阿久 真人は強かった
もう年が開けて二ヶ月以上が経つな。年末にハルの改造手術とヒバリのレベル3到達に伴うサイコウエーブの習得によって開発を始めた戦闘アンドロイドとヒバリの新装備も完成の目処が立ちつつある。
ゴッグ船長とテンタくんによる資源採取も先日最終便が到着して清志が時空フィールド発生装置と空間転移装置のブースターの製造に取り掛かっている。ヒバリ達が春休みに入り次第オムスムルグ共和国に飛んでクラーヴイア人の救出作戦を決行する予定だ。
今日子と一緒に共同研究室で戦闘アンドロイドの調整をしていると工業プラントから清志が戻って来た。
「クラーヴイア人救出作戦用の機材の製造は生産ラインに乗せたから後は数が揃うのを待つだけだ。それよりも早くこいつを完成させようぜ、テストをすると言うよりも動いているところを早く見たい」
「キヨピー! コイツって言うのはやめようよ! この娘の名前はビューティーサニーだってこの間決めたじゃないか!」
「すまん、すまんビューティーサニーとヒバリ専用の戦闘バイクが共闘する所を見るのが待ち遠しくてなあ、美少女戦闘アンドロイドと格闘クノイチが操る戦闘バイク………あぁぁぁぁぁぁぁ! オタクのっ否! 人類の夢と希望と言っても良いだろう!」
戦闘アンドロイドの名はビューティーサニーに決定した……って、ほとんど晴美の名前を直訳しただけだよな。ビューティーサニーといい戦闘バイクといい、清志と今日子のテンションはMAXというか完全にメーターを振り切っている。
「早く春休みにならないかなぁ。あの二人がロシア兵を千切っては投げ千切っては投げするところを早く見たいよ」
「そうだな、変身ヒロイン風のサニーとパワードスーツに変形するバイク、そして万能戦闘機飛竜零……」
「後は巨大ロボだけだよね!」
「これだけそろっているんだから合身合体も有りだな!」
コイツらは……暴走した挙句にハルにセクハラ発言をして研究室を立ち入り禁止にされた事を忘れているな。だが巨大ロボでテンションが上がるのは分からんでも無い。
「必殺技はエネルギー波を身に纏って、もしくは変形してからの体当たり攻撃かな」
俺が何気無く呟いた一言に今日子と清志が激しく反応する。
「何を言ってんだよ真人さん! 巨大ロボの必殺技といえば剣じゃないか! どっから出したんだ!? って言うくらいの巨大な剣で声高らかに必殺技を叫びながらぶった斬るのが王道だよね!」
「剣だと!? 多数派に媚びおって! 男だったらドリルだ! 全てを貫くドリルが必殺技だ!」
俺達のくだらない議論は全員の視界が赤くなるまで続けられた。なぜだろう最近はこういった無駄な時間を楽しく感じる、俺が変わったのだろか? ギャラクティカダークの仲間の影響だろうか? 理論的に考えれば考えるほど分からなくなってきた。
翌日、ヒバリから中型二輪免許を取得したと連絡があった。梅津女子学園の校則では禁止されているが、銀河バイオが主催するボランティア活動に必要だという名目で特別に許可を得てある。ちなみにヒバリ、ハル、ウリアーナの三人は銀河バイオグループが運営する福祉団体のボランティアスタッフとして活動している事になっている。
次の日曜日、ヒバリに実践的なバイクの乗り方を伝授した、流石に忍者だけあって身体能力が高く飲み込みが早い。これならどんな場所でも走れるし乗りながらの戦闘も問題ないだろう、ギャラリーの声が若干気になるが……。
「バイクが得意だとは聞いていたがスタントマン並みだとは……」
「人間兵器のヒバリちゃんが手玉に取られてる……」
「俺もバイク上での戦闘だったら勝てないかも……」
「忍者のタカちゃんまでそう言う?
確かに真人さんの学生時代の二つ名だった死神博士で検索したら有名ヒーローの悪役の次に伝説のヤンキーで出て来たよ」
「俺はヤンキーじゃ無い!! 確かに馬鹿どもを成敗していたが成績優秀だったし……そもそも暴走族退治を始めたのは友人とその彼女を助けたのが最初だ! その時の頭が東北一帯を締めていた奴だったんで何が何だか知らないうちに暴走族の抗争に巻き込まれただけだ!!」
「俺は首都圏の出身だが死神博士の名前は聞いたことがある……って言うか俺達の年代で知らない奴はいないぞ! 特攻服の変わりに白衣を身に纏い、日本中の暴走族や不良集団を高笑いしながら血祭りにあげた伝説の男! ヤンキーかどうかは関係なく全国の不良共を恐怖のドン底に叩き落としたことは事実だろ?」
俺の反論を同年代の浩二がぶち壊してくれた。確かに事実だ、やはり首都圏の埋立地で1対77で完全勝利したのが衝撃だったのかな? あれは相手がバカばっかりだったから、ちょっと頭を使ったら簡単に成敗出来たぞ。そう思ってたら幸四郎さんが思いがけない一言を言う。
「真人、友人を助ける為ってお前……友達いたのか!?」
その場の空気が一瞬凍りついたと思ったら次の瞬間、大爆笑が巻き起こった。ちょっと待て! みんな俺を何だと思っているんだ!? 学生時代は結構普通だったと思うし、友達も少なくは無かったぞ!
「いやぁ真人って人で無しで倫理間が欠如してるから、友達を助ける為って冗談にしかきこえねぇ」
清志が失礼な事を言いながら腹を抱えて笑っている、確かに俺は社会の常識や慣例を否定して反発していたし、研究や真実の追求の為に宗教的社会的倫理を無視してきたが仲間意識はあるぞ。何か言い返そうと思ったら浩二が追い討ちをかける。
「死神博士の伝説といえばうちの地元では臨海地区で七十七人の暴走族を一人で全員海に叩き落としたっていうのが有名だけど本当なのか?」
「あれは倒壊寸前で立ち入り禁止になっていた橋梁のフェンスを事前に開けておいたんだよ、バイクが二十台ほどで倒壊することは調べていたからな。奴らを挑発して固まるように誘導し、橋を渡ったら追ってきたバカ共は海にドボンだ」
「それってお前が高校生の時の話だろう……えげつないな。潰した暴走族は全員舎弟にしたって聞いたんだがそれも本当なのか?」
浩二が続けて聞いてくるが残念ながら事実だから答えない訳にはいかないな。変な誤解をこれ以上拡張しないためにもな。
「馬鹿どもに説教して勉強を教えただけだ。全員更生して大学に行ったやつも少なくないな、自衛隊の高官や警察でそこそこの地位に上がっているやつもいるぞ」
「それは本当みたいだね、テレビで有名になった暴走族の元ヘッドの高校教師も真人さんが締めて舎弟にしたんだよね」
「モノアイドラゴンの伊達だな、俺が最初に締めた馬鹿で……あの馬鹿が死神博士って仇名をつけやがったんだ!」
「よっぽど怖かったんだねぇ」
馬鹿な話をしていると息を切らしていたヒバリが落ち着いたようで話に入ってくる。
「真人さん、バイク乗ってたら無敵なんだから真人さん用の戦闘バイクも作った方がいいんじゃないかな」
俺は科学者としてギャラクティカダークに参加しているからなあと思っていると幸四郎さんが真剣な顔で言う。
「そうだな用意しておいたほうが良いだろう、これから地球に干渉していくならお前達にも危険が及ぶかも知れん。真人は戦闘バイクで良いとして清志と今日子、他のスタッフにも護身用に何か武器を持たせるべきだな。みんな得意な武具や護身に役立ちそうな特技があれば申告するように」
確かに各自護身用の武器を持った方がいいな。各国のスパイをことごとく撃退したこともあって銀河バイオやウリアーナにちょっかいを出す連中はいなくなったが、俺たちが国家規模の組織にマークされている事には変わらない。戦闘力の無い構成員のセキュリティーも考えるべきだろう。
ハルの戦闘バイクの武装とビューティサニーの完成は間に合わなかったがクラヴィーア人救出のための準備は間も無く完了する。梅津女子学園が春休みに入り次第作戦決行だ、その頃にはバイクとサニーも完成して実践投入出来るはずだ。
清志と今日子が俺用の戦闘バイクの構想を熱く議論してしるが、絶対にパワードスーツに変形するんだろうな……そっちは急がなくてもいいから!
超電磁スピンは変形体当たりとドリルのどっちになるんだろう?
真人の学生時代については第三部あたりで触れる予定です。
いよいよ次回よりオムスムルグ編。




