハルが長距離用レーザーライフルを構えている。
「目標を補足! 迎撃します……撃墜!」
その後も様々なミサイルが飛んで来たが爆発が目視出来るか出来ないかの距離でことごとく撃ち落としている。
「ハルちゃん、楽勝みたいだね」
「単調ですからね、それにサニーのセンサーの精度と反応速度が上がっているような気がするんですけど……バージョンアップしました?」
「微調整はしたが基本的には変わっていないぞ、上がっているのはハルのソウルコアエネルギーの方だ」
「戦闘で経験値積んでレベルアップしたのかな?」
こいつ結構ゲーム脳なんだよな……訓練のシミュレーターも楽しんでやってたみたいだし。
「今度は戦闘機十二と爆撃機三機接近中! 幸四郎さん出る?」
「いや、とりあえず誘導ミサイルだ。バブルフロート弾の性能を実戦で試してみよう、ヒバリ上手く作動しなかった時はパイロットの救出を頼む」
「了解です、装備をレーザーガン二丁から片方をレーザーカッターに切り替えます」
敵機が近づいて来るとテンタくんが火器管制システムを素早く操作する。シーロズ族は八個の目と副脳、十本の枝分かれする触手を持つため一人で複数の作業が熟せる上にとても器用だ。
「敵機十五機、マルチロックオン完了! 誘導弾一斉発射!」
ランドビートルの上面装甲が展開し十五発のミサイルが一斉に発射される……よしっ全弾命中! 命中した弾頭は爆けると巨大な細かい泡の塊になりゆっくりと落下する。イメージ的にはゴキブリを泡で固めて動けなくする殺虫剤だ。
「全機撃墜! パイロットの生体反応異常無し!」
テンタくんが元気良く戦果を報告すると今日子が叫ぶ。
「来た来たっ! 核弾頭だよ!」
さてとペツーア大統領に引導を渡す時が来たようだな、幸四郎さんがランドビートルのハッチを開く。
「飛竜零、出すぞ! 晴美、一緒に来い!」
飛び立つ飛竜零に飛び乗りしがみ付くビューティーサニー。核ミサイルに近づくと飛竜零の口部分が開く。
「ニュークリアイレイザー作動!」
核ミサイルに核融合を阻害する粒子を浴びせる。これで核弾頭は無力化出来た、続けて幸四郎さんがハルに指示を出す。
「晴美! レーザーカッターで核弾頭をミサイルから切り離せ!」
「了解です!」
サニーがレーザーカッターを十メートル程に伸ばしてミサイルから核弾頭弾頭を切り離すと、飛竜零が鳥の足のようなマニピュレーターでキャッチする。
「少しビビらせてやるか。本機はこれよりクレムリンまで飛ぶ! 晴美は帰還して待機だ」
なるほどな無力化した核弾頭を本拠地に落とすわけか、結構たちの悪いドッキリだ。とりあえず陸戦部隊の武装解除をしていると不意にイーマ様が声をかけてきた。
「ねえ真人、ここからクレムリンまでターチで飛ぶとどれくらいかかる?」
「二時間程度ですね」
「じゃあ今から行くから潜伏している鷹丸、ミスティ、ルーク、ヒョエに連絡してくれない? 後はロシア軍に降伏勧告をする用意も頼むよ」
今回のイーマ様はやる気満々だな。
次回はペツーア大統領視点です。




