テスト飛行とバーベキューパーティー
幸四郎さんによって名付けられた万能戦闘機「飛龍零」の全システムが起動し、機体のあちこちから淡い光を放つ。対消滅エンジンは機動中も無音なので動いていることをアピールしなければならないと清志が言っていたがほとんど趣味だろう。
「真人博士ちょっといいですか? さっき清志教授がしていた飛龍零の性能についての話しなんですけど……」
「え! お前、清志の独演会を聞いていたのか!?」
嘘だろハル!? あの限り無く拷問に近い自分の作品に対する熱すぎる思いがドバドバ溢れている説明と解説をわざわざ好き好んで聞く奴がこの世に いるとは驚きだ。
「私、父の影響でSF小説や映画が大好きで結構設定マニアなんですよね。相対性理論を初めとする今の地球の基本的な理論を超越していることは分かるんですけど詳細が聞きたくて、今は忙しそうなんで真人博士に聞こうと……」
「悪い、理論は理解出来るんだが専門外だから後で清志に聞いてくれ」
がっかりとした表情をしたハルにヒョエさんが話しかける。
「大丈夫ですよ。この後三時間程テストフライトをした後、海鮮バーベキューをしますのでその時にでも聞いたらいいですよ。なんなら私の方から清志さんに言っておきますよ」
「ありがとうございます! 真人博士にもバイオ技術やソウルコアの事とか聞きたい事は沢山あるんで今度いいですか?」
「そっち方面なら大歓迎だ、いつでもいいぞ」
明るい表情でヒバリとウリアーナのところに戻って行くハルの背中を身送っているとルークが話しかけてきた。
「あの娘、サイコウエーブを活かして作戦司令室でオペレーターとして活躍してもらおうと思っていたのだがお前達の助手を兼任させるのも良さそうだな」
「本人の意思次第だよ。ただあの娘の才能はサイコウエーブを持っている事じゃなく、好奇心と順応性とクソ度胸だな。幸四郎さんが目をかけているけど俺としても欲しい人材だよ」
仲良く雑談を始めた女子高生三人組みを眺めていると飛竜零の各部のチェックをしていた清志とモニターやカメラ、通信機器の調整をしていた今日子がマイクを持って叫ぶ。
「飛龍零、システムオールグリーンだ、いつでも行けるぜ」
「こっちのカメラとモニター、通信の状態もOKだよ。せっかくだからみんなのカウトダウンで離陸しない?」
全員が歓声を上げて肯定すると今日子が勢いよく立ち上がって拳を上に突き上げ、指を三本立てた。
「じゃあ、いっくよぉぉぉぉ!」
3、2、1、ゼロォォォォォ!
全員が今日子と同じように拳を突き上げカウントと共に指を折って行く。ゼロのかけ声と同時に飛龍零が砂煙を巻き上げながら垂直に上昇して行く。
形状はドラゴンをモチーフにした飛行機型だが重力や空気抵抗、様々な法則を無視した飛行が可能だ、50m程の高さまで上昇すると空中で停止する。
「じゃあ取り敢えずユーラシア大陸を大国を中心に領空侵犯しながら飛んでみる」
「では、みなさん行ってきます」
飛龍零は一瞬で俺達の視界から消滅すると今日子が六台の大画面モニターに画像を映し出す。コクピット内を映すモニターには幸四郎さんが映っていてリアルタイムでの会話も可能だ。さっそく清志が幸四郎さんに話しかける。
「どんなもんだ幸四郎さん、ステルス偵察機とは全然違うだろう?」
「いい感じだ。現在は朝鮮半島38度線を通過、本機はこれより音速飛行から時速800キロに減速して中国との国境に向かう」
「ステルス機能もカットしますね。幸四郎さん平壌とソウルの間を何度か往復してから中国に行きましょうか」
「よし、それで行こう」
それから飛龍零は朝鮮半島、中国、ロシア、EU諸国の主要都市上空を飛び回った。音速飛行から低速飛行、ホバリング、曲芸飛行を披露してその存在をアピールしている。当然、各国の戦闘機がスクランブル発進してくるが易々と各国の戦闘機のバックを取ったり撃ってくる機銃をかわしたり、誘導弾を撃ち落としたりと大暴れしていた。
もちろん相手の戦闘機にはロックオンしたり無害な光線を当てるだけだ、スーパースローでロシアやEU諸国の戦闘機のコクピットの様子を見たり通信を傍受するのも面白い。さすがにプロの軍人なだけあってパイロットも司令部も冷静に対処しているが、有り得ない機動をする飛龍零に恐怖を感じているのがよく分かる。
「なかなか良いな、やっぱり戦闘機は最高だ」
「幸四郎さんの操縦技術は素晴らしいですね」
「いやいやお前の、飛龍零の性能に助けられているよ」
コクピット内の和やかな会話とは対照的に各国の反応は戦々恐々としたものだ。所属不明機に領空侵犯を易々と許し大都市上空を曲芸飛行されるわスクランブル発進した戦闘機は遊ばれてミサイルも撃墜される始末だ。傍受した無線には「エイリアンだ!」「悪魔だ!」等の声も少なからず入っていた。飛龍零の性能に満足そうな清志は幸四郎さんに指示を出す。
「大気圏内での飛行と取り回しは上々だな。それじゃあ幸四郎さんゼロ、次は大気圏での最高速度で大西洋を横断してみてくれ」
「了解だ」
大気圏内に於ける最高速度であるマッハ40で大西洋を約十五分で横断した飛龍零はワシントンDCに向かう。
「アメリカさんはある程度こちらの存在を認識しているからな、挨拶でもしておこうか」
スクランブル発進して来た戦闘機の攻撃をヒラリと躱しながらスモークを出してホワイトハウス上空に「我々は世界に変革をもたらすがアメリカに危害を加えるつもりは無い」とメッセージを残して、飛龍零は太平洋を最高速度で横断し、人工島に帰還した。全所要時間は約三時間、ちょうど昼食の時間だ。
幸四郎さんとゼロが飛龍零から降りて来るとみんな割れんばかりの拍手で出迎えた。炭火の用意は出来ているのですぐにバーベキューパーティーが始まった、昼は海鮮中心で夜は肉中心だ。
昼はアルコールは出していないが秀樹が目利きして買って来た魚介は新鮮で質の良いものばかりだ。調理係はメイドロボ達、中でもマイは握り寿司にハマっており、プログラムされた動きとは別に練習を重ねていて、今では名人級の腕前になっている。
後の三人は炭火で魚や貝、海老などをセッセと焼いていて、ユウは調理補助の仕事を黙々とこなす。焼けた魚介や握られた寿司を食べながらみんな和気藹々と雑談をしながらパーティーを楽しんでいる。金や政治の絡まないパーティーは楽しいもんだな。
「真人博士、真人博士」
「どうしたハル? 清志のところに行ってたんじゃないのか?」
「うん! ソニックブームや空力抵抗のキャンセルやいろんな新法則を熱く語ってくれましたよ、本当に面白かった」
うん、やっぱり清志の熱い話を聞いて面白いって言えるって事はこの娘の神経は並みじゃ無いんだな。
「今度は真人博士に聞きたいんですけど、ユウちゃんってアイちゃん達とほとんど同じAIを使っているんですよね」
「そうだ、違いはソウルコアが有るか無いかだけでしかない」
「ソウルコアって何ですか? ユウちゃんは言動や反応でロボだって分かりますけど他の子達はハッキリ言って人間の子供とまったく見分けが付きません。魂を科学的に解析したモノだって言われてもよく分からないんです、ただ心や命の源みたいなモノなのかなとボンヤリと思うくらいですね」
「実はハッキリとは分かっていないが宇宙、生命の根幹を成すものだと推測している。俺が生涯をかけて研究したいと思う永遠のテーマだ、まだまだ謎が多いから研究が進むのはこれからだな」
「私、やっぱりギャラクティカダークに入れてもらおうかな」
「何か思うところでもあったのか?」
「一言で言っちゃうと面白そうだからなんですけど……」
「うちに来たい動機とすれば合格だな、もうすぐテスト飛行の第二部、宇宙空間での飛行をした後に肉主体のパーティーをやるからその時に幸四郎さんに相談するといい」
「はい!」
ハルが良い返事をすると今日子の声が響き渡る。
「はい! みんな注目! これからがお祭りのハイライト! 宇宙空間へのフライトだぁぁぁぁ! 今度は10カウントでゼロと幸四郎さんを宇宙に送り出そうじゃないかぁ!」
みんなが歓声を上げて拍手をしているが、なんで今日子がいつの間にか司会進行をしてるんだろう? まあいいか面白いから。
大盛り上がりでカウントダウンをすると飛龍零は一気に上昇して、あっという間に見えなくなってしまった。モニターでコクピットと色々な方向に取り付けられたカメラで宇宙空間と幸四郎さんの様子を見る事が出来る。みんな宇宙空間の画像を見ている中、俺はバイオスキャナーで幸四郎さんの健康状態を、今日子と清志も其々のサイコウェーブで飛龍零の各部をチェックしている。
飛龍零は月に着陸し幸四郎さんとゼロが降りて記念撮影をすると、土産にに石を拾って地球に帰還する。パイロットスーツの性能も上々のようだ。秘密基地に帰って来たのは西の空が少し赤くなった頃だ、所要時間は最高速度マッハ200で、4時間弱だな。
飛龍零の点検と幸四郎さんのヘルスチェックを済ませたら肉中心のパーティーだ今度はアルコールも出る。ヤッパリ肉は良いものを使っているし清志は「やっぱりバーベキューのイメージはこうだろう!」と長い金串に肉、人参、エビ、ピーマン、ソーセージ、コーンを突き刺して焼いたヤツにかぶりつき、今日子はどこで入手したレシピなのかメイドロボ達にマンガ肉を作らせてご満悦だ。
みんなが楽しく過ごしているのを見ていると、俺まで楽しくなってくるのはなぜだろうか? 今までは研究をする事が全てだった。そう思っていたんだが、他の事を楽しく感じりようになったしギャラクティカダークのメンバーを普通に仲間だと思っている。
「楽しいねハーリー、あの頃を思い出すよ」
またお前か……ギャラクティカダークに存在しているこいつは一体何者なんだ?
次回は梅津女子学園でヒバリとハルちゃんのユルい? 学園生活です。




