なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!
すいません今回はまたハルちゃんのターンです
明日からは待ちに待った冬休み。梅津女子学園はクリスチャンも多いので二十日には終業する。冬季講習を受ける生徒も少なからずいるけどそれ以外は家族と海外で過ごす人がほとんどだ、やっぱり名門女子校だけあって生活水準の高い家庭の娘が多い。
私もお正月は家族のいるオーストラリアで過ごす予定だけど日本を発つ二十三日まではギャラクティカダークの秘密基地に滞在する予定だ。終業式が終わるとギャラクティカダークの敏腕営業マンである秀樹さんが車で迎えにきてくれていた。
「秀樹さん迎えに来ていただいてありがとうございます。これからお世話になりますのでよろしくお願いします」
「堅苦しい挨拶は抜きだ、ウチはフランクな組織だからタメ口でも良いくらいだよ」
「そうそう気を使う必要なんか全然ないよ。秀樹さんとりあえずファミレス寄ってよ、お腹空いた」
「一時間くらい我慢しろ! 今日の昼飯はアイ達がビュフェスタイルを用意してるから楽しみにしておけ。食欲忍者の胃に合わせて作るらしいから、たっぷりと食えるぞ」
「やったぁ! お腹減らしとくよ」
ヒバリちゃんはブレないなあ……って一時間!? 東京から秘密基地のあるS県まで新幹線でも無理だしここから車でいくなら高速道路が空いていても三時間くらいはかかると思うんだけど、と考えていると車は東京湾の埋め立て地にやって来た。古い工場を銀河建設の重機が解体している横を走り抜けると銀河バイオ新工場建設事務所と書かれたプレハブ小屋にたどり着いた。
秀樹さんはプレハブ小屋に入ると掃除道具入れのようなロッカーに手をかざした。ロッカーは音もなく床に吸い込まれていきその後には壁ではなくエレベーターが現れる。
エレベーターで地下に降りると巨大なガラスチューブのような物があり中には新幹線の先頭車両をデフォルメしたような……プラレールみたいな感じの物がある。
「使って無い埋立地を買い取ったんだよ。銀河バイオグループの工場と東京での拠点を作る為にね。そしたら清志さんがこれから東京に行く機会が増えるなら移動手段を何とかしようって言い出して、出来上がったのがコレなんだ」
「真空チューブとリニアモーターの組み合わせかな?」
「さすがだね、その通りだよこの場所と秘密基地を片道十分で移動出来るんだ」
「Gや慣性に関しては清志教授なら楽々クリアしてるよね」
「技術的にはもっと速く出来るみたいだけどコストと安全性を考えるとこのくらいがベストらしいよ」
私と秀樹さんが話しをしているとヒバリちゃんが不満そうな顔をしている。まさか秀樹さんに気があるの!?
「早く行こうよぉぉぉ! お腹空いたぁぁぁ!」
そっちか! まあそのほうがヒバリちゃんらしくていいや。私達はプラレール? に乗り込み秘密基地に移動する。中はビジネスクラス並みのシートが十八席で完全自動運転、短時間の移動とはいえ相変わらずギャラクティカダークの乗り物は快適だ。スピーカーからはコミックソングが流れている。
「何? この変な歌?」
「昔流行ったコミックソングだな、清志さんか今日子のチョイスだと思うよ」
秀樹さんと話しているうちに秘密基地に到着した。地下港? 格納庫? とてつもなく広大な地下空間がありその一角は海面のようで潜水艦らしい物が水面に浮いている。
そしてドックには中東に行った時に乗った飛行機や寮がロシアのスパイに襲われた時のUFOや飛竜零、トレーラーや見たことの無いメカが沢山格納されてある。
その中でも特別な存在感を持つ巨大な楕円形の物体。全体のシルエットはお父さんのコレクションしていたDVDで見た国際救助隊の2号機メカによく似ている。しかしそのボディーは黒光りしており、全長は1キロメートル近くあるんじゃないだろうか?
「秀人さん! あれも真人博士達が作ったの?」
「ああ、あれはミリオネル王国製、つまり完全に異文明の技術で造られているんだ。恒星間航行宇宙船ギャラクティカダーク号、イーマブルグ様達はあれに乗って地球にやって来たんだ」
「宇宙船の名前が組織名になっているんだ、中も見てみたいな」
「後で見せてもらったらいいし、真人達なら詳しい解説もしてくれると思うよ。それよりもちょっと急いだほうが良さそうだ」
秀樹さんが目配せした先を見ると、ヒバリちゃんが半泣きになっていた。まだ格納庫を見ていたいけど続きはご飯を食べた後だね。
エレベーターで居住エリアに移動する。秘密基地は使用目的によってフロアが分かれていて最下層であるさっきの所は格納庫エリア、その上に研究開発エリア、その上が作戦立案、運用、会議室エリアで地上に一番近いのが居住エリアだ。
娯楽室、食堂、構成員の個室、トレーニングルームに天然温泉まで完備している。ギャラクティカダークは福利厚生もバッチリなんだね。
食堂に行くと今、基地にいるギャラクティカダークのメンバー全員が出迎えてくれた。テーブルには所狭しと料理が並べられている。
挨拶を済ますと雑談をしながら食事を楽しむ、やっぱりロリメイドロボ達の作るご飯は美味しい。ヒバリちゃんは片っ端から料理を口に運んでいるから全種類制覇するまでは話しかけられそうにない。サラダバーから野菜をチョイスしていると幸四郎さんとギャラクティカダークの科学者三人組が話しかけてきた。
「うちの構成員となる事を決心してくれて感謝するよ、ほとんど全員と面識があるから改まった挨拶はいいだろう。当面は学生として生活して定期的に訓練や研究等に参加してくれたらいい」
「まあ、しばらくは研修期間だと思ってくれたらいいよ。次はクラヴィーア人の救出まで大きなミッションもないしね」
「決行は春休に合わせるからハルもウリアーナにも来てもらうぞ。それまでに機材や装備の用意をしとかないとな」
「サラダばかり食べているが、これから中枢神経の強化をするから食べ過ぎないようにしているのか? 満腹になり過ぎないくらいだったら大丈夫だから好きなだけ食べてもいいぞ」
いやいや真人博士、サラダが主体なのは腹肉が気になってきたからなんだけど……いや待てよ、改造手術を受けたら消費カロリーが倍になるんだったよね!
それから私は食べたい物を好きなだけ食べた。今日ここに来た目的はギャラクティカダークの正規メンバーになる為に今後の方針を決める事と中枢神経強化改造手術を受ける為だ。正規の構成員は全員改造手術を受けるのが慣例になっているので私も受ける事にしたんだ。怖い気持ちもあるけど、どう考えてもメリットの方が大きいしね。
組織の概要や諸々の説明を受けるのは、手術の後のほうが手っ取り早いので先に手術を受けることになった。コンピュータが脳直結になるので一気に情報を受け取って処理できるそうだ。
食事が終わって一息ついたら真人博士のラボに移動して、いよいよ改造手術を受ける。カプセルの中に全裸で入ると中が液体で満たされた、SFとかによくある中で呼吸の出来る液体だ。人肌くらいに暖かくスポーツドリンクみたいな味がする。
「ハル、気分が悪くなったり不調になったらすぐに合図しろ。液体内では普通に会話できるから質問があれば聞くぞ」
カプセルの前にはコントロールパネルの席に座った真人博士とオペレーターとして今日子さんがいる。ある程度は事前に聞いていたけど再度確認しておこう。
「あのお、さっきヒバリちゃんが先に再手術を受けてたみたいなんですけど定期的に受けるものなですか?」
「ああ、ヒバリちゃんは以前にレベル2まで受けてたんだけど、真人さんがバイオスキャナーを使って調べたらレベル3まで出来そうだったんでやってみたんだよ」
「かなりキツそうだったが成功してサイコウエーブを習得する事も出来た。今は腹が減ったと言ってロールケーキを恵方巻みたいに食べているぞ」
うげえ! あれだけ食べてロールケーキ一本だなんて正気の沙汰じゃないよぉ。でも改造で基礎代謝が上がったらそのくらい消化しちゃうのかな?
「ハルちゃん、改造レベルについては聞いてるよね」
「あっレベルが上がる毎に脳の処理速度とスーパーコンピュータとの親和性が上がるんですよね? 一般人は大体レベル2まででレベル3になると高確率でサイコウエーブが発現するんですよね。レベル4が地球人の限界で成功したのは真人博士達三人だけだって聞いたんですけど」
「正解だ、ハルは俺の見立てだとレベル3が可能だと思うんだがどうする? 元々のサイコウエーブ持ちがレベル3になると2個持ちになる確率は今のところ幸四郎さんとイーマ様で100%だ」
「やる! やる! やります!」
私はサイコウエーブ持ちとはいえピンチの時しか発動しないものだ。何か凄いヤツが身に付いたらカッコいいよね!
「よし、さっそく始めるぞ。今日子、サポートを頼む」
「あいよ!」
手術といっても脳を始めとする中枢神経にナノマシンを送り込んで変質させるので痛みとかは感じない。レベル1、2が終了したけど後頭部に少し違和感を感じる程度だ。
「レベル3を開始する、こちらで健康状態のチェックをするがキツくなったら声を出したり手を上げるなりして意思表示をしてくれ」
私は返事をして流れに任せた。さっきまでとは違い全身の血管に熱が通るような感覚がする。けっこうキツイな、いつまで続くんだろうと思った時、私の意識は妙にクリアになって此処では無い何処かの風景が流れ込んできた。
私はその風景と、そこに居る人達に釘付けになっていた。遠い世界の物語、御伽噺を見るような感覚に完全に身を委ねていると、突然意識が現実に引き戻された。
「レベル3完了だ。少し顔色が悪いようだが大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
「検査とかはちょっと休んでからにした方がいいよね。飲み物とかオヤツ食べれる?」
「あ、ホットミルクティーと……クッキーとかがあれば」
「OK、ユウちゃんにでも持っていかせるね」
ふう、身体を拭いてから心地の良いバスローブを着て休憩場所のソファーで休んでいるとトレイにティーセットを乗せたユウちゃんが入ってきた。
「お飲み物とお菓子をお持ちしました」
基本性能やAI、造形とかはアイちゃん達と一緒なんだけど、ヤッパリ味気無いんだよなぁ。テーブルにティーセットの用意をするとユウちゃんが私に一礼する。
「愛情をもって接したら心が芽生えたりしないのかな?」
そう言いながらユウちゃんな頭を撫で撫でしていると、彼女と目が合った。その途端、強烈な目眩と頭痛が私を襲い一瞬だが意識を失ってしまう。
意識が戻って周りを見渡すと妙に視界が低い、足元を見るとバスローブを着た私が倒れている……って、 おい!じゃあ幽体離脱してる? でも身体はちゃんとある!? えっ!? なんか違和感無いのが怖い!
一人でパニクッていると部屋の姿見に自分の姿? が映る。ユウちゃん? 私! ユウちゃんになってるの?
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」
休憩場所に私? 声は完全にユウちゃんの絶叫が響き渡った。
この娘書いていて楽しいんです。
ヒバリが中東編からアホっぽくなってきているような……続きます。




