ダニール=アダモヴィッチ驚愕する
書いたのが二、三年前なので世界情勢が若干変わっています。
先発組と合流した俺達は簡易基地を設置して作戦準備を進める。相手側が無警戒だった中東とは違い厳戒体制を取られている為、迷彩と防御システムの用意が必要なので少し時間がかかってしまった為にもう夕方だ。
とりあえず夕食を取りながらオムスムルグを始めとする各共和国の反ロシア派のリーダー達との顔合わせをしている。彼らのまとめ役はウリアーナの兄であるダニールだ。食事は立食パーティー形式で和気藹々といきたい所だがダニール達五人は緊張していて表情も動きも硬い。
「久し振りねダニール兄さん、祖国解放のために近隣国の同志のみなさんと頑張っているそうね」
「ウリアーナ! どうしてここに? 日本にいるんじゃ……」
「兄さん、ギャラクティカダークのみなさんに今回の作戦の詳細は聞いていないの?」
「いや、オムス塩湖の宇宙船を他所に転移させるとしか……」
「あっ! そうか、クラーヴイアの船とアクアディープの伝承はアダモヴィッチ家の長女にしか伝えられて無いんだった」
食事が手に付かないダニールとは対照的にローストチキンを頬張りながら話すウリアーナ。オムスムルグが独立したあかつきには国家元首となる可能性が高いので勧誘はしていないがギャラクティカダークの準メンバーと言っても良いくらいウチに馴染んでいる。
「アクアディープはアダモヴィッチ家の長女以外が持つと呪われるでしょう、あれはDNAレベルで施されたセキュリティーだったの」
「えっ!? いや、唐突に言われても何が何だか……」
ウリアーナは少々コミュニケーション能力に問題があるから言動が唐突なんだよな。順を追って説明したほうが良いが、どの辺までなら話しても良いか考えていると幸四郎さんが近づいてきた。ここは責任者に任せるのが得策だろう。
「初めましてダニール=アダモヴィッチ、俺はギャラクティカダークで主に作戦面での指揮を取っている田島 幸四郎というものだ。ウチはフランクな組織なので幸四郎と呼んでくれ」
「分かりました、交渉面での責任者であるルークさんには色々聞いていたのですが我々の常識とはかけ離れ過ぎて正直な話、全く思考がついていけません」
まあ、ダニールに接触した先発隊のメンバーを考えると仕方ないだろうな。ルークとスカーレットは異星人だから地球人とは少し思考回路が違う、政治的なことや交渉は得意なようだが個人的にコミュニケーションを取る場合は俺達ギャラクティカダークのメンバーは気にならないが普通の地球人が相手だとズレが生じるようだ。
ヒョエさんは浮世離れしているし、鷹丸とミスティは戦闘民族で交渉や説明することには向いていない。俺達三人も似たようなもんだから文系スタッフのいない今、まともに説明出来そうなのは幸四郎さんくらいだからなぁ。
「まず我々の主な目的は地球に不時着したクラーヴイア人の救出である。惑星クラーヴイアは面積の殆どが海でありその星の知的生命体の過半数は深海でなければ生きることができない。約400年前、宇宙船の事故により内陸部のオムスムルグ王国に不時着したクラーヴイアの船はヴェロニカ姫の図らいによりオムス塩湖の湖底に移動した。今のクラーヴイア人は海水に近い成分の塩湖に潜伏することで何とか生命を維持できている状態だ」
「それを日本の海底に転移する作戦だと聞いているんですが、ウリアーナとアクアディープにどのような関係があるのでしょうか?」
幸四郎さんも文官じゃなくて武官なんだが士官としての教育を受けていたしギャラクティカダークで俺達みたいな特殊な人間の指揮をとっているので交渉事や説明は得意だ。
「転移させるためには宇宙船を起動させる必要が有るんだが宇宙船の起動とクラーヴイア人を覚醒させるための鍵がアクアディープであり、それを使用する事が出来るのはヴェロニカ姫の直系の女児であるウリアーナただ一人だと言うわけだ」
「事情はは理解出来ました、ありがとうございます」
ダニールは幸四郎さんの話で理解する事が出来たようだ、そしてウリアーナの方を見て彼女に話しかける。
「しかしウリアーナ、今からオムスムルグとその周辺はロシア軍との戦闘で危険な状態になる。出来ればお前は安全な日本か、父さんと母さんのいるノルウェーにいて欲しいんだが……んぐっ!?」
ウリアーナが心配そうに言うダニールの口にスモークサーモンのサンドウィッチを押し込む。
「何言ってるのよダニール兄さん! ここが一番安全なのよ」
目を白黒さているダニールにウリアーナがズバッと言って、手を引いて料理が置いてあるテーブルに連れて行くと皿に料理を溢れんばかりに積み上げているヒバリとハルがいた。二人はウリアーナとダニールに気付くと頬張っている料理を飲み込んで挨拶をする。ヒバリ! どうでもいいが皿を置け! 口の周りを拭け!
「初めましてウリアーナの友達でギャラクティカダークの構成員の風間 ヒバリです。お兄さんのダニールさんだよね! やっぱり似てるからすぐに分かったよ!」
「ヒバリちゃん! 初対面の人に失礼だよ、せめてお皿を置いて口の周りのソースを拭かないと……あっ! ごめんなさい! 私はウリアーナさんの友人で同じくギャラクティカダークの構成員の瀬戸内 晴美と申します」
放心状態のダニールにウリアーナが日本に来て梅津女子学園に入学して二人と出会い、ギャラクティカダークと関わりを持つようになった経緯を説明する。ダニールと反ロシア派のみんなは理解が追いつかないみたいで面白い表情を浮かべている。最近、同じような反応を見た事があると思っていたら中東で俺達と行動を共にしていたロトゥフ氏だ。
「兄さん、学園の寮に私を拉致する為にロシアの工作員が潜入してたんだけどヒバリちゃんがあっと言う間にやっつけたの。その後もロシアのスパイがウロチョロしていたけど、私とクラーヴイアとの関係を知ったギャラクティカダークのみなさんが守ってくれたわ。だから私にとっては彼らの側にいる事が1番安全なの」
「いや……ロシアの工作員をあっと言う間にやっつけたって……その娘が?」
ダニールがハルに口元をナプキンで拭かれているヒバリを指差して恐る恐るウリアーナに聞いている。まあ、今の姿を見ていると素手で陸戦部隊を全滅させる人間兵器には見えんからなぁ。
「そうよ、夏休みには中東にいってムスリム神国の兵士数十人を素手で無力化したわ。テロ組織の幹部も捕まえて大活躍だったのよ」
ダニールのやつ完全に思考停止しているな。自分の挨拶が済んだと思ってカルボナーラを焼きそばみたいに啜っているヒバリの姿を茫然と眺めている。
「ダニールさんごめんなさい、ヒバリちゃんは忍者の隠れ里と秘密結社以外の世界をほとんど知らないんです。だから常識や一般的な知識に欠けているところがあるんで気を悪くしないで下さい」
ハルが頭を下げて謝罪するとダニールは少し正気を取り戻したようで笑顔を見せた。この娘は三人娘のなかで一般人の感覚を持っている唯一の人間だからな。
「ありがとう、別に気を悪くしたわけじゃないんだ。ただあまりにも自分の理解の外の事ばかりが続くもんだから呆然としていたんだ……ってウリアーナこの娘もギャラクティカダークの一員だったよな」
「そうよ、ハルさんはサイコウ……俗に言う超能力者でどんな危険も予知して回避する事が出来るのよ」
ダニール以下五人の反ロシア派は完全にフリーズ状態だ。大国相手に独立戦争を起こそうって人間のメンタルがこんなに弱くて本当に大丈夫なのか?
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