通常運転
バイオプラントに並べたカプセルをチェックしていると突然視界が赤色化する、もう時間切れか。時計を見るとまだ18時過ぎだというのに、最近研究に集中しているせいか限界が早いな。
ギャラクティカダークが活動を本格化するに当たり、俺と今日子と清志は午前中はミーティングと共同研究及び開発。午後はそれぞれの研究開発をするというスケジュールで動いている。
食堂に行くと何人か先客がいた。今日の定食は鯵フライかピーマンの肉詰めだ。俺はピーマンにしておこうかな。
「真人さん、このカラータイマーもうちょっと時間を延ばせないかなぁ、いつもいいところでタイムアウトになっちゃうよぉ」
今日子が付け合わせのキャベツを味噌汁に放り込みながら言う。鯵フライには真っ黒になるくらいにウスターソースが染み込んでいてタルタルソースがこんもりと盛られていた……塩分とコレステロール!
「いや、適度な休息は必要だ。俺たちはサイコウエーブと長い寿命の恩恵があるんだから焦る必要は無いだろう」
清志はカツカレーと日替わり麺の山盛りチャーシュー麺のダブルだ。中枢神経の改造で消費カロリーが大きいとはいえよく食うなあ。
「ちょっといいか? 突然だが、お前達三人の食事と睡眠時間時間をチェックする。清志にくらべて真人と今日子の消耗が激しいような気がするからな」
言われてみると確かに清志は俺たちにくらべて視界が赤色化するのが遅いようだし血色もいい。
幸四郎さんがメインコンピュータにアクセスし、俺たち三人のデータをすぐにチェックする。俺たちにプライバシーの侵害とか個人情報の保護などといった概念は無い。
イーマ様は幸四郎さんとルークに個人の体調、動向、生活を管理する権限を与えた。二人の人格と誠実さ、マネジメント能力を信頼しているからだ。
もちろん俺たちにも異存はない、なぜかは分からないが俺たちの間には信頼関係が構築されているからだ。
この短期間に今まで接点の無かった人間、異種族が信頼し合えるようになった理由は謎なんだがギャラクティカダーク号のソウルコアが関係している可能性が高い。
「真人、食事量が明らかに足りないぞ! 元々痩せているのに体重が5キロも減ってるじゃないか。アイ、マイ、ミーこれから真人の食事は量を三割り増しにしてオカズを一品……そうだな滋養のある物を追加するように」
「「「はい!」」にゃ!」
そう言えば昔から考える事や研究に没頭すると食事や睡眠を疎かにしていたな。睡眠に関しては脳の損傷があるので気をつけていたが、食事については三食食べてたらいいやって感じだった。
消費カロリーが三倍になったんだから食事量にも気をつけないといけないな。当面は幸四郎さんの立ててくれた対策でいけるだろう。休憩中に間食を取る習慣もつけたほうがいいかもな。
「今日子は二人に比べて睡眠時間が短いが……まさか不眠症とかじゃ無いだろうな」
「えっと……ついついゲームしたり漫画やアニメを見たりしてうっかり夜更かしを……」
目を泳がせてしどろもどろに言う今日子に幸四郎さんのカミナリが落ちる。
「馬っ鹿もん! 自分の体質を考えろ! これから今日子の消灯時間は22時だ! ちゃんと毎日見に行くからな!」
「えぇぇぇぇ! そんなぁぁぁぁ! 全然時間が足んないよぉぉぉぉ!」
今日子が半泣きで幸四郎さんに抗議するが俺たちの場合、睡眠不足と栄養不足は冗談抜きで命に関わるからなぁ。
「幸四郎よ、やはり休日は必要だな。今日子よ、休日を設定するのでそれを趣味や娯楽に充てるといい。最低でも週二日は休暇を取れるように調整しよう」
様子を見ていたルークが割って入ると今日子はキョトンとした表情でしばらく止まっていた。
「毎日充実していたから休みなんて考えてなかったよ。でもやっぱり研究や情報収集は好きだし休みは無くてもいいかな」
「「ダメだ! 休め!」」
「はい……」
責任者2人に押し切られ今日子は渋々了承した。
「まあいいや、休みの日は引きこもってゲーム三昧だね」
切り替えの早さは流石だな……待てよ、もしかして俺たちも休みを取るのか?
「当然だ、お前達もちゃんと休むんだぞ。あと給料も出すし身分証や戸籍も用意しとくから休日を満喫するように」
俺はまだ戸籍があるから偽造の必要はないけど、週二回の休みか。研究が趣味だから、いつも通りバイオプラント使わせてくれってのはダメなんだろうな。
「真人、休日の過ごし方が分からんなら秘蔵のBlu-rayでも貸してやろうか?」
「遠慮しとくよ、バイク買ってツーリングもいいかな」
清志のBlu-rayは間違いなくアッチ系だからな。こう見えても学生時代は暴走族を叩き潰したりしていたからバイクは得意だ。
「意外だな、良かったら改造してやろうか?」
「パワードスーツに変形する機能は付けないでくれよ」
食事が終わり清志と軽口を叩いているとイーマ様がターチに乗って食堂にやって来た。
「真人ぉ、ターチがお願いがあるみたいなんだけど聞いてあげてよ」
ターチが頼みだなんて珍しいな。
「創造主様、実は私に精神感応による念話が届きまして……我が兄が寿命が尽きる前に活躍の場をあたえて欲しいと申しております」
「「「ターチのお兄さん⁉︎」」」
食堂にいた全員が振り返り素っ頓狂な声を上げる。正確に言うとターチの試作品なんだがな、使い道が無くてどうしたものかと持て余していたんだ。
後、半年ほどで細胞が崩壊するから放置でいいかと思っていたんだがいつの間にか自我が芽生えていたか。しかも自分の運命を察して最後に一花咲かせたいとは。
何とかしてやりたいんだけどなぁ。
なんか日常回になってしまった……徐々に盛り上げていきたいと思います。




