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秘密結社ギャラクティカダーク 世界征服を企む組織はホワイト企業だった  作者: ソメヂメス
活動編 ギャラクティカダーク世界情勢に介入しまくる。
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鷹丸とマイン

久しぶりの真人目線になります。

 俺達が乗った輸送機は鷹丸が拠点としている村の近くに着陸する。鷹丸の活躍とヒョエさんの交渉によってこの地域の村や町、傭兵団やレジスタンスは俺達ギャラクティカダークに対して友好的だ。


 俺の姿を見つけると鷹丸が走ってきた。


「真人さん! お願いがあるんだ!」


 いつも冷静に任務を片付ける鷹丸にしては珍しく少し取り乱している、何があったのか気になるところだな。とりあえず移動拠点となるトレーラーは清志に任せたら大丈夫だし、ゼロに関しては意識を本体に移すだけだから片手間で出来るな。


「どうしたんだ鷹丸、いつも冷静なお前が珍しいな」


「診てもらいたい病人がいるんだ!ずっと俺の世話をしてくれていた女の子なんだけど三週間程前に急に体調を崩してどんどん悪くなり今ではほとんど意識が無いんだ……」


「医者には見せたのか?」


「今、この辺りは戦果が激しくてまともな医療が受けられない状態なんだ。伝染病の可能性もあるから隔離している」


「いいだろう、バイオスキャナーで診てみるよ」


 俺が鷹丸と患者のところに向かおうとするとヒョエさんに呼び止められた。ヒョエさんに少し待つように言われたので待っていると、イーマ様、ミレ姫、ツバメ、ツグミ、ヒバリ、ハル、ウリアーナの未成年者を連れてくる。


「少し酷な事かも知れないですが若い人達には現実を見てもらいたいのです。人間の業と世の中の理不尽さを感じてほしい」


 ヒョエさんはなんと無く現状を知っているみたいだな……まあいいか、たぶん何か考えがあるんだろう。女の子が寝ているという小屋にみんなで向かう、大人数になったけど全員入れるのか?


 小屋に入るとベッドに少女が寝ているが見るからに瀕死の状態だ。なるほど、やっぱりヒョエさんはこの病状を見て大体分かっているんだな。それで若い人間に現実を見せて俺に裏付けをさせるつもりか。


「ヒョエさん顔に似合わず結構えぐい教育方針だな。まあ今回は乗ってやるよ、この子の病気が何か大体見当が付いてるんだろう」


「専門家じゃ無いので確証が持てないですからね、憶測でモノを言うべきではないでしょう」


 俺はバイオスキャナーを使い少女の身体をサーチする。瞬間人間ドックだ、内臓、血液、筋肉などのデータを詳細にデータ化して診れるだけでなく細胞から過去の傷病履歴まで調べる事ができる。


 俺とヒョエさんのやり取りを聞いて不安そうな顔をしている鷹丸に対し、残酷な診断結果を告げる。ショックを受けるだろうが現実は受け入れなければならない。


「この娘はAIDSだ、劣悪な環境のでHIV感染から発祥までに年足らずで発症している」


 ヒョエさん以外の全員が凍りつくが俺は言葉を続ける。


 「免疫細胞が破壊された結果、脳細胞が普通では無害な菌類によって侵食されている。脳細胞が変質しているから、もう俺でも治療することは出来ない」


 茫然自失で涙を流す鷹丸を横に置いてウリアーナが俺に質問を投げかける。


「こんな子供がAIDSって、やはり劣悪な環境で不衛生な医療行為を受けていたからですか?」


 ヒョエさんのほうを見ると無言で頷く、その目が「全てを話して下さいお願いします」と強く語っていた。


「女性器、肛門、直腸に数え切れないほどの裂傷がある……どういう意味かは分かるだろう?」


 よく考えたらここにいメンバーはほとんど女子だったな、ほぼ全員が嫌悪感に満ちた表情を浮かべているが、明らかに違う反応を示している人間が二人いる。鷹丸とイーマ様の男子二人だ、もっとも反応の仕方は対照的なんだがな。


「この子がいったい何をしたって言うんだ!」


 頑丈そうな椅子の背もたれが容易く握り潰され、粉々に砕け散る。アイアンクローをされたら頭蓋骨を握り潰されて、間違いなく即死だな。


 珍しく感情を剥き出しにしている鷹丸、怒りの表情を飛び越してまさに鬼の形相だ。訓練の成果で感情を表に出さずに任務を遂行できるようにしてあるが、ミスティと恋人同士になってからはプライベートでは年相応の青年らしい表情を見せるようになっていた。


 しかし、今見せているのはそれとは別の激しい怒りだ。この娘が鷹丸にどんな影響を与えたのか興味があるな。


「鷹丸、激しく怒っているがこの娘はお前にとって何なんだ?」


 表情は怒りに満ち溢れているが鷹丸はこの娘「マイン」について冷静に説明してくれた。感情を爆発させても思考を冷静に保つことが出来るのは忍者としての修行の成果なんだれはうな。


 マインはテロ組織に物心つく前から暗殺者として育てられており、実際に何人も人を殺めている。マインという名も彼女の役割地雷(マイン)であり彼女自身には名前すら無いらしい。


 二年ほど前、サバムの村の代表であるロトゥフ氏に保護されてからは住人達によって手厚いケアを受けて子供らしい感情を徐々に取り戻していったという。


 そしてサバムの村を占拠したテロリストを倒して村を救った鷹丸に対して好意を持ち、この村を拠点とする彼の世話役を買って出て衣食の世話を甲斐甲斐しくしてくれていたそうだ。


 不幸な身の上をモノともせず前向きに生き、鷹丸に好意をよせるマインの存在はテロリストや軍隊と戦い続ける鷹丸の癒しになっていたらしい。


「名前も付けてもらえず、人殺しの道具にされただけでなく、テロリスト達の慰み者にされていただと! ふざけるな! 奴ら人間を何だと思っているんだ!」


 激昂している鷹丸の手をマインが掴んで優しく微笑んだ。


「マイン……自分の為に怒ってくれてありがとうだって?」


 全員が涙ぐんでいるが、俺は一人、あり得ない光景に驚くと同時に研究意欲を掻き立てられていた。


 マインの脳、特に大脳の主要な部分は菌に完全に侵食されていてほぼ脳死状態だ、それなのに鷹丸の手を握り、微笑み、意志の疎通まで出来ている。


 バイオスキャナーで診てみるが脳波は無い。宗教関係者やオカルトを信じる者ならば、奇跡だとか心が通っているからだとか言いそうだ。


 ちょっと待て、鷹丸は今ハッキリとマインの言葉を聞いたよな……ん? そういえば似た状態が以前にあったな。


「鷹丸、マインと会話が出来るのか?」


「ああ、言葉は無くともハッキリとマインの言葉が分かるし俺の意思も伝わる」


 バイオスキャナーのモードを切り替えてみよう。あまり試したことは無いが今の俺なら可能なはず……なるほどな、これはもう一つソウルコア研究の貴重なサンプルになりそうだ。


「鷹丸少し待ってくれないか、マインを治療する事は出来ないが生き返らせ……いや、生まれ変わらせる事は可能かもしれない」


 俺はゼロの為に用意してたソウルコアブロックの予備を輸送機に取りに行く。十個は作り過ぎたとも思ったが用意しておいて良かった。


 小屋に戻ってコアブロックをマインと鷹丸の間に位置どり、バイオスキャナーを作動させる。……よし移植可能だ! 後は本人の意思を確認しておくか。俺の行動を不思議そうに見ている鷹丸から彼女に聞いてもらおう。


「マインにこの世に留まりたいか聞いてくれないか?」


「えっ⁉︎」


 あっ、何の事か説明しないと意味が分からないから。


「マインはもう脳死状態だ、間もなく小脳も侵食されて完全な死に至るだろう。今、鷹丸と意思の疎通が出来るのはお前達のソウルコアが同調しているからだ」


「ソウルコア?」


「ぶっちゃけて言うと魂を科学的に解釈したものだ。今ならマインのコアの状態が良いからこのコアブロックに定着させる事が可能だ」


「そこに定着するとどうなるんだ?」


「アンドロイドに移す事が可能だ、ようはアイ、マイ、ミーと同じような存在になるということだ」


 鷹丸はしばらく固まっているように見えていたが、マインと会話をしていたようだ。


「マインはこの世に留まりたいようだ、神もあの世の存在も信じられないが俺とその仲間なら信じられるって言っている」


「契約成立だな。清志と今日子を連れてきてコアブロックに定着させよう。身体は日本に帰ってからあの二人がこの娘の新しい身体を張り切って作ってくれるだろう」


 鷹丸が涙を流している。この涙が嬉し泣きだという事は普段人間に興味の無い俺にだって分かった。

あと二話程はまじめ会になります。

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