とりあえず死んどくか
無事に松戸 清志をメンバーに取り込む事ができた。筋金入りのロリショタ紳士である彼にイーマ様とミレ姫様の姿に加え「超カリスマ」の垂れ流しがあればアッサリ落ちるという今日子の狙いは的中したようだ。
もっとも「超カリスマ」は無くても結果は同じだったような気がするけど、オーバーテクノロジーに対する喰いつきも俺の予想以上だったしな。
簡単にギャラクティカダーク全員の自己紹介をした後、清志さんに中枢神経の端末化手術について、その効果とサイコウエーブ発現の可能性に関しての説明をしたら物凄く喰いついてきた。
「真人ぉ、早く俺の端末化手術やってくれぇぇ! メインコンピュータとリンクしたらギャラクティカダークの機械系のシステムが掌握できるんだろう? それにミリオネル王国の機械工学の研究を一刻も早くやりたいんだぁぁ!」
清志さんが俺の両肩をつかんで激しく揺さぶりながら熱弁する。
「そしてミリオネル王国の超文明を用いて地球の国家をすべて統一し、イーマブルグ様とミレーニァ様の治める清く正しい世界をつくるんだぁぁ! 時は一刻を争う! 今やれ! 直ぐやれ! 早くやれ!」
「ちょっとキヨピー! 真人さんの脳にダメージ与えちゃうよ! 激しい揺さぶりは死亡事故にもつながるし虐待になるんだよ!」
「俺は赤ちゃんか⁉︎ 清志さんもいいから落ち着いてくれ!」
俺たちの間に幸四郎さんとイーマ様が割って入る。
「とりあえず落ち着け清志、我々の基本方針とイーマ様の考えを聞いてくれ。事を急ぐことを我々は良しとしない」
「清志、僕らは戦争で帰るべき故郷を無くしてこの星にやって来たんだ。でも正直言ってまだどうやって地球で暮らしていくか決めかねている。最初はミリオネル王国の文化を地球の人に譲るつもりだったんだけど、みんなの見解と地球の状況を考えるとそれは危険だと思うんだ」
「その通りです! 愚民共には危険過ぎます! 地球の愚民どもはイーマブルグ様の支配下に置いて、管理運営するべきです」
「僕は力で人を支配することを良しとはしない!」
イーマブルグ様のオーラが変わる! 無邪気な美少年の顔から王者の風格がにじみ出て「超カリスマ」の発動もあり物凄い威厳だ。
「力による征服、強権による支配を僕は間違いだと思う。だからと言ってみんなが平等で自由な世界などと言う、お花畑のような理論を信じることも出来ない」
清志さんと今日子は、ハハァァァと土下座していた。清志さんは大真面目だが今日子は200%遊んでいる。
「清志には中枢神経の手術を受けた後で、父の遺言を聞いてもらいたい。僕は父の遺言に従い何年かかってでも誰もが不幸にならない方法を探してみんなが笑って暮らせる国を作りたいんだ」
うわぁぁ! 清志さんマジ泣きしてるよ! 今日子はニヤニヤ笑ってる、飽きて脳内で 動画かなんか再生してるな。
「だから力や洗脳による侵略や支配はしたくはないんだ、時間をかけてゆっくり地球を良くする方法を探したい。清志、良かったら手伝ってくれないか?」
「イィィィマ様ぁぁぁ! 私が愚かでしたぁぁぁ! なんと聡明な! なんと慈悲深い! これほど王に相応しいお方は他にはおりませぬ! この松戸 清志、命ある限り貴方の理想実現の為に尽力させていただきます!」
「とりあえず手術からだ清志、バイオプラントに来い。真人、今日子行くぞ」
幸四郎さんが清志さんをバイオプラントに引きずって行き、その後ろを俺と今日子がついていく。
「清志、人を統べるのに相応しいお方が、力での支配を望まぬのだ。更に綺麗事では政は出来ぬ事も知っておられる」
「あと、子供だけどイーマ様は一万歳、ミレ姫様が九千歳、平均寿命が八万歳の種族だから地球人換算だと十歳と九歳。長寿種族だからとっても気が長いし結構賢いよ」
「……つまり千年で見た目が一歳しか変わらない! なんと! 俺にとっては永遠の美少年と美少女! 神だ! まさに神だぁぁぁ!」
そろそろ鬱陶しくなってきた、ナノマシンを痛覚神経に通らせて痛くしてやろうか。
幸四郎さんは清志さんをサッサと脱がせてカプセルに放り込んだ。なんか面倒くさくなったみたいで扱いが雑だ。俺もサッサとナノマシンを送り込んで済ませよう。
まあ予想通りレベル4まで到達したし、老化速度五分の一と脳機能強化、サイコウエーブも発現した。
「なあ清志、べつにもう呼び捨てでいいよな」
「もちろんだ! 我々は同志だからな!」
「キヨピー、テンション高いねえ〜」
ちなみに清志のサイコウエーブは「クリエイティブエンジニア」俺のバイオスキャナーの機械版ってところだな。マシンの構造や設計図が瞬時に分かり開発も容易に出来る。
涙を流しながらミリオール国王の遺言を聞いた後は今後の話だ。
「うちに来てくれるのはありがたいが、これからの生活はどうするんだ? 俺たちの場合は死んだ事になってたり社会復帰が困難な人間ばかりなんだが清志は大学教授で地位も名誉もあるだろう?」
幸四郎さんの問いに清志はキッパリと答える。
「ここに来てオーバーテクノロジーと生涯を捧げる主君に出会った以上、地球での地位や生活に全く未練はない!」
浩二達の心配は杞憂だったな清志は完全に「こっち側」の人間だ。
「しかしいきなり失踪するのも迷惑だから、とりあえず死んどくか」
俺の一言に全員固まった。
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