出門 今日子
まだしばらく毎日投稿します
「ん? 出門 今日子がここに来て1年でシステムの復旧と地球人スタッフの追加が出来るようなったって言ってましたね。それまでは幸四郎さん一人で世界を飛び回ってたんですか?」
「そうだ。コンピュータや各種設備を満足に使えない以上、原始的なやり方しかないからな。まあステルス機や隠遁、撹乱の道具が割と使える状態だったし、王国側の諜報員と共に行動することも多かったからな」
幸四郎さんと話していると部屋の扉が開き、上下よれよれのグレーのスエットに大き過ぎるサンダルを履いた、ショートヘアの髪の毛がボサボサでメガネをかけた若い女が入って来た。
パンツに手を突っ込んで股間をボリボリと音を立てて掻きながら大アクビをしている。顔立ちがいいだけに残念だ。
「今日子! 年頃の娘がなんてはしたない! ちゃんとしなさい!」
「固いこと言わないでよ幸四郎さん。こないだまでは寝るときはパンイチだったんだから大進歩だと思うんだけど……ん?」
幸四郎さんと親子みたいなやり取りをしていた今日子が俺の存在に気付いたみたいだ。
「あ! はじめまして、阿久 真人博士だよね! 僕は情報技術のスペシャリスト、人口知能、先進技術、ハッキング、なんでもOKの出門 今日子だよ。ここにいるって事はもう仲間だよね! よろしく!」
「初めまして出門 今日子さん……」
「あっ! タメ口でお願い 堅苦しいのは嫌いだよ真人さん」
「じゃあよろしく今日子。俺の情報は調べてるだろうから自己紹介はもういいか?」
「うん! 面倒くさいしね。あの論文や数式完璧に理解出来るなんて天才だよね!」
「今日子もコンピュータに関しては似たようなもんだろ。ところで何でここに来くることが出来たんだ? 情報端末つかえるようにしたの今日子だろう」
その問いには幸四郎さんが答えた。
「いつものように偵察機で情報収集してたら偶然見つけたんだよ、CIAとモサドに追われてた所を保護したんだ」
「あとMSSとFSBとMI6にも目をつけられてたよ」
「一体何やったんだ!? メジャーな諜報機関ばっかりじゃないか!」
「大学院で研究してた人口知能と新世代情報セキュリティーの研究を教授に横取りされてね。抗議したら女が研究成果を上げるなんておかしい、とっとと結婚して家庭に入れ! この研究は私がした事にしといてやるって言われてブチキレしちゃった」
逆上した今日子は大学のサーバーにとっておきのウイルスをばら撒き、システムを完膚無きまで叩き潰して教授の不正やスキャンダルをネットに拡散した。
そういえば2年くらい前に有名大学のサーバーがサイバー攻撃にあってえらい事になってたな。教授陣、経営陣の不祥事も拡散して大学が経営危機に陥ってたっけ。
そして今日子が大学2回生の時に課題として提出した高機能情報管理ツールが教授の名前で実用化され世界各国で使用されている事を知った。
そのリベートで教授がぼろ儲けしていたことを知って怒り心頭に発した今日子は、ツールを使用した情報を拡散し他のプログラムを破壊する凶悪極まり無いウイルスを世界中にばら撒いたのだ。
それがいけなかった。今までに無い画期的なツールは世界各国の公共機関や金融機関、ハイグレードなものは政府関係で使われていた。鉄壁と言われたセキュリティーも製作者にかかれば紙装甲だ。行政、金融、軍事システムのダウン、機密文書の無差別開示などで世界中がパニックに陥った。
去年、かつて無い大規模サイバー攻撃が世界を揺るがす大ニュースになっていたけどこいつの仕業だったのか。そりゃあ諜報機関に狙われて当然だ。
「俺がいつものように偵察機で地上を観察しているとCIAの諜報員に追い詰められて「いやだよぉ、捕まったら拷問されて死ぬまで嬲りものにされて殺されるんだぁぁぁ、「はじ◯の◯歩」と「強◯装◯ガ◯バー」の最終回を見るまでは死にたくないよぉぉぉ……」ってメソメソ泣いてる所を保護したんだ」
「もうだめだ! って思ったら突然頭の上にUFOが現れて僕にむかって光線を出したんだ! その光線に吸い上げられてUFOの内部に入ったらダンディーなおじさんがいたんだよ」
「まあ、CIAとモサドの無線を傍受して今日子がコンピュータのスペシャリストだって事は分かっていたからな。助命を条件にギャラクティカダーク号のメインコンピュータを調べてもらおうと思ったんだ」
この幸四郎さんの判断はお互いにとって幸運な物となった。今日子は命が助かっただけで無く、異星のオーバーテクノロジーを研究出来るという幸運を手にする事が出来た。
そしてギャラクティカダークはメインコンピュータが起動して様々な施設、機能が稼働状態になった。そしてインターネットとメインコンピュータが連携して様々な提案が出るようになったことだ。
幸四郎さんと今日子、そしてあと9人もメインコンピュータが選抜して幸四郎さんの目にとまった。経営、企画、諜報、ビジネスのスペシャリストらしい。
「他の人員についてはまた後ほど紹介するとして今日子が起きたことだし、真人の持ち場である生体、遺伝子工学プラントに行くとしようか」
待ってました! 俺は逸る気持ちを抑えてゆっくりと幸四郎さんと、今日子について行った。待ってろよ! 俺の理想郷!
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