オムスムルグへ
このエピソードはロシアのウクライナ進行前に書いた物なので現在の世界情勢とはかなり異なります。あくまでもフィクションとしてお読み下さい。
俺達はクラーヴイア人救出作戦の為にギャラクティカダークの輸送機に乗りロシア連邦オムスムルグ共和国に向かっている。
今回はルーク、スカーレット、ヒョエさん、鷹丸、ミスティの五人が二週間前に先行してオムスムルグの反ロシア派と合流して情報収集とロシアへの政治的、軍事的な牽制をしている。ウチのエージェントと政治、交渉担当は本当に頼りになる。
中東に行った時には自動操縦だったが今回はゴッグ船長とテンタくんによるマニュアル操縦だ。自動操縦でも良かったんだが宇宙船乗りである二人はやはり操縦席が落ち着くらしいので任せる事にした。心なしか自動操縦よりも乗り心地が良いような気がするのは二人の技量のなせる事なんだろうな。
今回の留守番はツバメ、ツグミ姉妹といつもの文系スタッフ、メイドロボはアイとマイの姉妹を残してある。拠点防衛はあの二人と防御システムで十分だし、銀河バイオの運営の為に経営者と営業マンは残さないといけないからな。最近は秀樹が積極的にM&Aを行っていて会社の規模が大きくなり「銀河バイオグループ」と呼んでいいレベルに成長している。
アイとマイは生前両親によって密室に軟禁されていたせいか秘密基地の外に出る事を怖がるのでまだ埋立地からは出していない。だんだんと明るくなって来ているし、人と接する事にも慣れてきたのでもう少ししたら普段着を着せて外出させても良いかもしれない。俺達に同行しているメイドロボは人見知りしないミーとマインそしてユウだ。
ユウを連れてきた理由はハルが偶然「ソウルポゼッション」で憑依してからユウの様子が劇的に変化したからだ。無機質だった口調と仕草が自然になり、ソウルコアを持つアイ達ほどでは無いがより人間に近くなっている。今日子が特に興味を示して研究している事であり、どうやらハルが憑依中パニクったり右往左往していた事でユウのAIが感情を学習した結果らしい。
ハルと言えば出発前にビューティーサニーの起動実験と実戦テストをしたが予想以上の戦闘能力を見せた。ハルが元々FSPタイプのゲームが得意だった事もあり、サニーの性能を100%引き出せた事が大きいようだ。今回の地上戦闘はサニーとヒバリが中心で鷹丸とミスティは隠密行動に集中してもらい、航空戦力が出て来た時は飛竜零の出番だ。
「真人博士、真人博士、ちょっと聞きたい事があるんですけど」
ハルがこっそりと話しかけて来た。この娘はもうすっかり完全にウチに馴染んでいるな、今ではオペレーター兼、俺たちの助手兼、ビューティーサニーの操縦者とかなり多忙な立場になっている。
「どうしたハル、質問なら何でも聞くぞ」
「ビューティーサニーのデザインについてなんですけど、露出はあるけどちょうどカッコイイ感じで気に入ってるんですが、あれって幸四郎さんと真人博士のチェックが入ってるんですよね?」
ビューティサニーの容姿は小柄で童顔のハルとは対照的に身長173cmでスタイルの良い大人びた顔立ちをした銀髪、赤眼の美女にしてある。露出は多めで胸部、腰回り、肩、肘から手の甲、膝から下をプロテクターが覆っておりあとは素肌だ。露出度は女子陸上競技のアスリート程度でデザインの良さもあって卑猥さは感じない。
「ああ、ちゃんと厳しくチェックしたから問題ないだろう」
「厳しくチェックしたって言いましたよね。という事は初期デザインは凄かったんじゃないですか? 一応どんな感じだったのか純粋な興味で聞いておきたいんですけど……」
「ああ、一応タブレットに保存しているから見てみるか?」
タブレットの画像を見てハルは安堵の表情を見せた。まあ最初のデザイン画は半ケツ、ハミ乳のビキニアーマーだったからなぁ……露出部分についてはミリ単位でのせめぎ合いの結果、なんとか今の露出度に落ち着いたんだ。
「流石に初期デザインはちょっと無理ですから安心しました。でもおっぱい兵器は譲れなかったんですね……まあ、アレだったらまだ許容範囲かな? ちょっとカッコいいし」
「アレについては実用的だしビジュアル的にも悪くないから幸四郎さんとの審議の結果OKを出した。他の武装も変なものはボツにして俺を入れて考えたから大丈夫だろ?」
「はい! カッコいいしリアルFPSみたいな感覚で操作できるので大丈夫です。ロシアでの戦闘は私の操るビューティーサニーとヒバリちゃんがメインになるんですよね」
「火力と防御力、安全性を考慮するとそうなるな。鷹丸とミスティは諜報活動と市街地での対人戦、幸四郎さんとゼロは航空戦力、後は無人機でのサポートをするから大丈夫だ……ところで今回の目的は分かっているだろうな」
「クラヴィーアの宇宙船を時空フィールドでコーティングして日本のS湾海底に空間転移させる事ですよね。ウリアーナが鍵であるアクアディープで宇宙船の軌道とクラヴィーアの人達を覚醒させてから作業を行う事が最優先で戦闘は出来るだけ避ける」
その時、幸四郎さんと今日子が話しに入ってきた。
「それは無理そうになった。先行したルークと鷹丸達の報告によるとオムスムルグ国内各都市には多数のロシア兵が常駐していて周辺も多くの戦力が包囲しているそうだ」
「海軍以外の全兵力の四割強が投入されているからロシアも大人気無いよねぇ。戦車、装甲車、特殊部隊、戦闘機、爆撃機、ヘリコプターが大盤振る舞いで配備されている上に各種ミサイルまでオムスムルグ各地に標準を合わせているからね。戦争でもするつもりなんじゃ無いの?」
中東での活動とウリアーナと銀河バイオを狙うスパイをことごとく返り討ちにした事によりロシアは俺達を国家規模の力を持つ秘密結社として警戒している。まあビビらせる為に今日子が断片的に情報を流していた事もあるんだがな。ロシア政府と軍や諜報機関は冗談抜きで戦争をするつもりでいると思っておいたほうがいいだろう。
「ルーク達からの提案なんだが場合によってはオムスムルグを始めとするロシア連邦の反ロシア派共和国を独立させるのも有りだとも思うんだがどうだろうか?」
「その話、ダニール兄さんが絡んでますよね?」
ウリアーナが真剣な表情で幸四郎さんに聞く。
「その通りだ、ダニール=アタモヴィチはオムスムルグだけで無く周辺国の反ロシア派をまとめ上げて独立運動をしている。我々の活動をキッカケに独立戦争をするつもりのようだ」
「兄さんは各共和国に対するロシアの政策に対しずっと反発していました。ギャラクティカダークの活動を好機と見たのでしょうが……」
ウリアーナの心配に対して今日子があっけらかんと言い放つ。
「いいんじゃない、ロシアに一泡吹かせちゃおうよ。あいつらときたら、人ん家にスパイ寄越したり、女子校の寮を襲撃したりするデリカシーのかけらも無い奴等なんだから一回ケチョンケチョンにやっつけてやったらいいんだよ」
それもそうだな、それに中東の一件以来は国家に喧嘩を売るのも楽しくなって来た。一緒にするのもなんだが暴走族を締めていたころの感覚が甦って来て血が騒ぐしな。そう考えているとゴッグ船長の声で機内にアナウンスが入る。
「間も無く本機は反ロシア派との合流地点に到着する、各自準備をするように。繰り返す、まも無く本機は反ロシア派との……」
いよいよ作戦開始だな、これからどうなるのか楽しみだ。
次回はルーク達先行組のターンです。




