風の行き先
今回は鷹丸以下忍者のみなさんが主役です。
「法眼斎殿に会わせていただきたい」
その男が現れたのは暑い夏の日だった。浅黒く焼けた肌に髪には白いものが多く混じっている。年の頃は五十前後だろうか? 顔にシワが刻まれているが引き締まった身体をしており、眼光鋭く見るからに只者では無い。
「長老に何の用だ? それよりもなぜこの場所を知っている? この隠れ里は地図にも載っていないはずだ」
「借りた物を返しに来ただけだ、会うことが叶わぬならこれを預かってくれるだけでもいい」
男が手渡した物は我が風牙流忍術が用いるクナイだった。かなりの年代物だが上忍の扱うもので家紋が刻まれている。家紋は党首一族のもので間違い無い、俺は男を涼しい場所に休ませて長老の元に迎う。
「これは⁉︎ 鷹丸、これを持ってきた方に会いたい。連れてきてはくれぬか」
長老である法眼斎様は97歳であるが健脚で言葉もしっかりとしている。男が持って来たクナイを見るなり震える手で握りしめ、涙を流していた。
連れて来た男を一目見るなり長老は感極まった声で彼に話しかける。
「御子息ですか? いや……お孫さんか?」
男は悪戯っ子のようにニヤリと笑うと長老に声高らかに言う。
「残念ながら不正解だよ風間 法樹 特務少尉、俺は大日本帝国海軍中尉、田島 幸四郎本人だ!」
驚く長老に田島氏は軍での長老と自分自信の話をする。本人でないと分からない話が多く、長老は彼が田島 幸四郎であることは間違いないと確信を持ったようだ。
「しかし、田島中尉の零戦はミッドウェー海戦で撃墜されたと聞いています……それにその姿。齢百を軽く超えているはず、まだ初老にしかみえませぬ」
それから田島氏の話す内容は荒唐無稽な絵空事にしか聞こえない内容であったが彼が隠れ里の近くまで乗って来た異形の飛行機を見た後では信じるしか無かった。
それから田島氏は長老の館に数日間滞在していた。田島氏は死地に赴くときに御守りとして預かったクナイを返したらすぐに帰るつもりだったようだが長老が引き止めていたのだ。
数日後、長老の館の大広間に隠れ里の人間全てが集まっていた。全員合わせても28人、その中で俺とツバメ、ツグミ、ヒバリの四人が下座に並び、上座には長老と田島氏が並んでいる。
「鷹丸よ、我が一族は隠密だけでなく一騎当千の戦闘力を持つ「超忍」として戦国の世が終わった後も幕府、新政府軍を経て大日本帝国の隠密として秘密裏に活動していた。だが第二次世界大戦後は受け継がれて来た技の継承をしているのみ、最早我らの活躍の場はこの日本には無いのだ」
俺は風牙一族に伝わるほぼ全ての忍術、武術、奥義を極めたが今の日本では使い道が無い。争いの絶えぬ外国に活躍の場を移す事も考えたが生まれ育った国を離れることには抵抗がある。
「鷹丸よ田島様がここを訪れる事が出来たのも法眼斎という今の名を知っていたのも遥か星の彼方より来られた方々の導きによるものだという。お前達はこの里を出て田島様と共に行くがよい、この里に戻るか星の彼方より来たれし方々に仕えるかは鷹丸、お前に任せる」
俺達四人は星を渡る船、ギャラクティカダークに仕える事になった。俺達に与えられた任務は世界各地の諜報活動だが、瞬間移動する装置や田島様の飛行機で連れて行かれた場所で決められた場所の観察、人物の動向を見て定期的に報告するだけだ。
今思えば隠れ里の中しか知らぬ俺たちに、外の世界を体験させる為の処置だったのだろう。その思惑により俺達は外の世界を徐々に知る事が出来、色々な事を考えるようになった。
ある日、田島様から星の彼方より来られた方々と俺たち以外の地球人の配下との顔合わせをするので、大会議室に集合するようにと指示を受けた。俺たちは基本的に隠密なので姿を隠し警護に徹するのが良いだろう。
星の彼方より来られたのは、幾多の星を治めていた神聖ミリオネル王国の皇太子イーマブルグ殿下とその家臣だった。地球で新たに配下となった者達は田島様に見出された優秀な文官と学者だという。
顔合わせの儀にて今は亡きミリオネル王国国王の遺言が込められた映像が流されてた。王の覚悟と民と我が子を思う心、そして文明を担う責任感に感銘を受けた俺は王の嫡男であるイーマブルグ殿下こそが生涯を捧げる主君に相応しいと心の底から思ったのだが少し違和感を感じていた。
少し休憩を挟み再度集合した時、先ほどの違和感の正体がイーマブルグ殿下と学者達、そして田島様により解き明かされた。王は我が子に忠臣を当てがう為に、先ほどの映像に人間を洗脳する力を込めていたのだ。
しかし殿下はそれを良しとしなかった、学者達により洗脳効果は解かれていたが、この場にいる誰もが聡明で気高いイーマブルグ殿下に忠誠を誓った。
それから先はトントン拍子に話が進み、イーマブルグ殿下の元に全ての家臣は平等であり仲間として接して良い事になった。田島様も幸四郎と呼べと言っているし、イーマブルグ殿下もイーマ様で良いとの事だ。
全員が脳の端末化手術を受け、俺はサイコウエーブ「認識阻害」を身につけることが出来た、隠密行動には持ってこいの能力だ。身体能力や五感も鋭くなった気がする。
騎乗する龍に罪人を食べさせるため、悪人の根城に乗り込むイーマ様の護衛を買って出た時、以前からの家臣である異星のクノイチ「ミスティ」も護衛に名乗り出た。
無事に護衛の任を全うする事が出来、その後も新たに出来た拠点の警備等で2人で行動する事が多くなり背中を預けらる戦友となった。
お互いの身のこなしに興味を持った俺たちは修行と模擬戦を一緒にするようになる。
最初は身体能力の高さに翻弄されたが磨き抜いた技を駆使してやや単調なミスティの動きを見切れるようになり、模擬戦では勝ち越す事が多くなって来た。ミスティも俺の技を盗んだり新しい動きを取り入れて日々進歩している、良い修行相手だ。
ある日の模擬戦でミスティの剣を受け流した時、俺の刀が擦りミスティの乳房が露わになる。思わず注視してしまい一本取られてしまった、そしてミスティが俺に近づき真剣な顔でとんでもない事を言い出す。
「今の隙は私の乳を見て出来たのか?」
「そうだ、すまない」
隠しても何なので正直に答える。
「つまり私の事を雌として見ているわけだな」
「え⁉︎」
今まで稽古相手か戦友としてみていたがミスティは女性として魅力的だと思う。赤褐色の肌と絹糸のように白く美しい髪に紫の瞳、色と耳が尖っている以外は俺たちと変わらない。身体は鍛えられ引き締まっているが乳房と尻は程良く大きく女性としての魅力に溢れている。
「鷹丸が私のことを戦士としてしか見てないと思っていたのでな、ついでに聞くがあの三人のうちの誰か、もしくは全員と子づくりをするつもりなのか?」
何を言ってるんだ? 俺の頭は想定外過ぎる事態に混乱していた。
「いや、まあ、嫁候補ではあったが里を離れた今、彼女達にそんな縛りはない。それに俺にとっては妹みたいなものだからそんな気にはならないな」
何とか平静を装い答えると俺の口が柔らかいものでふさがれた。
俺はミスティに熱い接吻をされている事に気付くまで数秒の時を要した。ミスティは唇を離すと、さらに追い討ちをかける。
「ならば私が鷹丸と子を成すことに何の問題も無いわけだな」
「えっ……とミスティの種族は……そういう行為にオープンなのか?」
ミスティは少し考えると首を横に振る。
「私の一族の雌は自分よりも強い雄にしか心も身体も許さない。私は一族で歴代最強の戦士だから、さっきの口づけも初めてだし当然生娘だぞ」
言葉が出ずに固まっているとまたまた追い討ちをかけてくる。もはや滅多打ちだ。
「生き物として強い者と契り、強い子孫を残すことは当然だと思うぞ、念のため真人に聞いたら私と鷹丸で子を成すことは可能らしい。優性遺伝とか突然変異がどうとか難しい事を言っていたが強い子が出来る可能性が高いらしいぞ」
俺は精神的に完全敗北していたが男としては喜んでいた。思考停止状態はしばらく続きそうだ。
最近、鷹丸兄さんとミスティさんの仲が良い。一緒に行動することが多かったけど最近はミスティさんがやたらと身体を密着させるし、兄さんもなんだか嬉しそうだ。
私はヒバリ!風牙の里からギャラクティカダークにやって来た十五歳のクノイチ。ツバメ姉さんとツグミ姉さんの姉妹とは従姉妹で私たち三人は鷹丸兄さんの嫁、妾候補だったけどお役ご免みたい。
みんな家族みたいに育ったのに嫁や妾って何か嫌だったからちょうどいい。ここは御飯が美味しいしみんな凄くて良い人ばかりだから毎日が楽しい!
ツバメ姉さんとツグミ姉さんはギャラクティカダークのお仕事を今まで通りにするけど。私は東京っていう日本の都で高校生という者になるらしい。
なんでも私の年齢では普通は高校に通っているそうだ。そして私が通う予定の学校は政府高官の娘や大店の娘、国内外の良家の娘が通う名門らしい。これは縁を作ったり情報収集をやれってことだよね!
とりあえず今は入学試験に受かる為と一般常識を身につける為に、学者と文官のみなさんに猛勉強させられております。
風間 ヒバリ新生活と新たな任務に向けてヤッテヤルゼイ!
次回第一章最終話。
第二章より火、木、土の更新になります。




