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秘密結社ギャラクティカダーク 世界征服を企む組織はホワイト企業だった  作者: ソメヂメス
始動編 ギャラクティカダーク活動開始
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かいじゅーさんとてんしさま

「それでは続いてのニュースです昨日の午後3時頃、S県H市M町で下校途中に行方不明になった会社員、佐々木 和夫さんの長女風香ちゃん9歳の事件の続報です。付近の住人の目撃情報によると3人組の男に軽ワンボックスに連れ込まれる……」


 マスコミの取材攻勢に和夫は疲弊していた。会社のほうは上司が仕事にならないだろうからと有給休暇を取らせてくれたが、昨日から休むどころか食事が喉を通らず一睡もしていない。


「最愛の娘が行方不明で心配なときにマスコミが引っ掻き回しやがって! 犯人像の予想も俺たちの心境もどうでもいいから早く風香を見つけてくれ!」


「あなた、風香は帰ってくるわよね」


 和夫の妻である香織は昨日からの心労で顔色が悪い。少しでも手がかりが欲しくてSNSを利用した結果、心無い誹謗中傷や根拠の無いいい加減な噂が飛び交い精神的にまいってしまっていた。


「何で俺達家族がこんな目に合わないといけないんだ!」



 S県警の捜査本部では現場付近の状況や証言、行方不明になった経緯、目撃情報から少女誘拐事件と断定。同様の事件は去年から4件目となりマスコミは連続少女誘拐事件として大きく取り上げた。




「まあ今回もバレることはないな」


「うまいこと目撃させていますし、捜査情報もちゃんと分かっていますからね。マスコミの報道に関しては明後日には人気バンドのボーカルが起こした婦女暴行事件に置き換わるはずです」


「あの子は容姿、年齢共に顧客のニーズにピッタリですしね」


「前の三人は客も飽きてきたからな、そろそろ最初の一人は始末した方がいいかもしれん」


「もちろんイベント化して動画も撮るんでしょ?」


「当然だ、人で無しの変態どもは金を惜しまんからな」


「風香を客に出すのは報道が落ち着いてからのほうがいいですよね」


「そうだな、二週間は間を空けるか。沙希の始末はまだ先にしておこうか、サキだけに」


「ハハハハハお上手ですね! ほらっ! お前らも笑え!」


 豪華な家具と調度品で飾られた部屋に乾いた笑いが巻き起こる。それをモニターで見ている者達がいた、ギャラクティカダークの面々である。



「ねっ! いい感じのクズでしょ、みんなどう思う?」


「実行犯と運営、黒幕を合わせて十人程度か。ターチは食い溜めが出来るようにしてあるから、それだけ食べればフルパワーで戦闘しなければ半年は食事が不用だ」


「黒幕は衆議院議員で与党の重鎮か、これからイーマ様が統べる世界の癌細胞は早急に排除するべきだな」


「特に黒幕に関して言えばミリオネル王国であれば領地、全財産、家名剥奪の上、一族郎党皆殺しレベルですな」


「……穏やかな文明だと思ってたら、結構物騒な国ですよね」


「木下さん、単なる文化、風習の違いだってとっくにみんな納得してますよ。いい加減に慣れてくださいよ」


 一同の中では、この少女誘拐売春組織の面々をターチの食事にする事はすでに決定事項となっていた。するとイーマブルグ皇太子とミレーニァ姫が名乗り出た。


「ぼくがターチにご飯食べさせに行くよ!」


「私も御一緒いたしますわ」


「相手は人を人とも思わぬ連中ですよ! 危険です!」


 心配する声に対して幸四郎が名乗り出る。


「俺が偵察機でついて行こう。危ない時は吸引光線で回収したり、ビームの一発でも打って助けるよ」


「私が影としてイーマ様の側にいますのでご安心下さい」


 鷹丸が護衛を名乗り出るとミスティが前に出る。


「私は亡きミリオール陛下より直々にイーマ様とミレ姫様の護衛を仰せつかっている。当然護衛として同行させてもらう」


「じゃあ二人とも偵察機に乗ってくれ、現地に到着したら下ろすから後はイーマ様と姫の護衛を頼む」


 日本海溝の底にあるギャラクティカダークからイーマとミレ姫をその背に乗せてターチが飛び立つ。海中の移動もサイコフィールドで覆われているので全く影響は無い。


 ギャラクティカダーク上空の空域に出てフィールドを解き、幸四郎が乗る偵察機を待つ。


「わー! 僕、地球で外に出るの初めてなんだ。空と海がとっても青いんだねー!」


「風がとっても気持ちいいですわ」


「「私も初めて外の世界に出ましたが感慨深いものがありますな」」


 幸四郎の操縦する偵察機が海面から浮上する。


「イーマ様、サイコフィールドにはステルス効果もあるそうですので移動中は展開しておいて下さい。ターチ、案内するからついて来い」


「「了解いたしました幸四郎殿」」


 偵察機とターチは少女誘拐売春組織のアジトに向い飛び立った。




「パパ〜、ママ〜……」


 まだ幼い風香は恐怖のどん底にいた。真っ暗な部屋に閉じ込められ昨日から粗末な食事が2回運ばれた時以外はドアは閉ざされていた。


「助けて〜、ここから出してよ〜」


 泣いても誰も答えてくれない。隣の部屋からは大人たちの下品な笑い声と風香と同年代の少女達の泣き声と助けを求める声が絶えず聞こえている。


「怖いよ〜嫌だよ〜……誰か助けて〜」


 泣いているとドアが開きガラの悪そうな男が入ってきた。


「ボスは2週間待てと言ってたが別にいいよな……来い!」


 無理やり手を引かれて隣の部屋に放り込まれると、裸の少女達が荒い息を吐きグッタリしていた。その周りにいた裸の大人達が風香に近づいてきた。


「お!新しい子じゃないか」


「昨日のニュースの子だね、風香ちゃんって言ったかな?」


「追加料金払うから一番乗りは俺にしてよ」


「助けてぇぇ! 嫌あぁぁぁぁぁぁぁ〜!」


 風香の悲鳴と共に部屋の壁が砕け散り、薄いピンクの毛に包まれたドラゴンが現れた! ドラゴンは裸の男の1人を鷲掴みにして頭から齧り付くと上半身が食いちぎられ血と臓物が滴り落ちる。


 凄惨な光景が起きる瞬間に少女たちの目の前に忍者装束の男女が現れ、彼女たちを部屋の隅に避難させ布を拡げて目隠しをする。


 凍りつく組織の構成員と客達の目の前でドラゴンは残った下半身を丸呑みにすると、甲高い咆哮をあげた。


「化け物だぁぁぁぁぁ!」


「助けてくれぇぇぇぇ!」


「ギャァァァァァ!」


 男達の悲鳴と絶叫と共に、バキバキ! ゴリゴリ! グシュウ! ブシャァ! と生々しい音が聞こえる。見えていなくても男達が生きながらドラゴンに食べられていることが分かるので風香と3人の少女は部屋の隅で怯えていた。


 やがて静寂が訪れ布が降ろされる。床には血の染みが広がっており少女達は次は自分たちの番だと思い抱き合って震えていた。


 ドラゴンは手足の爪を引っ込めて親指を立ててニッコリと笑う。少女達が呆然としていると、ドラゴンの背中から青い髪と瞳の美しい男の子と緑の髪と瞳をしたお姫様が降り立った。


「大丈夫だよ、ターチは悪い奴しか食べないから」


「いい子にしてたら大丈夫ですわ……貴女方、悪い人達に酷いことをされたのですね。お可哀想に…………そうですわ! 今こそ、わたくしめが身につけたサイコウエーブを使う時!」


 ミレーニァは両手を拡げて大きく口を開いて、美しい声で歌い出した。コーラスだけで、歌詞の無い歌であるが痣だらけの少女達の身体が回復していきボロボロにされた精神が癒され修復されていく。


 これこそがミレーニァのサイコウエーブ「ヒーリングボイス」聞く者の心身を癒してPTSDですら完治させるほどの威力である。


「天使様……」


 風香が思わず呟く。


「天使ってなあに?」


「地球で最も信仰されている大宗教における神の使いです」


 イーマの質問に鷹丸が答えそのまま続ける。


「幸四郎殿がこの国の治安組織に連絡を入れましたので一旦引き上げましょう後始末はその後でいたします」


「じゃあみんな元気でねー!」


「心正しく生きれば必ず幸せになれますわー!」


 2人の天使が手を振ってドラゴンに乗り飛び立って行くのを少女達は手を振って見送っていた。すると沢山のパトカーが走って来て少女達は無事に保護されてそれぞれの家族の元に帰された。


 彼女たち4人はその生涯を清く正しく生きたという。

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