食堂にて
メイドロボ三人娘もすっかり馴染んでギャラクティカダークのメンバー間の仲間意識も強くなって来た。特にイーマ様が自由に動き回れるようになりミリオネル王国から来た家臣達も地球人スタッフと接する機会が増えた事が大きい。
「ショーンさん、ジョージーさんお待たせしましたあ〜」
アイとマイが野菜炒めとパン、フルーツの乗ったトレイを席に運んでいる。ギャラクティカダークの食堂は二種類の日替わり定食と日替わり丼、日替わり麺で運用している。
羊の角の執事のショーンさんと、牛の角で巨乳の侍女のジョージーは見た目通りのベジタリアンだから特別メニューだ。
食堂のメニューは食材の確保と手間を考えて四種類にしてある。どれも美味しいし文句の出ようが無いが、今日子と秀樹がレギュラーメニューにカレーを入れる会を立ち上げ、賛同者が増えているらしい。
「阿久博士、少しお伺いしたい事があるのですがよろしいですか?」
話しかけて来たのはギャラクティカダーク号の機関士であるテンタ君だ。彼は紫色の円柱状の身体で見た目は地球のイソギンチャクに近い。足はヒトデのようでウネウネ動いて移動するが意外と早く、頭部からは十数本の触手が生えている。
「どうしたんだテンタ君? 俺に話しかけて来るなんて珍しいな」
ミリオネル王国辺境の星に住む少数民族であるシーロズ族であるテンタ君は地球人の感覚だと不気味に見えるが知的で礼儀正しく周囲に気配りも出来る好青年? だ。
「実は私、地球人が作り出すフィクション作品に興味を持ち、映画やアニメ、小説やマンガなど様々な作品を楽しませていただいてます」
そう言えばシーロズ族にはフィクションの概念が無く、母星を出た直後は物凄いカルチャーショックを受けたって言ってたな。テンタ君はオタク気質ですぐにフィクションを受け入れ、地球に来てからはアニメ作品にどハマりしていると聞く。
「博士! コレを見て下さい!」
テンタ君が出して来たのは、いわゆるエロ同人誌だ。少女が触手モンスターに凌辱されているシーンである。
「コレは我らシーロズ族に対する誤解と偏見を与えるのではないでしょうか⁉︎ 他にもシーロズ族に酷似した生物がヒューマノイド型種族の女性を嬲るシーンのある作品は多数あります! シーロズ族の尊厳を汚されたようで私は……私は……」
興奮するテンタ君の肩? を清志がポンっとたたく。
「師匠!」
「テンタの怒りはもっともだ! イーマ様が地球の指導者になったその時は、この様な悪書を描く不埒な輩は強制労働か死刑に処するのがふさわしい!」
清志はメインエンジンや各種メカニズムの修理の関係でテンタ君と関わる事が多い。一緒に仕事をしているうちにお互いの技量を認め合い、すっかり仲良くなったようだ。ちなみにテンタ君の見ている作品のほとんどは清志と今日子が提供している……エロ同人誌は今日子が怪しいな。
バイオプラントでメイドロボ三人娘から取ることが出来たソウルコアのデータをまとめる。
俺と今日子、清志がそろいギャラクティカダークの機能が回復していくと、いくつものブラックボックスが存在する事が判明した。
中でもソウルコアの研究はブラックボックスの中でもトップシークレットに当たる事項だ。何故あっさりと俺が全資料を解放できたかは謎だが考えても仕方がない。ありがたく研究させてもらおう。
そろそろ視界が赤くなりそうだから食事をして休もうと食堂に行くと幸四郎さんとギャラクティカダーク号のゴッグ船長が酒を酌み交わしていた。
「ここも賑やかになったな、死にかけたお前を助けてから七十年くらい経ったかな?」
ゴッグ船長は二足歩行の厳つい獣人だ、キッチリと軍服を着用していて余計に厳つく見える。今日子は魔王って言ってるけど、俺の印象はディズニーのミュージカル映画なんだが。
「まあ、船の機能が回復したのもあるだろう。今の状態から考えると何も使えなかったからな」
今日子が来るまでメインコンピュータがスリープ状態の為かなりの不自由があったようだ。彼女が頭脳を蘇らせ、俺と清志が手術をして重篤だったギャラクティカダークは生き返っている。
「この星では文明が起こったくらいになるのかねえ……ミリオール陛下に「この船とイーマブルグを頼む!」と王城の地下から飛び立ったのが、ついこの間みたいに感じるよ」
二人は俺の存在に気付くと、俺を手招きする。
「真人! 一緒に一杯やらないか?」
せっかくだから一緒に飲むか。メイドロボ三人娘はツマミを用意した後自室で就寝している。
最初はみんなロボが眠る事に驚いていたが、正確には機能チェックとメンテナンスだ。ファンシーな着ぐるみ寝袋型のメンテナンスマシンに入って毎日メンテナンスを行う。生体部品と精密機械の塊なので入念なチェックが必要だ。ソウルコアのデータ解析、研究もかねている。
メンテナンスマシンは普通にカプセルタイプだったが、今日子と清志の抗議により寝袋型になった。正直言って面倒くさかったが2人との関係は良好に保ちたいので妥協した。
「なんか楽しそうだな真人」
日本酒をちびちびやりながら幸四郎さんがメバルの煮付けをつついている。今日子のプログラミングは完璧なので高級割烹並みのクオリティだ。
基本的に食堂のメニューは日替わり4種類だが、材料持ち込みの調理は無理の無い範囲でOKだ。
俺が楽しそう?確かに充実した毎日だが……そう言えば今日子にも最近笑うようになったと言われたな。
「真人よ、お前達の力でギャラクティカダークが蘇りつつある。この船と王国の文化、イーマブルグ殿下を託された者として本当に礼を言わせてもらう」
「船長、今日子と清志にも言って下さいよ。特に今日子がメインコンピュータを蘇らせたのがキッカケなんですから」
ゴッグ船長は少し思案したような仕草をして俺に話す。
「俺はこの船には意思があるように感じてなあ、こいつはお前と今日子に会うためにこの星に来たような気がするんだ」
「まさか、俺からしたら遥か昔に作られた船ですよ」
「まあ、そんな気がするだけだから気にするな。船乗りの感傷だよ」
幸四郎さんとゴッグ船長と酒を酌み交わし談笑した後、シャワーを浴びて自室に戻る。
ギャラクティカダークに意思があるか……。
実はこの船に乗って地球に来た面々はこの船の事を何も知らない。ミリオール王の命令で急遽乗り込んで王都を脱出したからだ。
ゴッグ船長とテンタ君には船を動かすための端末処理がされていたが、建造予定の新造艦のための処理としか聞いていなかったそうだ。
確かにこの船に意思がある可能性は極めて高い。メインコンピュータ、メインエンジンを始めとする中枢部分に極めて強いソウルコアが存在するからだ。
未だに解明出来ないブラックボックスにも同様のソウルコアが存在する。この船には物理的に魂が宿っているのだ。
まだ修理は全体で60%程度で未解明なブラックボックスも数多くある。
面白いじゃないか……。
俺は本当に幸運だ、ギャラクティカダーク、ソウルコア、異星の文明、こんなに研究材料があるんだ。しかも寿命は平均的な地球人の約五倍だ様々な研究と真理の追求が好きなだけできる!
[楽しそうだねハーリー……]
今、若い男の声が聞こえた気がするが……気のせいだよな?
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