銀河バイオ株式会社大躍進
今回はフロントカンパニーである銀河バイオ株式会社がメインです。
発足して一年足らずだが銀河バイオ株式会社は全世界から注目されているベンチャー企業だ。最初に売り出したクリーナーパンジーとテングサはいまだに生産が追いつかず、今注文しても納品は一年待ちだ。
健康食品である新商品デトックスゼリーの売り上げも絶好調で、通販のみの販売だが回線もサーバーもパンクして現在は注文受付を一時中断している状態だ。
「新工場の建設が進んでいるが、稼働した途端にブームが去りましたなんて事は無いのか?」
ここは秘密基地の上にある銀河バイオ株式会社本社の社長室だ、俺の質問に銀河バイオ社長を務める真司が笑顔で答える。
「それは大丈夫だよ。一時的なブームじゃ無くて購入希望者の半数は再購入で後は口コミだからね、効果が絶大だから一度使うともうやめられないらしいよ」
続けて広報担当の和美が人気の秘密を報告する。
「低カロリーで基礎代謝を向上させる酵素を持つダイエット食品として出したんだけど人気の秘密は別のところにあるのよね」
「メインはそこじゃないのか?」
「腸内環境を整える効果があるでしょう? 便秘症の人がゼリーを食べだした途端に改善されたらしいのよ」
「下痢症にも効果的面、現代人は食生活やストレスで腸が乱れがちだからな。アンケートでも一度使ったらやめられないって意見が多いし、製薬会社や大学も成分の分析を始めたみたいだぜ」
「いっその事、原材料を公表して売り出したらどうだ? 材料は余っているのに生産が追いつかないのなら有効な手段だと思うんだが」
「それはちょっと……」
「やっぱりイメージがねえ……」
デトックスゼリーの原材料は汚染物質を浄化した後のクリーナーデングサだ。 普通に寒天を作る要領で作っても軟らかくゼリーに近い食感をもち、汚染物質を分解した後に出来る様々な酵素とミネラル、ビタミン類が豊富で腸内環境を整えて基礎代謝と免疫力を高める。
「もしかして汚染物質を浄化した物を使っているからか? クリーナーデングサは汚染物質を完全に分解して無害な物質にするから中に有害物質が残ることはまず無いぞ」
「真人、普通の人は一度汚染物質が中に入った物に対しては嫌悪感を持つものなんだ、それが例え無害だと科学的に証明されたとしても感情的に受け付けない。風評被害にあう可能性も高いんだよ」
非合理だが最近は一般人の考えも理解出来るようになってきた。合理性よりも感情や慣例を優先し、長い物に巻かれたり他人に称賛される事を望む。 まあそういった人間が主流なのが現実なのだから仕方がないだろう、はみ出し者は気にせずに楽しくやっていくさ。
「その辺は俺の管轄じゃないから任せるよ、ところで中東での活動は上手くいってるのか?」
「ヒョエさんとロトゥフ氏が上手くやってくれているよ、ルークとスカーレットも上手く交渉しているみたいだ」
「ロトゥフ氏はそろそろ選挙だったかな?」
「昨日だよ、圧倒的な大差で当選したよ」
「もうシリアはギャラクティカダークの傘下と言ってもいいわ。銀河バイオの支社も作る予定だし環境改善も進んでいるみたいよ」
まあウチが肩入れしているというのもあるが日本政府がロトゥフ氏を支持し、銀河バイオを始めとしてヨコタ自動車、大手アパレルメーカーの工場を誘致し雇用を作る事とゼネコン各社がインフラを整備する事を確約した事が大きいだろう。
「まあ、唯一の懸念は無能大臣の手柄になっているという事くらいか」
「言ってる内に年末だし正月は手土産でも持って帰省したらどうだ?」
「誰が行くか! 俺の家はここだ! 秀人とは会ってもいいがクソ親父の顔を見るのは絶対に嫌だ!」
「この前、あなた達が東京に行った時にグラミースミスのアップルパイをお土産にくれた妹さんは? あの店って朝から並ばないと買えないから真人さん妹さんとは仲良いんじゃ……って! 2人共なんて顔してるのよ!」
俺はもちろんだが真司も凄く嫌そうな顔をしているので和美は驚いている。
「真人すまん……実家に帰ったらアレもいるんだよな」
「えっ!? 真人さん、妹さんとも仲良くないの?」
「和美も会ってみれば分かるよ……絶対にドン引きするから」
「へ!? もしかして変な人なの!?」
俺は社長室を後にして社員食堂に向かう、新工場のラインと設備の調整を行う為に清志、今日子と待ち合わせしているからだ。もう午後二時を過ぎているので人はまばらだが清志と今日子が来ていて麺、丼物コーナーに並んでいる。
社員食堂は定食、カレーのコーナーと麺、丼物コーナーがあり地域の過疎化で経営難に陥った大衆食堂とうどん店の店主を雇用しているので味はまあまあだ。
「お前らさっき昼飯食べてただろう、また食うのか? そういえば2人共いつもオカワリしてるのに今日はしてなかったな」
「庶民には不意にカツ丼が食べたくなる時があるんだよ、メイドロボに頼めば作ってくれるんだが大衆食堂やうどん屋の安い味は出せないからなあ」
「そんなに美味いのか?」
「かぁぁぁぁ! 分かって無いなぁ真人さんは! アイ達が作ったら美味し過ぎるんだよ。庶民のカツ丼は薄い豚肉、カリカリの衣に黄身と白身が混ざり切って無い玉子、くてくてに煮込まれた玉ねぎ。付け合わせは麩とワカメだけの味噌汁と黄色いタクアン! これぞ庶民の味だよ、セレブの真人さんには分かんないよ」
なんか最近セレブって呼ばれる事が多いな、育ちが良いことは否定しないが何か嫌だ。試しにそのカツ丼を食ってみたが明らかに塩分と脂質が多すぎるな、これとカツカレーが人気メニューと言うのだから日本の労働者に糖尿病やメタボリックシンドロームが多いのも納得だ。
そのあと工場の設備をチェックして地下の秘密基地に戻ると共有のリビングのソファーで秀樹がグッタリしていた。俺たちの顔を見ると起き上がって話しかけてくる。
「真人、日本とフランスのバイオ関連企業の買収は完了だ。設備はそろっているから調整すればすぐに発電菌の培養が出来るぜ」
発電菌は有機物、主に生ゴミを分解するバクテリアだ。分解する際に発電してゴミは有機肥料になるというエコな商品だ。発電量は一般家庭が1日に出す生ゴミでその日の電力が賄えるくらいで、高効率な発電システムとなっている。
先月、商品説明会を行ったばかりだが各国の自治体、外食産業、食品加工会社等からの注文が殺到しているらしい。
「だが、発電する為の場所や送電システムはどうするんだ?」
「ちゃんと手を打ってるよ。老舗の重工業メーカーを数社買収、統合して「銀河インダストリー」として登録して設備とシステム、発電菌の国際特許も申請してある」
え!? ちょっと待て、銀河バイオや関連会社の経営と運用はその道のプロである真司と秀樹に任せてあるが一年足らずで一気に会社の規模がデカくなってないか?
「何を驚いてるんだよ真人、こっちからしたらお前らの方が異常でビックリ人間なんだぞ。まあ、俺達政治経済班も中枢神経の手術でスーパーコンピュータと脳がリンクしているから、このくらいは簡単だよ」
「まあ、経営の事や政治的な事は文系スタッフに任せて俺たちは自分の仕事と研究をしようぜ、真人」
「そうだよ、あと一回輸送機が帰ってきたら材料が揃うんだし、クラヴィーア人救出作戦の決行の日は近いんだよ」
そうだな銀河バイオが大きくなるのは良い事だがそれは真司達の仕事だ。俺達は自分の役割を果たすとしよう、物質転送装置やロシアとドンパチする為の兵器の開発も必要だからな。
日本の労働者に糖尿病とメタボリックシンドロームが多い……この件書いてて自分の腹肉を摘んでしまいました。




