激闘天使ビューティーサニー
今回もハルちゃんのターン
今日のオムスムルグの午前4時の気温は-23度、辺りはまだ真っ暗だ。私はヒバリちゃんと一緒に朝食を取っている、今日は朝から激しい戦闘の予定なので野菜たっぷりのスープを中心とした消化吸収の良いメニューだ。ヒバリちゃんはスープは三杯目、パンは四個目と相変わらずの大食らいだけど、それほど高長身でも無くスレンダーな身体であの戦闘力を発揮するにはこれくらいのエネルギーが必要なんだろうな。
「今日は腹八分にしとかないと動きに支障がでちゃうからね、もうちょっと食べたいけど朝はこれくらいにしとこうかな」
そう言うヒバリちゃんは普通の人の三人前以上は軽く食べている。学校の女子寮でも電子ジャーに残ったご飯を全部食べてさらに購買のコロッケパンまで食べるんだから凄い食欲だ。
一度、同級生が大食いなのにスレンダーなヒバリちゃんにどうして太らないかと聞きに来たことがあり「運動していれば大丈夫だよ、良かったら毎朝の日課に付き合ってみる?」と言われ数人が付き合った結果、全員がウォーミングアップで撃沈した。風牙一族は冗談抜きでアニメや映画に出て来るようなスーパー忍者だから一般人は絶対に真似しちゃいけない……。
食事が終わるとヒバリちゃんはライダースーツというかバトルラーク専用の戦闘服に着替えをしている。バトルラークはパワードスーツに変形するので戦闘服には接続部品がいくつか付いているのだ。
「この戦闘服って身体にピッチリしているし、金具が多いから結構着るのが大変なんだよね。ヒバリちゃんのは楽そうでいいな」
私は普段着でもいいはずなんだけど作戦行動中は制服を着用するように指示されている。露出は多く無くてロボットアニメの基地オペレーターのユニフォームのようなデザインで結構センスが良いし気に入ったのであっさりと受け入れて着用している。
「でもこの服じゃたぶん戦えないと思うよ。それにヒバリちゃんの戦闘服だって凄く格好いいよ」
「えへへへ、そうかなぁ」
ヒバリちゃんの戦闘服は本当に格好いい。私の制服がアニメのオペレーター服ならヒバリちゃんのはロボットのパイロットみたいだ、実際はパワードスーツなんだけど博士達の事だからそのうち巨大ロボに合身するかもしれないなぁ。いやっ、ソウルポゼッションがあるからロボになるのはたぶん私のほうだな。
「よしっ! 用意出来た! さっき準備運動にシミュレーターやったんだけど、ハイスピードセンスを使ったら至近距離でのマシンガンの一斉掃射も七人までなら全部避けれるよ!」
中枢神経の改造レベルを3に上げたヒバリちゃんはサイコウエーブを発現した。彼女のサイコウエーブは「ハイスピードセンス」五感が加速されてフルパワー状態だと周りの動きがスーパースロー再生のように見えるらしい。その能力とヒバリちゃんの戦闘力を活かすために幸四郎さんと鷹丸さんがパワードスーツの開発を提案したところ、機動力を上げるためにバイクに変形する機能を付けた方が良いという事でバトルラークが開発されたわけだ。
バイク形態では直線の最高速度時速600km、操舵性も冗談みたいで2m間隔で置かれた三角コーン20個をスラローム走行で時速400kmのスピードで走り抜けた。もちろん慣性や遠心力などはオーバーテクノロジーでキャンセルしているけどヒバリちゃんの身体能力とハイスピードセンス無しでは無理だろう。武装は対空用のAI式誘導ミサイル六発の他は全て格闘戦用だ。ヒバリちゃんは格闘特化タイプの忍者のせいか武器の扱い、特に飛び道具の類が絶望的に下手っぴなので仕方が無い。
「じゃあハルちゃん、私バトルラークで出るから後でね!」
「うん、先に行っとくよ」
簡易基地の作戦室に行くと全員が準備を整えていた。真人さん達科学者はいつも通り私服の上に白衣だしイーマブルク様とミレ姫様は王族の衣装、ゴッグ船長は軍服でテンタさんは服着てない。そして幸四郎さんはパイロットスーツで臨戦態勢だった。あっ! 良かったぁルークさん、スカーレットさん、ヒョエさんはちゃんと制服を着ている、制服渡されたの私だけだと思ったぁ。
「晴美いよいよ実戦だが生命の危険は無いし、サニーの予備もあるから気楽にやれ」
「今回作戦行動はビューティーサニーのデータを取ることがメインだからいろんな動きを試してみてね」
幸四郎さんと今日子さんが笑顔で肩を叩き、親指を立てて激励してくれると、清志教授と真人博士がビューティーサニーの最終チェックをして私に装備や注意事項について説明してくれる。
「今回は飛行ユニットを使用した高機動装備だから武装は限られている。左手にストライクシールド、右腕にレーザーパルス砲、手持ち武器としてレーザーガンと超音波発生装置であるソニックウエーブガンを腰と背中に装備しているから状況に応じて使うといい。機会があればアレを試そう」
アレってオッパイ兵器だよね。まあ必殺技っぽいしビジュアル的にも悪く無いから機会があればね。
「サニーの中枢部は生態部品が多い、万一気分が悪くなったらすぐに報告しろ。生体とソウルコアの状態は常にチェックしているから異常があればすぐに対処する」
「じゃあ行って来まぁぁす!」
作戦室の奥にはカプセルが寝かせた状態で設置してあり、中はバケットシートになっている。私はカプセルに向かって走りジャンプしてバケットシートに納まる。
「サニィィィ! ポゼッション!」
別に走ってジャンプしたり叫んだりする必要は無かったんだけどこういうのは気合いの問題だ。カプセルのハッチが閉まると閃光と共に私の意識が途切れる。
目を開くと円筒の中で立っていた、もちろん私の姿は瀬戸内 晴美からビューティーサニーに変わっている。円筒内に光が灯ると今日子さんの声が頭の中に直接響く。
「ハルちゃん……じゃ無かった、サニー無事にポゼッション出来た?」
「はい、システムオールグリーン! すぐに出られます」
「じゃあ射出するよぉ〜! カウントダウンスタート、3、2、1、GO!」
えっ! 0は無いの!? ちょっと焦ったが気を持ち直すと、足元の床が爆発したように急上昇し空高く弾きだされた。背中に装備された四枚のウイングを展開して背中と両足にあるスラスターを作動させる。推進力を得て空中で三回転し、漫研のミツコちゃんに私が考えた創作ヒロインとして一緒に考えてもらった決めポーズを取る。
「激闘天使! ビューティーサニー!」
よしっ! 決まった!
「ハルちゃん、ノリノリだねー! じゃあ派手に一丁いってみようか!」
スラスター全開でケロメア共和国のロシア空軍基地に向かって一直線に飛んでいく、途中でヒバリちゃんを追い抜いたけど、こちらに気付いたみたいで手を振っていた。
空がだんだんと明るくなりお日様が顔を出した頃基地が見えて来た。
私はサニーのセンサーと今日子さんが送って来るデータを分析して攻撃対象を決める。右手にレーザーガンを持ち、まずは管制塔のアンテナとレダー、通信施設を攻撃する。
私の接近に気付いたようでサイレンが鳴り響き兵士達がライフルを持って建物から出て来るがとりあえず無視して、上空からレーダーや通信施設をレーザーガンで狙い撃つと……うん、すごい威力だわ。一発で貫通して爆発炎上してる。
数十人の兵士がライフルで撃って来るけど、空中でひらりひらりと弾丸を躱して左腕に装備されたストライクシールドを兵士に放つ。ストライクシールドはバックラーのような小型の盾でスラスターが付いていて武器として使うことが出来る。発射すると私の意思で操作する事が出来、コントロールして前面の高周波カッターで兵士の武器を破壊していく。本当はロケットパンチにするつもりだったらしいけど、構造的に問題がある為遠隔操作出来る盾にしたって言ってた。
通信関係を破壊した後は無人の車両や砲台を片っ端から打ちまくる。空を飛んでビームを放つ美少女の姿にロシア軍は大混乱だ。レーザーガンをソニックウエーブガンに持ち替えて管制塔に向かう、ソニックウエーブガンは人間が失神する周波数に調整された超音波を拡声器のように発射する装置だ。
管制塔に超音波を放ちセンサーで確認すると全員が失神していた、引き続き司令室のあるビルに再び超音波を喰らわせて指揮系統を機能不能にすると、私に向かって来ていた兵士たちが一斉に後ろを振り返ると一台のバイクが信じられないスピードで爆走して来る。
「来たよぉぉぉぉ、ハルちゃん! バトルラークアーマードチェンジ! スタンモード発動!」
バトルラークはウイリー走行をすると一瞬でパワードスーツに変形してロシア軍兵士に突きと蹴りを寸止めで放つ。スタンモード発動中のバトルラークは手足に電流が発生していて寸止め状態で敵を失神させる事が出来る。
私が空から地上でヒバリちゃんが大暴れして基地は大混乱だ。やがて基地の中央に到着するとバトルラークが肩のパーツを展開してスピーカーのような物を露出させる。
「ハイパー! ソニックウエーブ!」
全方位に超音波が放たれる、センサーで見てみると……基地の人間全員を失神させたみたいだな……通信設備も破壊出来たし一応ロシア軍制圧完了、と一息つくと今日子さんから通信が入る。
「ハルちゃん、割とあっさり制圧できたね。一人の死人も出して無いんだから上出来、上出来。ビューティーサニーもバトルラークも当初の予定以上の性能を発揮したみたいだし、帰って来たら調べさせてもらうけどその前に……その基地航空戦力と武器弾薬がいっぱいあるみたいだからやっちおうよ」
「まさか、みんな壊すんですか!?」
「うん! アレのデータも取りたいしね、航空戦力は格納庫とその周辺に固まっているから掃除感覚でやるといいよ。武器弾薬と生活物資の倉庫はバトルラークのミサイル試し撃ちって事で」
二人で兵士たちを司令部の建物に押し込むとまずヒバリちゃんが武器弾薬庫、燃料庫、生活物資の倉庫に向かい誘導ミサイルを発射する。
またド派手に爆発したなぁ。これでも十分にロシア軍に痛手を与えたと思うんだけど……滅茶苦茶燃えているし。
「次はハルちゃんの番だね!」
明るく言うヒバリちゃんの声で私もヤル気になった。よぉぉぉし! 一丁やってやるかぁ! 軍用機、ヘリコプター、戦車の格納庫の前で仁王立ちになり少し腰を落としてスポーツブラ型の胸部装甲を両手で掴む。
「ブラストォォォ!」
気合いを込めたかけ声と共に胸部装甲を展開すると、そこにあるのは乳房では無く二つの発射口で私の気合いと共に光が収束していく。
「バスタァァァァッ!!」
発射口から凄まじい勢いのビームが放たれる、清志教授の話しだと光線では無く粒子砲らしい。光の奔流は全てを飲み込み、目の前にあった格納庫は中の兵器ごと綺麗に消滅して地面は超高温の為ガラスみたいになっている。オッパイ兵器すげぇぇぇぇぇ!
「ブラストバスター」というネーミングに関して今日子さんに「厨二病っぽいですね」と言ったら「ブラとバストのダジャレでもあるから、どっちかと言うとオッサンかな」と言ってた。厨二のオッサンだ……。
あれ!? 身体が動き辛い!? どうしたんだろうと思っていると真人博士から通信が入る。
「ハル、ブラストバスターを撃った直後にビューティーサニーが機能不全を起こしている。すぐに調べたいからバトルラークに乗せてもらって速やかに基地に帰還してくれ」
パワードスーツからバイクに変形したバトルラークのタンデムシートに乗って基地に帰還するが、サニーじゃなくて生身で乗っていたら絶対に首がおかしくなってたと思う。




