秘密基地建造会議
みんなが清志の出した秘密基地の案にテンションを上げている中、実務上のトップ2は冷静に議論を進める。
「まずは基地を建造することのメリットと具体的な運用方法を示さねばならないな」
「法的、技術的な問題点の提議と下準備、建造計画も緻密に立てる必要もあるぞ」
ルークと幸四郎さんの指摘にテンションが上がってた全員の表情が引き締まる。清志も思いつきやオタク魂で提案したわけでは無い、基地の必要性は俺と今日子も感じていたからだ。
「これから本格的な研究開発を行うにはギャラクティカダーク内の各種プラントでは足りないからだ。いくらギャラクティカダークが巨大な船でも科学実験や各種生産を行うには手狭だし設備もすでに不足気味だ、これからの事も考えて大規模な研究施設が欲しい」
「メインコンピュータも実はいっぱいいっぱいなんだよ。ミリオネル王国全ての叡智を詰め込んでるから処理能力がけっこう追いついてないんだ。これからの事を考えるとメモリーの増設や各分野ごとのデータの分散、演算装置の機能向上や各種設定。かなり広い施設が必要だと思うよ」
「そしてギャラクティカダーク号の修理だな。現在のところ6割程度出来てはいるが、正直言ってそろそろ海中で出来る工程は限界に来てしまっている。宇宙船として再び運用する為にはドッグに上げてオーバーホールする必要がある」
幸四郎さんとルークは真剣な表情で俺たちの意見を聞いている、どんな話でもキッチリと聞き相手を尊重しつつ冷静に考える二人は本当に良い上司だと思う。
「お前達の研究はうちの生命線だからな、研究施設と工場としての大型拠点は必要だということか」
幸四郎さんが頷いているなか俺は追加でもう一つの必要性についても説明する。
「秘密結社としてのギャラクティカダークの機能を超大型とはいっても一隻の宇宙船に集約するのは危険だ。地球で活動する為の拠点に各種施設を移してギャラクティカダーク号の中にはバックアップデータを残し、万一の時には宇宙船として万全の態勢でいつでも発進出来るようにするべきだと思う」
「我々がこの星から脱出するような危機が来るというのか⁉︎」
ルークが目を見開いて驚愕の表情を浮かべる。まあ地球にたどり着くまでが波乱万丈だったからな、安住の地かと思った地球で危機的な状況が来るとは思っていないんだろう。
「具体的にどんな危険があるのかは断定出来ないし、何も起きない可能性もある。だが全ての可能性はゼロじゃないんだ、どんなことが起きても対応できる備えはしておくべきだと思う」
「その通りだな。自然災害や地球での戦争、ギャラクティカダークを追ってくる勢力がある可能性も視野に入れておいたほうが良いだろう。何も無い事が一番だが危機管理は必要だな」
幸四郎さんの意見に今日子が続ける。
「そうだね、今のところメインコンピューターに全ての情報とシステムが入っているけど、やっぱり拠点にスーパーコンピューターを設置してバックアップを取っておいた方が良いと思う」
「ギャラクティカダーク号を収納可能な大型拠点の建造は決定で良いな。具体的な設備や運用は建築予定地の状況や周辺の地形等を調べて基礎工事を始めてからでも遅くは無いだろう。まずはその人工島の確保だな、説明を頼む」
浩二がモニターに各種資料を映し出しながら説明を始める。
「S湾に面しているこの人工島ですが、産業廃棄物の不法埋め立てによる土壌汚染により立ち入り禁止となっております。周辺の海域に汚染物質の流出は無いとされていますが風評被害により漁船、釣り客等も近付きません」
秘密裏に基地を建造するには最高の条件だ、土壌汚染の問題で破格の値段なのも実に良い。
「だが、立ち入り禁止区域何だろう?海洋汚染も懸念されているのにフロントカンパニーを設立できるのか?」
幸四郎さんの質問にピンと来た。なるほどな、この計画は俺たちの頭脳あってのものか。可能かどうか確認する前に俺たちなら出来ると信頼されてるわけだ。
「浩二、汚染物質除去にちょうどいいモノがあるんだが、フロントカンパニーは健康食品の会社じゃ無いとダメか?」
「いいや、真人の案の中で一番良さそうだから健康食品を推したんだが何か考えがあるのか?」
「ああ、フロントカンパニーの主力商品、汚染物質の除去、世間に良い印象を与えるという、一石三鳥のモノがある!」
「で、何の会社にする気だ?」
「健康食品も捨て難いから、バイオ系の総合企業でいいんじゃないかな。そしてまず売り出すのは植物の種だ!」
俺はモニターに二種類の植物を映し出す。
「クリーナーパンジーとクリーナーテングサだ、陸上用と海中用のダブルで用意してある。この植物は種子を蒔くと土壌、海中の化学物質を分解し栄養素とするんだ。枯れた後は無害な有機肥料となる優れ物だ!」
一同が拍手をすると早速話し合いだ、これをどう売り出すか? 人工島をどうするか? フロントカンパニーをどう立ち上げるかの熱い議論を交される。
飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進していたITベンチャーの風雲児だった堀江 真司だったが政財界の大物に睨まれ、信頼していた右腕に裏切られて会社を乗っ取られた。それして自殺しようとしてたところを幸四郎さんに助けられたというわけだ。
「真司は財テクで資金を集めて、学会を追放されて行くところの無い真人を拾って新事業に着手。行方不明の北梨 外道衆議院議員に狙われていた堀内 和美を広報に迎え入れる……という流れでいいんだな」
「あとはパンジーとテングサで人工島の環境を改善する事をマスコミを利用して大々的にに宣伝する。そして本社と工場を建てて「株式会社銀河バイオ」を立ち上げるのが表側の計画です」
幸四郎さんと浩二が表側の計画をまとめる。次は裏側の計画だがこっちは清志の独演会だ。
「人工島の実験と並行して地下の工事を始める、産業廃棄物は俺たちにとっては資源だ。まずはハイブリッドナノマシンを大量投入し、産廃を原子分解して素材に再構成する。そして出来た空洞部分に作業用ロボを投入して内部を工事、まずは作業用ロボと資材の工場エリアを作り生産補充しつつ工事を進める。同時進行でこの間作った作業用潜水艦でトンネル工事を始める。空間歪曲機と固定装置で空洞を作り、水中用作業用ロボで固めていく。工期はおよそ半年だな」
「県内の中堅建設会社が経営破綻しそうなので買収して表向きの工事を行います。取り込みと運営に関しては僕が片手間にやっておくのでお任せ下さい。名目上の経営者は真司にしておきますね」
後は詳細を煮詰めて実行するのみだ。
俺は表側の係かぁ、面倒くせえなぁ……。
あと一回で基地出来るかなあ……
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