瀬戸内 晴美
今回はハルちゃん目線です。
秘密結社ギャラクティカダークのみなさんと別れた翌日、お昼休みにヒバリちゃんが阿久先生に呼び出された。
小根川さん達を改心させたりウリアーナをクラスに溶け込ませたヒバリちゃんだから先生方からの信頼も厚い。今日もウリアーナの時みたいに頼みごとをされているのかも知れない。
昼休みが終わって戻ってきたヒバリちゃんの顔は疲れ切っていた。昼ごはんは先生が注文してくれた豪華なお弁当を食べたから大丈夫だったらしいけどほとんど味を覚えていないらしい。
なんでも昨日出会ったギャラクティカダークのイケメン科学者が阿久先生のお兄さんだったらしい。たしかに言われてみれば切れ長の目と綺麗な鼻筋とか顔のパーツに共通点が多いかも。
「浩二さんと真人さんの東京でのスケジュールを根掘り葉掘り聞かれたよ。ブラコンって言うの? 阿久先生、お兄さんが好き過ぎて正直言って引くわぁ」
「先生、美人なのに残念だねぇ。そんなんじゃ一生結婚出来無いんじゃない」
「そうねぇ、そのうち日本の法律で近親婚が認められないかしら」
「「阿久先生!」」
あっ! そういえば五時限目、阿久先生の現国だった。
その後は何事も無く現国の授業が進行する。阿久先生は気配りが効くし授業も面白くて分かり易い、おまけに凄い美人で優しくて良い先生なんだけど「近親婚認められないかしら」って……かなりヤバいレベルのブラコンだ。
七時限目の授業が終わると今日は美術部の活動がないからヒバリちゃんとウリアーナと一緒に寮へと帰る。
校門を出ると綺麗なお姉さんが二人並んで立っていた。そっくりだから双子なのかもしれない、わたし達を見つけるとヒバリちゃんに手を振る。
「ツバメ姉さん、ツグミ姉さん本当に来てくれたんだ! ウリアーナこれでもう安心だよ!」
本当にそっくりだなぁ、肩まで伸ばした髪と整った顔立ち前髪の分け目を左右逆にしている他は見分けが付かない。片方がオレンジ色のパーカーにダメージジーンズ、もう片方がピンク色の「萎え〜」とプリントされた長Tに七部丈のデニムパンツとちょっと微妙なセンスでラフな格好だ。
「ヒバリ、制服似合うね。あたいもジョシコーセーしたかったな」
「女子大生やらないかって言われたときに勉強ヤダ! って断ったのツバメでしょう。まあ私も面倒くさいから拠点にいたんだけどさ」
え? けっこうヤル気無い? この二人本当に大丈夫なのかな?
「ハルちゃん、なんか心配そうな顔してるけど大丈夫だよ、二人共やる時はちゃんとやる人だから」
それから1カ月……本当に日本の治安、大丈夫なの?
寮の隣の分譲マンションの最上階を拠点にした二人は片っ端から不審者を麻酔銃と罠で捕らえていた。
内訳はロシアのスパイが十三人、覗き八人、下着泥棒四人、先輩や同級生のストーカーが三人と神田先生の元旦那。ウリアーナの敵よりも女性の敵のほうが多かった。
ロシアのスパイはUFOで拉致られて行き、犯罪者はふん縛って警察に引き渡した。元旦那は神田先生に復縁を迫るも返り討ちにされ半泣きで帰って行った。
「ロシアのスパイってどうなるの?」
「この前の奴らは警告の意味で記憶イジって帰したみたいだけど今回はターチのご飯かな?」
「ターチって何⁉︎」
「ウチの主君のイーマ様のペットだよ。生きた人間が好物なんだ」
「それはちょうどいいわね。捕らえられたスパイの末路はどうせ拷問されて殺されるだけだから」
ヒバリちゃんとウリアーナが、にこやかに物騒な会話をしているけど二人にとっては日常っぽい。仲良くしてるけど住む世界が違うみたいでちょっと寂しいな。
もうすぐ期末テストだ、頑張ってヒバリちゃんとウリアーナと同じクラスでいられる順位をキープせねば。
「そう言えばもうすぐ夏休みだけどウリアーナは両親に会いにノルウェーに行くの?」
「いいえ、移動中に襲撃される可能性もあるしヒバリさん達が守ってくれるここが一番安全だと思うわ」
みんなテスト前で結構ピリピリしているのにヒバリちゃんはいつも通りだ。改造人間なんてズルいけどやっぱり脳に何か入れられたり電流とか流されてたりするのかな? 結構痛かったりするかもしれない。
ヒバリちゃん達を見る限りアニメとかの強化人間にありがちな情緒不安定とか記憶障害とかも無さそうだ。定期的に薬物を服用したり培養液に入ってたりもしてる様子も無い。
なんか気になったのでその日の夜、寮の部屋でヒバリちゃんに改造人間になるメリットとデメリットについて聞いてみた。
「私の場合、忍びの里から出てから流される感じで事が運んだからなぁ、手術は液体に入って待ってるだけだったよ。メリットとかデメリットとか特に考えてなかったけど、本拠地にいるとスーパーコンピューターと脳を直結して凄い量の情報を処理出来るよ」
なにそれ⁉︎ 超文明のスーパーコンピュータって日本が誇るスーパーコンピュータなんてスマホみたいなもんじゃないの? それに脳直結だなんて想像も出来ないよ。
「でも本拠地にいないと使えないから、それが無いと記憶力や知覚とか頭や神経の能力が良くなるくらいかな」
「ざっくり言うと頭が良くなって感覚が鋭くなって、器用になるってことだよね。そんで何かデメリットは無いの?」
「やたらとお腹が空くくらいかなぁ、私の改造レベルだと消費カロリーが基礎代謝で普通の人の倍になるんだって。真人さんなんか改造段階高いから、よけいに食べなきゃいけないのに量増やしてなかったからガリッガリに痩せちゃって身体壊す寸前だったんだよ」
カロリー消費が倍って⁉︎ それでヒバリちゃん、フードファイター並みに食べられるんだ。ヒバリちゃんの場合は戦闘タイプだからよけいに食べられるんだろうけど。
ちょっと待てよ……じゃあ改造されたら頭良くなる上にウエイトを気にせずに好きなだけ食べられるの⁉︎
「ビッグバーガーセットのポテトとドリンクLサイズにしてナゲットとデザート付けても平気じゃない⁉︎ ラーメンに炒飯と餃子のセットだって悩まなくても大丈夫かも」
「そのくらいのカロリーなら私の日課のトレーニングで十分に消費出来るよ、一緒にやる?」
私はブンブンと首を横に振る。それ絶対一般人だと死ぬヤツだ。
「あ、後は免疫細胞の機能も上がるから、普通の病気や感染症にかかり難いし癌にもなり難いらしいよ。細胞の命令系統も強化されるから花粉症とかのアレルギー性疾患にならないって」
「マジで⁉︎ 頭良くなって好きなだけ食べても太らなくて、その上春先の悪夢まで無くなるなんて。私も改造されてみたい!」
「条件はウチの構成員になることなんだけどね」
「銀河バイオみたいなイケイケのベンチャー企業を傘下に持つんだから待遇もいいんじゃないの?」
「うん! 休みもくれるし、ご飯も美味しいし、お小遣いも結構もらえるよ」
「いいなー、私もギャラクティカダークに入れてもらおうかなー」
「ハルちゃんが来てくれたら私も嬉しいよ」
この夜の何気ない会話が私の運命を激変させる事になるとは全く思っていなかった。
次回、時系列的に二章プロローグの部分です。




