ゼロ、大空に舞う
輸送機から培養水槽を降ろし、培養液を排出すると巨大な龍、ゼロの本体が姿を現す。すでに意思を本体側に戻しているのでしばらくすると目を覚ますだろう。
マインのソウルコアはコアブロックに定着しているのでコンピュータ端末を使っての会話が可能だ。鷹丸が何度も話しているし、今日子と清志がマインの身体を造るに当たっての要望を聞いたりしている。なんだか面接みたいな雰囲気だな。
幸四郎さんがゼロの本体を見上げて物思いにふけている、チビ龍のゼロと過ごしているうちに孫のように感じてたんだろうな。
培養液を抜いて一時間程するとゼロの本体がゆっくりと目を開けて何度か瞬きをし、首を持ち上げ身体をゆっくりと起こしていく。時間をかけて立ち上がり俺たちを見下ろす。全高32メートルのドラゴンが立ち上がっている姿を見上げるのはなかなか圧巻だな。
ゼロの意識が戻ると自然な流れでお別れ会が始まった。みんなゼロの足元に集まっているが、俺と清志は少し離れた場所から様子を見ている。
「みなさま、短い間でしたが本当にお世話になりました、ほんの数ヶ月でしたが、色々教えていただきまして真にありがとうございます。イーマ様やミーちゃん達は一緒にあそんでくれましたし、真人さんは私の我が儘を聞いていただき、その上食事まで楽しめるようにしていただきました。みなさん! 本当に……本当に……ありがとうございました!」
うん、見た目は厳ついドラゴンだけど中身はいつものゼロのまんまだな。バイオスキャナーを発動してみると……ソウルコアはいい感じで安定している。これならコアブロックに問題無く移植することができそうだな。
「真人、今バイオスキャナーでゼロのソウルコアの様子をチェックしてたろ? コアブロックに移せそうか?」
清志にはやっぱりわかるよな、たぶん今日子も俺のやっていることに気付いているだろう。
「問題ない、ゼロの活動限界を見極めて移植する……もしか「アレ」ってもう作ってるのか?」
「俺の担当部位は80%程は出来ているな、真人の方はどうなんだ?」
「整体部品に関しては最終調整するだけだ、今日子のほうもOSとか電子制御のプログラムはほとんど出来ていると言ってたぞ」
「だったら帰ったらまずマインの身体を作ってから「アレ」を完成させるか。ネオチビ龍ボディーの方はもう最終調整だけなのか?」
「ああ、コアブロックの調整だけ終わればいつでも組み込める」
俺と清志が今後の計画を話している前では粛々とゼロのお別れ会が進んでいて、みんなが思い思いにゼロとの別れを惜しんでいる。ハルとウリアーナは数時間の付き合いなのに泣き過ぎだろ。
今日子が渡した花束をゼロは器用に爪の先でつまみ受け取った……って今日子普通に涙の別れをしているけどお前はこっち側の人間だろうが!?
ゼロと一番仲の良かった幸四郎さんと語り合っていると今日子が俺と清志の所に小走りでやって来た。
「よっ! おっさん二人でなにしてんの? もしかして、もう事後の相談してるとか?」
「俺たちはこの件に関しては裏の管理者だからな。だけどお前も事情知っているこっち側の人間じゃないか。なんでお別れ会のほうに参加してるんだ」
今日子はキョトンとした顔で俺をみると深い溜息を吐く。
「真人さん分かって無いなぁ、これはイベント事なんだから参加しないと損じゃないか。また復活するのが分かってるのにお別れ会に参加するのがおかしいんだったら、自分の葬式に参列するキヨピーはどうなるんだよ」
「ハハハハ、違いねえや」
「悪い前例を残したな清志」
お別れ会のほうに目を向けるとゼロが前足の指を差し出して幸四郎さんがそれにしがみついている。ハグなのか握手なのか分かり難いがこれがこの会の締めのようだ。
会が終わると全員が所定の位置に着く、と言っても全員がトレーラーに乗り込むだけだ。中には作戦司令室と休憩室、食堂がって移動基地と言って差し障りない仕上がりだ。
慣性制御装置と超高性能タイヤで砂漠だろうが悪路だろうが問題なく走破し内部はほとんど振動や雑音が伝わらない。
作戦司令室には幸四郎さんとルークが一段高い司令官の位置に座り、その下に俺たちを科学者グループ、そして交渉担当のヒョエさんとスカーレット、実戦部隊の鷹丸、ツバメ、ツグミ、ヒバリ。
貴賓席にイーマ様とミレ姫、ゲスト席にウリアーナとハル、ロトゥフ氏が座っている。ターチはイーマ様の側で控えている。
ショーン、ジョージー、ミーの生活班は食堂で食事とお茶の用意をしている。
「これより我々秘密結社ギャラクティカダークによる中東作戦を開始する。ゼロによるテロ組織及び戦闘集団に対する破壊活動を行いその後に鷹丸、ツバメ、ツグミ、ヒバリによる制圧もしくはスカーレット、ヒョエ、ロトゥフによる交渉を行う」
ゼロには特殊なカメラがセッティングされていて様々なアングルから撮影された映像が作戦司令室のモニターに映し出される。周囲の状況もリアルタイムで分析し地図とも連動しているので即応体制もバッチリだ。
ゼロとは常時通信が継ながっているので報、連、相も徹底されている。
タイムラグがあるのでトレーラーが先にムスリム神国の支配地域に向けて出発する。砂漠を時速250kmで疾走する大型トレーラーは普通の感覚だと冗談みたいな存在だろう。
俺たちの技術基準だともう何とも思わないレベルだが地球の感覚だと驚異のテクノロジーだハルは「宇宙のパウァァァ!」と叫んでるし、ウリアーナは「この技術ならロシアなんて恐るに足りませんわ」と言っている。そう言えばクラヴィーアの船を救出するにはロシアとの衝突は不可避だよな。
あ、ロトゥフさんは無茶苦茶ビビっていてもの凄い顔をしている。
「幸四郎さんもうすぐムスリム神国の支配地域に入るよ」
今日子の報告を受け幸四郎さんがゼロに指示を出す。
「ゼロ! 出撃だ、最高高度で支配地域に向かえ! 攻撃地点のデータを送る。上空から急降下で敵の本拠地に降り立ち破壊活動だ、やり方は任せる。民間人や捕虜がいれば逃げやすいように配慮してくれ」
「了解です!」
司令室のモニターにゆっくりと翼を広げるゼロの姿が映される。翼を大きく羽ばたかせるとゼロの巨体が上空に浮かび上がって行く。
モニターは司令室に五台あり其々別のアングルで写されている。映像機器の開発、調整は清志と今日子の担当だがちょっと凝り過ぎじゃないだろうか。
ゼロは高度7000mに達すると体勢を変えて大きく羽ばたく。一気に加速してあっという間に俺たちのトレーラーを追い越した。最高速度は時速700mだ間もなく目標地点に到達するだろう。
「よし! 鷹丸、ツバメ、ツグミ、ヒバリはバイクで待機だ。いつでも出発できるようにしておけ」
「じゃあハルちゃん、ウリアーナ行ってくるね」
「気を付けてねー」
「油断しちゃだめよ」
ヒバリが友達2人に手を振って退出する、バイクはサイドカー付きなので一台に2名乗車だ。走破性はオフロードバイクの比じゃない。
「幸四郎さん、目標地点に到達しました」
「よし、作戦結構だ! 急降下しろゼロ!」
「行きます!」
ゼロが頭を下に向けムスリム神国の拠点に向け急降下する。いよいよギャラクティカダークの実戦デビューだ。
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